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そして竜呪は輪廻する  作者: アメイロニシキ
獣国編 毒蛇と魔女
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更なる高みへ

 「んー、こんなもんか」


 万能言語を習得した後に残ったスキルポイントは84。

 思っていたよりも消費しなかった事に驚きはしたものの、同時に得をしたと内心でほくそ笑んだ俺は他スキルの習得に乗り出した。


 新たに得た解読でスキル詳細を食い入るように眺め、厳選しまくって習得したスキルが以下の通りである。



 身体創造


 スキル詳細。

 任意発動型。自身が強くイメージした別の姿へと変わる事が可能。ただし、発動中は常に魔力を消費し続ける。


 継続魔力消費20 体力消費0



 硬質化


 スキル詳細。

 任意発動型。外殻の強度を大きく底上げし、一時的な防御力強化が可能。


 魔力消費50 体力消費0



 自然治癒 レベル1


 スキル詳細。

 常時発動型。ダメージを負った際、一定時間経過後に少しずつ傷を癒やす。

 レベルが上がるとより大きな回復効果を得る。


 継続魔力消費5 体力消費0



 飛翔


 スキル詳細。

 任意発動型。自在に空を飛ぶ事が可能。


 継続魔力消費10 体力消費0



 魔爪


 スキル詳細。

 任意発動型。魔力によって生み出された魔爪で周囲を薙ぎ払う。


 魔力消費5 体力消費30



 巨大化


 スキル詳細。

 任意発動型。ドラゴンの姿でのみ一時的に身体を巨大化させる事が可能。なお、スキル発動によってステータス変化が起こる事は無い。


 魔力消費 150 体力消費 100



 以上が今回習得したスキル達だ。


 ぬっふふふふ、やれる事が一気に増えてほくほくである。


 特に身体創造は、おそらく母様が言っていたボディクリエイトと同じ効果のスキル。せっかく万能言語を得たのに、ドラゴンの姿のままじゃ喋れませんでしたでは笑えないからな。


 硬質化と自然治癒は単純に生存率を上げるために習得した。今回みたいな事態になった時、自衛できる手段は多いに超したことはない。


 飛翔は正直いらないんじゃないかと思ったけど、保険として一応習得。と言うのも、たとえ身体的に成長して翼が大きくなったとしても、俺自身が翼で飛ぶ感覚ってのを理解しきれてないんだよな。

 翼持ってるくせに飛べないでは格好が付かないにも程がある。


 魔爪は主な攻撃手段としての習得だ。皇雷もあるけど、あっちは現状最大3発で燃費が悪い。となると代わりに運用できる攻撃スキルは必須だ。


 巨大化は……ちょっとやってみたかっただけである。だってほら、やっぱ気になるじゃん? ロマンというか何と言うかさ。



 うん、一部は除くけど、我ながらバランスの取れたスキル構成じゃないか。残りのスキルポイントをやり繰りして習得したにしては中々にまとまっているとは思わないかね?

 それぞれのスキルがどれだけポイントを消費するのか見れれば、もっと厳選できたかもだが……その辺は解読のレベルが上がれば解消されると信じよう。


 「ふぅ……また貯め直し、か」


 覚えるだけ覚えて、残ったスキルポイントは6。ここからは再び訳の分からん条件を達成していく事になる。


 達成できる自信は皆無に等しい。でも今回のレベルアップで大きく状況は変わった。最悪レベル2のままでも、余程馬鹿な真似をしない限り生きていくだけなら問題は無い。


 そんな馬鹿な真似をしない為にも、習得したスキルの慣らしは必須。加えて、何よりもまず確認しないといけないのは、現実世界の状況がどうなっているのかの把握だ。


 今回俺はどういう訳か瀕死の状態から奇跡の生還を果たしレベルアップした。あの怪我だ、自然に回復したとは考えにくい。

 であればまず間違いなく第三者による介入があったのは明白。


 命を救ってくれたのだから味方か。いや、あの2人組も……と言うよりコンと呼ばれてた男側は少なくとも俺を殺す感じではなかったし、結局まんまと連れ去られてしまった先で治療を受けた可能性も考えられる。


