想いを繋げる為に
今話を持ちまして獣国編その1が終了となります。
ストックも尽きた為、再び執筆期間を設けて、次章が書き終え次第更新再開となります。
ここまで応援してくださった読者様方、本当にありがとうございます。今後もよろしくお願いします。
応援コメントがあってもいいのよ?(チラッ
では、どうぞ。
「レッドベリーの群生に、そして今回のこれだ。似ておるとは思わんか?」
「無関係と切り捨てるには早計でしょうな」
「うむ。そしてこの現象には他にも共通点がある。その場には必ずイヴニアが居った。それも、どちらの場所でも血濡れの状態でだ」
確かに、偶然とは考えにくい。コアちゃんが俺の為に取ってきてくれたあのレッドベリーも、おそらくその場所から取ってきたものだろう。
あれだけの量を取ってこれたのも、その異常発生によるものだと考えれば納得できる。
共通点は俺……いや、俺の血?
『幼竜の生き血は万病の薬。特に聖皇竜ともなれば傷や病を癒すどころか、寿命すら克服すると言われている』
思い起こされるのはあの女の言葉。
あれは本当だったのか? だとしたら、俺の血は植物にすら影響を与える物って事になる。消し飛ばしたとしても、少しでも根が残っていれば再生は可能――。
「(じゃあ、生物ならどうなる?)」
そこに思い至った瞬間、俺の意識はガラルさんの腕の中で眠るコアちゃんに向けられた。
植物でこれだけの効果が現れるのならば……いや、でも既にコアちゃんは息を引き取っている。効果があるとはとても思えない。
死者の蘇生。馬鹿げてる、起こるものかそんな奇跡。
「……」
「お、おいイヴニア?」
でも――。
「……旦那様、寝てなきゃダメだよ」
それでも――。
「他の者がポーションを持って来ているところだ。それまでおとなしくしておかんか小僧」
可能性が、ほんの少しでも残っているのなら――。
「(試さなきゃ。それでダメだとしても、何もしないままで終わりたくない。
なぁ神様、俺は別にいい、見捨ててくれて構わない。それで家族に会えなくなったとしても、こんなにも良い子が理不尽に殺されるなんて、そんな残酷な結末……誰も望んでないだろ)」
ヴェロニカさん達の制止を振り解き、血が流れ落ち続ける体を引き摺って、少しずつガラルさんの元へ近付いていく。
言っても聞かないと理解されたのか、途中からクロエが体を支えてくれてだいぶ楽になる。ありがたい。
「……」
ようやく辿り着いた先で、コアちゃんの顔を見下ろす。
あんなにも笑顔が似合う子だったのに、なんて悲しい表情をしてるんだ。
大丈夫だから、安心しろ。君の未来を奪わせはしない。俺が繋ぐから……だから、戻ってきてくれ。
君は生きるんだ。
「ギュ……イ……ッ……!」
手のひらで傷口を押さえつけ、べっとりと血を付着させる。あとは上からコアちゃんの口へ垂らすだけ、なのだが。
「(頼むから、もう少しなんだよっ)」
もう腕を掲げる気力すら残っていない。中途半端に伸ばした手は震えるばかりで、これ以上進もうとしてくれない。
「……ん」
「(クロエ……)」
何も言えなくても理解してくれているのか、伸ばそうとしていた手を支えてくれたのは、やはりクロエだった。
血で汚れる事もお構いなしに俺の手をコアちゃんの顔の前へと導いてくれる。
ここまで来れば俺が何をしたいのかなど分かりきったもので、ヴェロニカさん達も黙って見守ってくれていた。
雨が降りしきる中、自らの血をコアちゃんの口元へ垂らし、その時を待つ。ただ静かに、祈るように。
しかし、待てど暮らせど変化は見られない。やはり蘇生など夢物語でしかないのか。それとも直接傷口に垂らさないといけないのか。
どちらにしても、もう俺は限界だった。
再び霞んできた視界、急激に重くなる体、寒気が止まらない。俺の死はすぐそこまで迫っている。
それでも、祈る事はやめなかった。
「……ぅ」
「っ……コ、ア……?」
限界故の幻覚か、幻聴か。小さなうめき声と共に、僅かにコアちゃんの唇が震えたように見えた。
ガラルさんがコアちゃんの顔を覗き込む。その頬を優しく撫で擦りながら、何度も名を呼んだ。
「……? お……とぅ、さん……?」
「そうだ、そうだよコアっ……! お父さんだっ、ここに、ここに居るっ!」
