待望の……
待て、待て待て。落ち着くんだ俺。これは俺の目がおかしくなった訳じゃないよな? むしろステータスの方がおかしいんじゃないか?
俺の成長度合いを表すレベルが上がったのはまぁ良しとしよう。勝手に新しくスキルを覚えたのも一先ずは置いておく。
しかし容認できないのは基礎部分! レベルが上がる前は1だった数値が跳ね上がってるのは何故だ⁉
これが普通なのか? いやそれにしたって上がり過ぎな気がする。そもそも桁が違う上に魔力はホントにどうした⁉ お前だけ1000超えてるんだが⁉ 2000に届く勢いじゃねーか!
「デーモン様ー! デーモン様出てきてー!」
これは俺だけで納得できる問題じゃない!しっかりデーモン様に説明してもらわらないと納得が……ってやっぱり音沙汰ねーし!
ええい仕方ない!
「おらぁ! 出てこねーと死んでやるぞコラァ!」
『チっ、何なんですか貴方は』
出てきた! 頭だけ! 生首飛んでるみたいで怖いから全身出てきてくれよ! 何だその中途半端な感じ!
「何なんですかはこっちの台詞! これ! これおかしくない⁉」
『おかしいのは事ある毎に自害しようとする貴方の頭です』
「なら素直に出てこいよ! こっちだってやりたくてやってる訳じゃないんだわ!
じゃなくて! この数値の上がり方は流石におかしくないですか⁉」
『何もおかしな事はありません。それが普通です』
「これで!? んなわけ――……いやいや、待つんだ俺。もしかして俺が過剰に反応してるだけで、実は大した事ではないのでは……?
見た目的にはいかにも上がり過ぎてますよーな感じでも、むしろ低かったりするんじゃ……?」
『低い……? チっ、そこはかとなく馬鹿にされた気分なので不本意ながら教えますが、貴方のレベルアップは他者とは大きく異なり、通常の数十倍成長するように設定されています。
呪いも悪いことばかりではない、と言ったところですね』
「数十倍!?」
『呪いの設計者風に言えばチートでしょうか。
恐ろしく成長難易度が高い代わりに、一度レベルアップすれば異常な能力上昇の恩恵を受ける事になります』
な、なんじゃあそりゃあ。その、ちー、と? が何なのかはサッパリではあるが、何かしら特別な事であるのは間違いなさそうだ。
まぁ確かに、成長する為に無茶苦茶な条件を達成したのに、その見返りは通常通りの成長でしたなんて割に合わな過ぎるけど……それはそれで呪いらしいし、むしろ見返りがデカい方が呪いとしてどうなん? 的な感じじゃね?
何か、呪いって言う割には呪いらしくないよな。俺のイメージとしては、どこまでも悪いことばかりな物こそ呪いなんだけど。
『では私は行きます。もしまた馬鹿な真似をしようとしたら……分かってますね?』
「なら素直に出てくればいいだろ」
『ふん』
とても了承したとは思えない態度で再びデーモン様は姿を消してしまった。
これはもう一度呼び出せる雰囲気ではないな。嫌われてるなりにせっかく少しは会話できるようになったのに、ここで下手に刺激して軋轢を生むのは無意味だ。
今後は呼び出し方ももう少し考えた方がいいかもな。
仕方ない。この上昇値についてはとりあえず納得するしかないだろう。
さて、次の問題は……やはりスキルポイント。
「(ボーナススキルポイントって言ってたよな。そのボーナスで得た合計が、このスキルポイント104って事か)」
最初に持っていた4ポイントを引いても100ポイントの稼ぎ。大盤振る舞いにも程がある。
俺があれだけ頑張って条件達成してきても10ポイントすら稼げないってのに、1レベル上がるだけでこれなのだから骨折り損感が凄まじい。馬鹿馬鹿しくなってきた。
まぁ、あの無茶苦茶な条件を終わらせた見返りとして考えれば、妥当っちゃ妥当な気もするけど、でもやっぱり貰い過ぎだと思う。
うーん……単純に儲かったと考えるのが前向きかなぁ。
「(いつもなら持ち越しって流れだけど、これだけあるんだから少しくらいは使うか)」
そう思って、ふと思い出した。
そうだよ、元々スキル万能言語を習得する為に頑張ってきたんだから、104ポイントもある今、ここで使わずして何とするってやつじゃん。
そうと決まれば善は急げ。スキル一覧表を開いて目的の万能言語がある項目まで一気に流していく。
場所は大体覚えてたから難なく見つける事ができた。しかも白文字! つまりは習得可能の証!
さぁ緊張の瞬間だ。
「すぅ〜……はぁ〜……いざっ」
意を決して万能言語の文字に指先を押し当てた。俺の記憶が正しければ、この後デーモン様の声が聞こえてきてスキルを習得するか否かを聞いてくる筈だ。
そう、その筈だった。
「あれ?」
デーモン様の声は聞こえてこない。代わりに見た事の無い項目が俺を出迎えた。
上部分には万能言語とデカデカと表示され、その下に小さくスキル詳細なる文字。そして極めつけは更に下に記された文字列。
跳躍を習得した時とは随分違う展開に戸惑いながらも、俺はその文字に目を走らせていった。
万能言語
スキル詳細
常時発動型。あらゆる言語を理解。自ら発する言葉を含め、相手の言葉を自動翻訳し聞き取る事が可能。
魔力消費0 体力消費0
「……ほ?」
思わず間抜けな声が漏れた。色々と処理できなくて絶賛混乱中である。
これってつまり、あれだ。万能言語がどういう効果を持っているのか書かれている、で合ってるよな?