 目を覚ました先に待っているのが見知った人達なら最高だ。しかし下手な期待を持つのは悪手。

 そうじゃなかった時の反動はデカイ。常に最悪を想定するべし。そうやって兵士時代も何だかんだで生き残ってきたのだから。


 「(ここで悩んでても進まないよな)」


 たとえ最悪の事態が待っていようとも、成長した今の俺なら多少の足掻きはできる。ドンと来いだ。


 どんなに泥臭くて惨めになっても、俺を待ってくれている家族が居る。だったら生き延びてやるさ、意地でもな。


 「振り分け時間(セレクトタイム)終了」


 呟き、一気に遠くなっていく意識。

 もう慣れてしまった感覚に身を任せ、俺は再びドラゴンの肉体へと舞い戻るのだった。








 ――……。








 雲一つ無い晴天。窓の外から吹き込む風が私の髪を靡かせる。普段であれば心地良く感じるそれも、今はただ私に孤独を感じさせるだけ。


 あれ以来酷く喉が渇く。エリザが部屋に持ってきてくれた水を喉に流し入れ、癒えぬ渇きを誤魔化す。


 カップの中で揺れる水面に映った自分の顔を見て、思わず自嘲の笑みを浮かべた。


 「酷い顔だ」


 誰が見てもやつれた顔。目元には大きな隈まで。とてもではないが他人に見せられる顔ではないな。

 まぁ当たり前か。あれから数日、満足に睡眠も取っていなければ食事すらしていない。こうなってしまうのも必然だ。


 皆に強く言われても、この体は言う事を聞いてくれない。己の不甲斐なさに苛まれ、食事は喉を通らないし、目を閉じ眠ろうとすれば脳内に浮かび上がる血濡れになった我が子の姿。


 あの子を救えなかった愚か者が、自分だけのうのうと日々を謳歌? ふざけるな。


 あの子は助けを求めていた。痛かった筈だ、それでも小さな手を必死に伸ばしていたのに、私は……何も――。


 「何が聖皇竜だ……」


 自分に対しての怒りが込み上げる。手の中にあったカップを怒りのままに握り潰しても、その破片が私の手に刺さる事はなく、罰すら与えてくれない。


 頑丈な自分の体が憎たらしかった。いっそ自らの爪で喉を引き裂いてやろうかと思ったが、脳裏に過ぎったレティシア達の姿に思い留まる。


 自分を殺す事は簡単だ。しかし、そうしたところで残されたあの子達はどうなる。それこそサヤが言っていた通り、あの子達に全てを押し付けてしまう事になる。


 このままではダメだと分かっているのに……ああ、何て弱いんだ私は。


 「失礼しますシェラメア様」


 「エリザか……」


 悪化の一途を辿る自己嫌悪。そんな時、扉を開けてエリザが部屋の中へ入ってきた。

 その手にパン、サラダ、スープが乗せられたトレイを持っているのを見るに、どうやら私への食事らしいが、さっきも言ったように何かを食べれる状態じゃないんだ。


 「お怪我は?」


 「怪我? ……あぁ、これか」


 一瞬何を言われているのか理解できなかった。しかしエリザの視線を追っていけば直ぐに納得した。


 握り潰したカップを見て今更ながらに罪悪感が湧いてくる。


 「心配ない。それよりすまなかったな、カップを一つダメにしてしまった」


 「いいえ、お気になさらず。換えはいくらでもありますから。

 どうぞ、朝食をお持ちしました」


 「……エリザ、ありがたいが」


 「分かっています。ですが、少しでもお食べにならないと有事の際に支障が出てしまうかもしれませんよ?

