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そして竜呪は輪廻する  作者: アメイロニシキ
序章
18/105

ここはどこ?

 その日の夜。


 衝撃続きの1日だった。ドラゴンと共存している人間達に、空には馬鹿でかいピンクの月。王都より発展しているだろう街で母様は人の姿になるわ謎の声は聞こえるわ、よく頭がパンクしなかったものだと思う。


 たらふく飯を食べ、皆との交流で仲を深め、そして名を貰った。

 叶うことなら変えてほしいけど、色々と世話になってる身で我儘を言い過ぎるのも悪いしな。


 「(ふあ〜……ぁ……流石に眠い)」


 どんちゃん騒ぎはお開き。日が落ち切る前に俺は母様と共に寝床へと強制送還されてしまった。

 もしかしたらフカフカのベッドで寝れるかも、なんて期待は見事に砕かれちまった。でもまぁ、腹を満たせただけでも上出来だろう。


 今思えばあの騒ぎは歓迎会みたいなものだったのかな? だとしたら嬉しい。


 ちなみにあの後、サヤさんとルドルフさんはボコボコにされた状態で帰ってきた。女性と老人に対しても容赦の無いお母ちゃん超怖い。


 あぁそれと、実は寝床に戻ってきてから、何とか母様に俺の意思を身振り手振りで伝えて、卵を籠の中に入れてもらう事に成功したんだよ。

 今では仲良く寄り添って、弟妹達は籠の中で目覚めを待っている状態だ。ふふふ、寝心地はどうだね?


 「……」


 「……?」


 仰向けの状態から寝返りを打つと、視線の先にはバッチリ起きている母様の顔があった。

 今はもうドラゴンに戻っている。言葉が分かるから人間の姿のままで居て欲しいと思うのは我儘か。


 「(おおぅ)」


 ジッと母様を見つめていると、器用に尻尾を使って引き寄せられた。触れる鱗はヒンヤリとしていて心地が良い。一定の感覚で聞こえてくるのは母様の鼓動だろう。これがなかなかに落ち着く。


