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そして竜呪は輪廻する  作者: アメイロニシキ
獣国編 毒蛇と魔女
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恒例行事 暗躍

 子供の体力ってのは無限に近い。どこからその元気が湧き出て来るのか、コアちゃんとトウレンくんの喧嘩は長く続いた。


 ようやく落ち着いたのは、2人をほったらかして俺とミャーコちゃんが仲良くなった頃合いだ。怖がっていたのは最初だけで、俺が無害アピールすれば直ぐに気を許してくれた。


 今では興味深そうに俺の尻尾や手をスリスリと触っている。


 興味と言えば、前髪で隠れてしまっているミャーコちゃんの目元が気になって仕方ない。まず間違いなく可愛い顔をしているだろうに、勿体無いな。


 「ぜーっ……! ぜーっ……! このっ、体力、バカ……!」


 「はぁ……はぁ……! また、バカって……言った……!」


 あーあー、やっと落ち着いたってのにバカと聞いてコアちゃんの怒りが再熱し始めちゃった。

 頃合いだし傍観するのは終わり。そろそろ止めないと本格的に怪我をしそうだ。


 というわけで事実上一番年上であるイヴニアくん、止めます。


 「このー!」


 「キュイキュイ(はいはい)キュキュー(そこまでー)


 「わひゃあっ?!」


 飛び掛かろうとしていたコアちゃんの体に尻尾を巻き付けて引き寄せる。怪我をさせないようにミャーコちゃんの隣へ慎重に下ろした。


 「キュイキュー(気は済んだろ)?」


 「むー」


 ちょっと納得はいってないようだけど、頬を膨らませながらも尻尾から逃れようとしない辺り、コアちゃんも分かってくれているみたいだ。良い子ねー。


 「きょ、今日のところは、引き分けにして、おいてやる……!」


 「ふーん、だっ」


 「っ」ガーン


 あ、コアちゃんの拒絶に目に見えてショックを受けてる。トウレンくん、照れ隠しも程々にしないと嫌われるだけだぞ。


 たぶんコアちゃんには真正面から好意を示す方が効果的だ。変に意地張ってちゃ逆効果……って言っても子供にはまだ難しいかな。


 「〜〜っ!! お、お前のせいだからなドラゴン! バーカバァァァカッ!」


 言うだけ言って半泣き状態のままトウレンくんは牢屋から飛び出していった。普通に階段から出てっちゃったけど、大丈夫だよな?


 ってか何で俺のせいになるんだろう。自業自得って言葉知ってるか少年よ。


 「もー! わけわかんないよ! 何がしたいのトーくん!」


 「えと、ぁの……たぶん、トウレンくんはコアちゃんが、好きだからだと思うけど……」


 うおぉぉいっ! それ言っちゃうのかミャーコちゃん⁉

 おとなしそうに見えて躊躇なく抉るように確信を突いてくるとは、何て恐ろしい子だ……。この場にトウレンくんが居たらどんな顔をしてただろう。


 「好きって、どういう好き?」


 「それは、そのっ……もちろん、恋とか」


 「えー、全っ然嬉しくない。ボク優しくない人とは結婚したくないもん。トーくんだけは無いかなー」


 あ、これトウレンくん居なくて良かったわ。こんなバッサリ言われたら男として立ち直れない。俺だってキツいもの。

 しかし見事に空回りしてるなー。お互いにまだまだ子供だし、挽回の機会はあるだろうけどさ。接し方変えないと絶望的だぞ。


 ……なーんて、前世で恋人の一人も居なかった野郎が言ったって説得力もクソも無いのだが。


 「優しい人……ぁ」


 不意にミャーコちゃんと目が合う。

 何その意味深な眼差し。どうしてそこで俺を見るんだミャーコちゃん。


 「んー? あ、ところでさー、君って男の子? 女の子?」


 「確かに、気になるかも」


 中身は成人男性、見た目はドラゴン、スキルで美男児にもなれるよく分からない奴だよ俺は。


 「綺麗な鱗してるし、目もクリクリで可愛いから女の子だ!」


 「(ハズレー)」


 自信満々に言い放つコアちゃんに向けて、両手でバッテンマーク。こればかりはしっかり否定しとかないと、後々いらん誤解を生む可能性があるからな。


 「ええー! 意外!」


 「やった……!」


 ん? 何がやった(・・・)なんだろう?