 レティシア様達だって、泣きながらでもしっかり食べてくださいました。母であるシェラメア様がいつまでもそんな事でどうするのですか」


 「……」


 返す言葉も無い。エリザの言う通り、いざという時に腹が減っていて力が出ませんでしたでは笑い話にもならないな。


 食欲が無いのは相変わらずでも、まだエリザの言葉を突っぱねてまで拒否するほど堕ちてはいない。無理矢理にでも押し込んで食べるべきだろう。


 「確かにな。それに、毎度残していては食事を作ってくれているエリザに申し訳ないか」


 「まったくです。食材もタダではないのですから、しっかり食べて消費していただかないと勿体無いですもの」


 「……ふっ。分かった、食べてみるとしよう」


 降参だ。少なくとも今の状態でエリザに口で勝とうなど夢のまた夢。

 子供達が生きようとしているのに、私がこんな事ではいけないな。ああ、そうだ、生きねば。


 私にはまだやるべき事が残っている。それを放棄する訳にはいかないだろう?


 決意を新たに、スープを一口だけ喉へと流し、そして瞠目した。


 「……」


 「如何です?」


 「あれだけ体が拒んでいたのに、驚くほどアッサリ受け入れたよ。エリザは私の万能薬かもしれないな」


 スープだからか。そう思ってパンとサラダにも手を付けてみたが、こちらもすんなりと喉を通ってくれた。


 この数日間が嘘だったかのようだ。他者と関わっただけだというのに、単純だな私は。


 「ふふ、それは何よりです」


 「あ、シェラメア様、ご飯食べてる」


 「きゃっ、も、もうカザネっ、気配も無く背後に立たないでちょうだいな」


 「ん、ごめん。癖だから諦めて」


 パクパクと食事を食べ進めていると、不意にエリザの背後からカザネがひょっこりと顔を覗かせた。

 任務中ではないからか、いつもと違ってだいぶ楽な格好をしている。露出が多いのは少し気になる所だが。


 「心配をかけたなカザネ」


 「そうでもない。シェラメア様は強いから」


 「それこそ、そうでもないさ。それよりカザネ、見えそうだぞ? 気を付けなさい」


 明らかにサイズの合っていない服がずれ落ち、あと少しでカザネの乳房が露わになろうとしているのを指摘するが、当の本人は特に慌てる様子どころか隠そうとすらしなかった。


 「シェラメア様達しか居ないし」


 「分からないぞ? もしかしたら窓の外から使い魔を使ってトマスが覗き見しているかもしれない」


 「っ!!!」


 カラカラと笑いながら、ほんの冗談のつもりで紡いだ言葉にとんでもない反応を示したのは、誰あろうエリザだった。


 私でも知覚が難しいだろう速度で窓の側まで一瞬にして移動し開け放つ。そのまま身を乗り出して、とんでもない形相で外をキョロキョロと見渡す姿には戦慄すら覚えた。


 「すご、私より、速かった」


 「え、エリザ、冗談だ冗談。落ち着け」


 「いえ、先の一件で万が一は本当にあると学んだので、念には念をです」


 一件とは、イヴニアの事を言っているのだろうな。


 「もう少し自分の夫を信用してやったらどうなんだ……私が半裸だったとしても流石にトマスだって自重するだろう」


 「シェラメア様はお美しいのですから、振り向かない男なんて居ません。 それは既婚者とて同じこと。つまりはそういう事です」


 かわいそうだなトマス……。


 「過大評価が過ぎる。私程度の女は五万と居るさ」


 「居るわけない。シェラメア様は、自分を卑下し過ぎ」


 「カザネの言う通りです。美しさだけで言えば、シェラメア様は間違いなく世界一ですよ」


 「ん、んん、分かった、分かったから。こそばゆいからやめてくれ。

 そ、それより、仮に本当にトマスが外に居たらどうするつもりだったんだ?」


 「とりあえず引き千切ろうかと」


 「何をとは聞かんがやめてやれ。エトがかわいそうだ」


 ううむ、かなり丸くなったとはいえ、やはりまだまだ狂乱の影は隠しきれていないな。本当によくエリザを妻に迎え入れられたな、トマスよ。