仮にそうだとしたら俺が期待していた通り喋れるようになるスキルって事?
それ自体は凄く嬉しいけど、戸惑いの方が大きい。前までこんな項目は出なかった筈だ。
ポイントを持ち越ししていた時も然り、何度か別のスキルを指で押した時も、決まってデーモン様の声で『習得しますか?』『ポイントが足りません』となっていた。
それが今回に限って起こらない。何故だ?
「(あ、そういえば)」
ふと思い出す。確か、新しくスキルを獲得したんだったか。もしかして……。
「ん〜、あぁ、これか」
一度ステータス画面に戻って俺の状態を確認してみると、そこには今まで無かった解読、技能掌握、皇雷の3つの単語が新たに増えていた。
さっきのスキル詳細が見れるようになった理由がこれにあるとしたら……可能性として一番高いのは解読か。
試しに解読の文字に触れてみると、やはり先程と同様にスキル詳細画面が開かれた。
解読 レベル1
スキル詳細
常時発動型。あらゆる文字を理解し、読み解く効果を得る。スキルの効果詳細を閲覧可能。レベルが上がるとより詳細な情報を取得可能。
万能言語とのシナジー効果により、更に正確な解析が可能。
魔力消費0 体力消費0
当たりだ。こうしてスキル詳細が見れているのは解読による恩恵で間違いない。
最初からあってくれよと思うのは我が儘かな。無茶苦茶な条件を達成してレベルアップしたご褒美だって事で納得するしかないか。
さて、分からないのがシナジー効果ってやつだが。
文章から察するに、万能言語を習得すれば何かしらの効果が発動すると考えていいのだろうか? まぁ元々習得予定だったし、確かめるにもちょうどいい。
「この際だ、全部見てやろう」
再びステータス画面に戻し、今度は何だかんだで俺を助けてくれた跳躍の文字に触れてみる。
そこからザッと技能掌握、竜眼、皇雷と、順番に開いていった。
跳躍
スキル詳細
任意発動型。地上、空中、水中、あらゆる場面での爆発的な跳躍を可能にする。レベルアップにより上位スキルへの進化が可能。
魔力消費0 体力消費10
技能掌握
スキル詳細
常時発動型。自身の技量以上のスキルを発動する際、暴走を抑えて行使する事が可能。その場合はスキル効果が半減する。任意発動スキルの暴発を抑制。
魔力消費0 体力消費0
竜眼(固有スキル)
スキル詳細
常時発動型。オンオフの切り替え可能。自身の状態、及び強い繋がりを持つ相手の簡易情報を視覚情報に投影する。レベルアップにより上位スキルへの進化が可能。
魔力消費0 体力消費0
皇雷(固有スキル)
スキル詳細
任意発動型。魔力を赤雷へと変換し口から撃ち出す。ドラゴンの姿でのみ使用可能。レベルアップにより上位スキルへの進化が可能。
魔力消費500 体力消費0
「おぉ……」
思わず感嘆の声が漏れ出てしまった。
どういうスキルか分かるってだけで安心感がまるで違う。ずっとモヤモヤしてた跳躍の仕様も分かったし、何より技能掌握の恩恵がデカい!
これがあれば母様の力によって抑制されなくとも、意図せずスキルが発動する事はない訳だ。ありがてぇ。
そしてずっと疑問だった俺と母様の頭上にある妙な線の謎も解けた。これは竜眼による効果だったんだな。
強い繋がりってのは親子関係だからか。それならレティシア達のも見えていいもんだと思うけど、どういう基準なんだろう。
最後に皇雷。撃ち出す……つまりこれは、単純にドラゴンでは珍しくもないブレス系統の攻撃でいいのかな。
まぁ、今の無力な俺にとっては貴重な攻撃スキルである事は間違いない。発動に必要な魔力は500。現状3回が限界か。使いどころは考えないとな。
「(ん? あれ? これは見れないのか)」
流れ的に当然、呪いの詳細も分かるだろうと思ったのだが、いくら押しても何も表示されない。
もしかしたら条件の内容とか見れたり〜なんて淡い期待をしてたんだけどなぁ。残念だ。
まぁそれを見れたらあまりにズル過ぎる。上昇値が馬鹿げてる分、不便な部分は目を瞑るとしよう。
ふぅむ……何かこう、痒いところに手が届いた感じだな。たった1レベル上がっただけで見える世界が変わった。
最優先で取得したかった能力も一通り揃ったし、これからは今までみたいに過剰なポイント節約の必要も無さそうだ。
とは言え無駄遣いは厳禁。何事も計画的にが一番である。
「よしっ、そろそろメインディッシュといこうかな〜」
気を取り直してステータス画面から再びスキル一覧へ。素早く万能言語の欄まで移動して触れる。
スキル詳細が開いたのを確認して、もう一度万能言語の文字に触れてみた。
《スキル 万能言語が選択されました。スキルポイントを消費しますか?》
デーモン様の声が響く。
今一度大きく深呼吸を繰り返し、興奮で暴れ狂いそうになる心臓を落ち着かせる。
まさか喋れるようになるってだけでここまで緊張する事になるとは、前世の俺では考えられない経験だな。
ドラゴンに生まれ変わって、短いようで長かったぜ、ここまでな。
「もちろん、イエスだ」
《了承を確認。スキル 万能言語を習得しました》
これで、一先ずの目標は達成だ。