 「あ、ミーちゃんって確か、他種族との恋愛に興味津々だったっけ」


 「わ、わー! コぁ、コアちゃん! 言わないでー!」


 「んに〜! ごめん! ごめんってば〜! そんなに揺らさないで〜!」


 他種族との恋愛ねぇ。この歳にしてそんな事を考えているとは、最近の子供って凄いんだな。それとも獣人だから? 関係ないか。

 まぁ何にせよ、恋愛するなら人の形した種族にしときなー。夫にドラゴン貰ってもきっと困るだけよ。


 「でもさー、喧嘩祭りの後とかミーちゃんは大丈夫なの? もしもってあるじゃん。お父さんもボク達もそろそろ色を知る歳だって言ってたし」


 「あぅ……わかんないよ。ほ、本能とか言われても、私達まだ子供だし……」


 え? まだ小さいのに色を知る歳って何言ってんだコアちゃんのお父さん。どう考えても早過ぎるだろ。

 2人の年齢から考えても、まだまだ恋より遊びや学びを優先して然るべきだ。


 ってか何で今の話の流れで喧嘩祭りが出てきたんだろう? 聞いてみるか。たぶんコアちゃんなら汲み取ってくれる筈だ。


 「キュイ(どゆこと)?」


 「あ、そっか、君は喧嘩祭りの事知らないもんね。にへへ、教えたげる」


 おー、本当に凄いなコアちゃん。母様ですら俺が伝えたい事を理解してなかったのに、コアちゃんは的確に俺が欲しい答えを返してくれる。

 この子やはり出来る。連れ帰って通訳係として雇いたいくらいだ。


 「喧嘩祭りってのはね? ミーちゃん達が来る前にも言ったけど、毎年恒例のお祭り。色んな集落から腕に自信のある男性獣人が集まって、それぞれの代表が戦うの。

 成人した獣人2人と、子供が2人選抜されて、武器とかスキルは一切無しで1対1の殴り合い。最後まで勝ち上がった代表が優勝で、食べ切れないくらいのご馳走を持って帰れるってわけ」


 へぇ〜、意外とちゃんとしてる。前の世界にもあった闘技場とか、そんな感じの認識でいいのかな。

 違う点と言えば優勝した褒美が食べ物である点と、武器は禁止という点。あっちは優勝した者には金銭を渡してたし、武器やら魔法やらと何でもあり。それこそ命を奪う事すら普通だった。

 でもここじゃ素手同士でスキルも無し。もちろん殺しも無しだろう。純粋に腕っ節を競う祭りって訳だ。


 でも、その内容と恋愛とがまったく結びつかないのだが。


 「それでね、これは正直ボクもよく分かってないんだけど、強い雄の獣人を見たら、ボク達女性は本能で恋に落ちるって言われてるの。お父さんが言うには、体が成長すれば誰もが通る道なんだって。

 で、優勝した男性側は、気になってる相手に愛の告白をするのが毎年の通例なんだ〜。両思いならそのまま成立!」


 あぁ、それでさっき……。確かに優勝した男性側がミャーコちゃんに告白なんて可能性も考えられる。でも肝心要のミャーコちゃんは他種族との恋愛に興味があるから、告白された場合はどうするの? てところか。