薄っすらと開かれたコアちゃんの瞳がガラルさんを見つめる。あれだけ生気を感じさせなかった肌に色が戻り始め、誰もがその光景に瞠目した。
奇跡は、成った。こんなにも簡単に。
「ま、マジっすか? これこそ夢じゃないっすか?」
「背中の傷が……!」
「何という回復速度だ。信じられん」
ガラルさんがコアちゃんを強く抱き締めた事により、必然的に俺達にはその背中が向けられる。
バジリスクの毒で無惨に溶かされていたその背中は、俺の自然治癒をも上回る速度で癒えていく。数秒もすれば、傷など最初から無かったが如く綺麗な肌がそこにはあった。
「どうして、泣いてるの? お父さん。
それにみんなも……あれ? イヴ、くん……?」
「(ああ……よかった)」
振り向いたコアちゃんと目が合った途端、言葉では言い表せない安心感が押し寄せ、ギリギリで繋いでいた俺の意識は暗転した。まるで人形が糸を切られるように、体が崩れ落ちる。
「旦那様っ!!?」
「イヴニア!!!」
――……。
「あーあ、やられちゃった」
「おいおいどーすんだよお嬢! 白様から賜った貴重な魔法生物までぶっ殺されちまった! コイツぁ大目玉どころじゃ済まねぇな! ケケー! ざまぁねぇぜ!」
「うるっさいんだよいちいち。それに、どうするも何も今回はウチのミスじゃないし、関係ないね」
「はあぁぁっ!!? なーに言ってんだよ! どう考えてもお嬢のせいだろ!」
「お前こそ何言ってんだよ。百歩譲ってあの魔法生物を創り出したのがウチならミスを認めてやる気にもなったさ。
でもさ、あれ創ったの他でもない愛しい愛しいクソビッチの白様じゃん。弱い魔法生物を創った馬鹿が悪いでしょ」
「ケーッ! お嬢がもっと上手いこと使ってりゃこんな結果にはならなかっただろーが!」
「単純な命令しか聞かない欠陥だらけの魔法生物に何を求めてんだよ。あれこれ指示して聞くほど上等なもんでもなし。ウチに文句を言うのはお門違いだ」
「おいこらテメー! 白様が生み出す魔法生物に欠陥なんかねーんだよ! お嬢と一緒にすんじゃねー!」
「ほーう? ウチが欠陥だと?じゃあウチが創った魔法生物であるお前も同じ欠陥品な訳だ。そんな奴が偉そうに説教とは恐れ入るなまったく」
「ケーッ! どこまでも腹の立つガキだぜ! このチビ! 陰気! 引きこもり女! 貧乳〜っ!」
「なぁ、お前もう少しその態度何とかならない? いい加減消し飛ばすぞ?」
「おやおやぁ? いいのかなぁ? 俺様が居なくなったらお嬢は一人ぼっちに逆戻りだぜ〜?
確かこう言ってたよな〜? 話し相手が欲しくて俺様を創ったってさー! その俺様を消すって事はつまり、まぁた辛気臭い顔を晒すだけのかわいそうなガキンチョに戻るってこった! ケケケー! やれるもんならやってみろよバーカ!」
「一理ある。お前みたいなのでも居なくなれば、ほんの少しくらいの寂しさはあるかもな」
「ケケ! そういうこった! 分かってんじゃ――」
「でもまぁ? お前より面白そうな奴見つけたし? アイツ使った方がウチの目的にも近付けそうだし? ……もうお前いらないよな」
「――おいおい、冗談だろ? 俺様はお嬢の唯一の理解者にして友人だぜ? 他の奴に務まる訳がねーだろ? 考え直せよお嬢」
「キヒ……キヒヒ。何だよ、さっきまでの威勢はどうした? 捨てられると思って焦ったか?
安心しろクソガラス。捨てやしないさ」
「な、何だよっ! 驚かすんじゃ――!」
「言っただろうが。捨てるんじゃない、消し飛ばしてやるんだよ」
「ケッ!!? お、おいおいお嬢! 落ち着け! 考え直せって! 馬鹿な真似はやめイ゛ギャアァァァァァァァァッ!!!!」
「んあ゛〜スッキリ。無駄に魔力消費してバカを創ったのは流石に軽率だったな。何が理解者だ、友人だ。調子こくなよ焼き鳥風情が。
……さぁて、魔法生物が殺された以上、馬鹿正直に報告して小言を言われるのはごめんだし、これを機にそろそろ方針を変えるかぁ。指示されてた研究も、ちっとは役に立つかもだからな。お人形ごっこもこれで終いだ。
白紅の鱗に赤雷。キッヒヒヒ、まさかまさか、こんな所で聖皇竜様と出会えるとは。そこだけは感謝しとくよ白ビッチ様。ウチの為に友好関係を結ぼうじゃないか。なぁ? イヴニアとやら。キヒ、キヒヒ……!」
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