 「失礼致しますシェラメア様、こちらにカザネ様が――……おや、お取り込み中でしたか?」


 不意に聞こえてきた声に扉の方へ振り返ると、そこには黒装束に身を包んだ女性が立っていた。


 顔はフードで隠されていて見えない。この装束は確か、カザネが率いている部隊のものだった筈。

 率いているとは言っても、基本的にカザネ本人は一匹狼。正直部隊の意味が……などと言うのは野暮かな。


 「おかえり。だいじょぶ、いつもの馬鹿騒ぎ」


 ばっ――、本当にこの娘(カザネ)は、たまにズバッと鋭い一言を放ってくるから心臓に悪い。私に対する言葉遣いがなっていないとルドルフに怒鳴られていた時もあったなぁ。


 まぁルドルフはルドルフで過剰よな。むしろ変に畏まらないカザネの話し方には好感を持っている程なのだが。


 「何か成果あった?」


 「残念ながら、カザネ様が期待している程の情報は得られませんでした」


 情報? ふむ、私がしょげている間にカザネが動いてくれていたという事か?

 このタイミングでカザネが部隊を動かすとなれば、十中八九今回の襲撃についてに違いない。


 詳しく聞いておきたいが、下手に口は出さずカザネに任せるか。


 と、そう思って傍観を貫こうとしていた私へ、何やらカザネから意味深な視線が送られる。

 意図を汲み取れず首を傾げていると、カザネは1人納得したように一つ頷いてみせた。


 「シキ」


 「はい」


 「ルドルフ、サヤ姉、トマスを1階に集めてほしい。シェラメア様も復活したっぽいから、報告は全員揃って聞くよ。

 有益な情報か否か、それはみんなで決めよう」


 「承知しました。では失礼致します、シェラメア様」


 「ああ」


 ふむ、あれはシキという名前か。


 上に立つものなのだからそれくらい知っておけと叱られても言い返せはしない。しかし、カザネの部隊は隠密に特化しているからなぁ。

 むしろ知らないのが当たり前まである。おそらく全容を知っているのはカザネかサヤくらいではないだろうか。


 まぁいい。それよりもだ。


 「情報とは何だ?」


 「ん、後で話す」


 あくまでもここで話す気は無しと。


 「全員揃って、だったな。分かった。

 では直ぐに行こう。これ以上皆を心配させる訳にはいかないし、早めの顔出しを――」


 「お待ちください」


 椅子から立ち上がり、善は急げと足を踏み出そうとした瞬間、何故かエリザに羽交い締めにされてしまった。


 突然の暴挙に目を丸くして肩越しに振り返ると、とてもイイ笑顔を浮かべたエリザと目が合った。


 「そのまま顔を出すおつもりですか?」


 「む、何かおかしいか?」


 「シェラメア様、貴女はここ数日、ろくに身なりも整えていなければ身を清めてすらいません。

 まずはお風呂、その後に十分なケアを受けていただきます」


 「い、いや、まずは情報をだな」


 「あら、このまま両肩の関節を外してもよろしいのですよ?」


 「うぐぅっ?!」


 言うや否やエリザの両腕に力が込められる。


 な、何という馬鹿力っ……! 聖皇竜たるこの私が完全に力負けしている!? う、動けん!

 確かに純粋な力比べをした事はなかったが、まさかこれほどとは! 流石と言う他ないな鮮血(せんけつ)狂姫(くるいひめ)


 「さ、お風呂場へ参りましょう」


 「う、うむ……」


 これは抵抗しても無駄だろうな。迷惑をかけてしまった分、ここはおとなしく従うが吉。


 それにまぁ、言われてみれば確かに。いくら私を慕ってくれているからと言って、こんな無様な姿で皆に会うのは失礼か。


 「そういう訳だからカザネ、トマス達には事情を伝えておいてくれるかしら?」


 「わ、分かった! 伝える! 先、行ってるから!」


 了承の言葉を残し、カザネはそそくさと部屋から出て行ってしまった。


 ……逃げたな。

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