 それこそ本能とやらで惹かれてしまった状態なら、尚更悩むだろう。


 本能で恋に落ちる……意味が分からない。獣人ってそうなの? 俺の知ってる恋愛観と全然違うな。

 話を聞く限り、祭りってよりは超武闘派のお見合いみたいだ。


 「わ、私、そういうので恋とか、したくないなぁ……」


 「だよね〜。強いから好きになるっていまいちピンと来ないし。ボクだったら優しくて、一緒に遊んでくれて、2人で支え合っていけるような人がいいな〜。ミーちゃんは?」


 「えぇっと……うんと……じ、獣人以外、かな」


 「そこは譲らないんだ」


 「だ、だって、周りの男の子達、祭りの選抜試験が近くなると目が怖いんだもん……」


 あー、そりゃ生涯のパートナーになるかもしれない相手にアピールする絶好の機会ともなれば、ギラつくのも分かる気はするなぁ。

 トウレンくんが参加する理由も何となく分かった。十中八九コアちゃん目当てだ。


 強さ=魅力。非常に分かりやすい恋愛図だが、コアちゃん達同様でよく分からん理屈だ。

 俺強いんだぜ? だから恋人同士になろう! ってか? いやぁ、理解できねぇ。獣人の習慣にもいろいろあるんだなー。


 「……」チラッ


 また視線。何かを期待するようにミャーコちゃんが俺を見上げている。


 「ん? ん? ……あー、なるほどー。ミーちゃんは分かりやすいなぁ」


 「え……?! なん、なに、何が……?」


 「またまたぁ、とぼけちゃって〜。にへへ〜。

 でもお目が高いよー? この子ってば優しいし、頭も撫でてくれるし、何よりさっきみたいに守ってくれるし、いわ……いわぁ……いわゆ、る? 良い男ってやつだよっ」


 「ち、違うよぉ! そんなんじゃないってばぁ!」


 「じゃあ興味ないんだ?」


 「そそそ、そうは言ってないもん!」


 「じゃあ好きなんだね?」


 「〜〜〜〜っ!! コアちゃんのいじわるぅぅ!」


 「にへへ〜! ミーちゃんが怒った〜!」


 今度はコアちゃんとミャーコちゃんの取っ組み合いが始まってしまった。まぁトウレンくんの時に比べれば物凄く可愛らしいものだけど。


 「ちょっと喧嘩祭りが楽しみになってきたかも〜」


 「もー! コアちゃん!」


 ……どうでもいいけど、この話いつまで続くんだろ。









――……。









 同日某所。



 「これもダメ、こっちもダメ、これは論外。弱い、弱い、弱い。全部ハズレ。あぁクソ……獣人って意外と脆いんだなぁ。ったく何でウチがこんな事、あのクソビッチ覚えてろよ」


 「おいおいお嬢! 白様から研究を一任されてる身で愚痴とはいい度胸じゃないか!

 文句言ってる暇があったらさっさと手を動かせよこのダメ魔女グエェェッ!!?」


 「お前はウチが創った魔法生物(アニマ)の癖して何でそんなに反抗的なんだろうね。折るよ?」


 「ケケェ! 気に入らない事があればすぐ暴力だ! あーやだやだ! 俺様も白様(・・)の所に行きてーなー!」


 「勝手に行けばいいでしょ。むしろ口うるさいお前が居ない方が捗るわ」


 「馬鹿言ってんじゃねー! 俺様はお嬢の監視役! 一瞬たりとも目は離さねーし、もしお嬢が良からぬ事を企てようもんなら白様に報告して点数稼ぎよ! そしてあわよくば俺様こそが白様の寵愛を受ける真の下僕になるのさぁ!」


 「ならお前がこれやれよ。上手く行けば愛しの白様に見染められるかもしれないよ? あのクソビッチの何処がいいんだか知らないけど」


 「ケーッ! この姿でどうやれってんだバーカ!」


 「こんのクソガラス、ホントに殺してやろうか。

 ……ちっ、時間の無駄だね。一刻も早くお前を黙らせたいし、さっさと次の集落襲って成果を上げなきゃ。

 クソくだらない実験に付き合わされるのも懲りごりだ」


 「ケーケッケッ! そうだそうだ働けぇ! ヤァム(・・・)お嬢は白様の奴隷だ! 白様の為に馬車馬の如くブゲェ!!?」


 「とりあえず1回死んどけ」

目指せ書籍化!

多くの人に読んでもらうためにも、皆さんの応援コメント、評価等よろしくお願いします!

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