 「(これ聞いてると眠くなる……あれ? 気付かなかったけど、赤い線が元の長さに戻ってる。

 なんで? いつの間に……あぁ、ダメだ眠い。思考が鈍る。

 結局これは何なんだ……俺が頭を打った直後に縮んで、気付いたら元に戻って……いつ? エリザさんの治癒魔法の後、に……あ、れ……? もしかして――)」


 眠気による思考能力低下。もう少しで答えが出そうという所で、俺の意識は途絶えた。






――……。






 夢を見ているという自覚を持った事はあるか? いや、きっとそんな奴居ないだろう。大抵は眠りから覚めた後「なんだ夢か」と、そこで初めて夢を見ていたと認識する。


 本来の自分はまだ眠っていて、今見ている景色は全て夢なんだとハッキリ自覚する事は無理だと俺は思う。


 でも不思議な事に――。


 「……」


 今俺は夢を見ているのだと自覚している。


 自分で言っておいて矛盾してるじゃないか。うん、ごもっともなツッコミだ。でもそうとしか言えない。


 今までのドラゴン生活も俺にとっては夢みたいなものだったけど、今この瞬間目の当たりにしている光景は、それ以上に現実味が無いのだ。

 それこそ夢でないと説明できない。そんな感覚。


 まずは1つ。辺り一面が暗黒に覆われている事。


 そして2つ。俺の目の前に巨大な紋様が浮かんでいる事。


 最後に3つ。俺の体がドラゴンではなく、慣れ親しんだ生前の肉体に変わっている事。


 以上の事から考えて俺は夢の中、或いは今までのドラゴン生活こそが夢で、こうして現実に戻ってきたかの2択まで絞った。


 しかし後者の可能性は低いだろう。仮にこれが現実だとして、何故こんな暗闇の中で自分の姿と紋様だけがクッキリと浮かび上がっているのか。

 紋様が辺りを照らしてるという事もない。確かに赤い色をしてはいるが、光っているようには見えない。むしろ逆だ。どこまでも暗い、そんな感覚の色。


 ではやはり夢かと言われれば、正直そっちも自信はない。あくまでも可能性が高いというだけの話だ。


 「本当に俺の体だ……って、声も出せる」


 改めて自分の体を確認する。

 あの日、クソ親に首を絞められて意識を手放す瞬間まで着ていた兵士の服。汚れ具合もあの時のままだ。


 そして何より驚いたのが言葉を話せるという事実。

 何でもない事の筈なのに、俺は酷く感動していた。そういえばこんな声だったな、なんて柄にもなく感傷に浸ったり。


 「何処だここ。やっぱり夢……それにしたって生々しい程に意識はハッキリとしてるけど」


 試しに頬を抓ってみる。普通に痛かった。なら現実? いやいやいや。

 とにかくここが何処なのか、まずそれを突き止めよう。もう驚きの連続でちょっとやそっとじゃ動揺はしないぞ。何が起きてもドンと来いだ。


 「……」


 一歩を踏み出し、歩き始める。


 「……」


 歩いて歩いて。


 「……」


 只管に歩いて。


 「…………ええ?」


 ふと振り返れば口をついて出てきた間抜けな声。


 それなりに移動をしたつもりだったのに、例の紋様はピッタリと俺の背後に浮かんだままだった。


 着いてきてるのか? そんな考えに至り、今度は紋様を見ながら後ろ歩きで進んでみる。

 するとやはり、紋様は一定の間隔を保ったままピッタリと俺に着いてきていた。いや、というより本当に俺は進んでいるのだろうか? 俺と紋様以外何も見えない状況だと、どれだけ歩いても移動している感覚がまるで無い。


 進んでも意味がなさそうと思い至ったのは、それから数分後。

 歩みを止めて、相変わらず着いてきている紋様を見上げる。そして気付いた。


 「あれ? この紋様……模様? 見覚えが――」


 ある。確かに。ハッと思い出して、急いで身に纏っていた兵士の服を上半身だけ脱ぎ捨てる。

 肌着を捲りあげれば、そこには胸に刻まれた焼印のような模様。驚く事に、目の前の紋様とまったく同じものだった。


 こんな偶然あってたまるか。この紋様は俺と何かしらの関わりがあると見て間違いない。

 ……じゃあその関わりってなんだ?


 「訳分からん。お? おおっ!?」


 何気なく紋様に触れた瞬間、まるでガラス細工が割れて飛び散るように、ビシリと音を立てて紋様が砕け散った。


 飛び散る欠片は地面? 床? に落ちる事はなく、一つ一つがフワフワと宙に浮いており、やがて意志を持つ生き物の如く蠢き、何かの形を象り始めた。


 それは文字だ。俺の知っている文字が、次々と空中に形成されていく。でも独特な癖があって読みにくいことこの上ない。もっと練習してくれ。


 「なんだってんだ。えーっと……す、すて、たす……ステータス?」


 ステータス。確かにそう書いてある。……だから? どういう意味?


 「んんー?」


 とりあえず意味の分からない単語は飛ばして、次の文字へと移る。



レベル 1


筋力 1

体力 1

持久力 1

魔力 1

知力 1

技量 1

耐久力 1

状態異常耐性 1

精神耐性 1


習得魔法 なし

習得スキル なし


固有スキル

竜眼


現状態 呪い


残りスキルポイント 2



 「???????」


 わーおサッパリ意味がわからーん。ツッコミ所満載過ぎ、何処から考えるべきなんだこれ。

 うぅん、一度に考えても理解が追いつかないだろうし、一つ一つ見ていこう。


 まずレベル。

 うん、さっそく分からない。レベルって何よ? 横の数字は何を表してる物なの?


 はい次!

 筋力やら体力といった、ここら辺の言葉の意味は分かる。耐性云々もまぁ理解は可能だ。だがやはり横の数字が気になるな。

 ひとつ残らず横には1の数字。1は数字の中でも小さい方に属するものだから、これはもしかしてそれぞれの強さを表したものか?


 仮にそれで合ってるとして、じゃあ何の、或いは誰の状態を表しているのかだけど……俺の体に刻まれた模様と全く同じ物が砕けて、今こんな物が現れている現状を見れば十中八九、俺を表していると考えるのが自然、か?


 次に、習得魔法。

 もしこれが俺についての情報だと仮定すれば、この言葉の意味は理解出来る。確かに人間だった頃もドラゴンとなった今でも、俺は魔法なんて使えない。正確にはドラゴンの状態じゃ使えるかどうかは試した事ないけど。


 分からないのは、このスキルってやつだ。

 これもステータスやレベルと同じで言葉の意味が分からない。それに、習得スキルと固有スキルってのは何が違う?


 その固有スキルの下には竜眼(・・)と、これまた分からない言葉。竜の眼……うーん。


 でだ。


 「呪いとはまた不吉な……」


 つまるところ、今俺は絶賛呪われてる状態にあるって事か。はーははは、笑えねぇ。

 まぁ、胸にこんな焼印みたいな物が刻まれてるくらいだ。呪いと言われたら確かに納得してしまう部分もある。誰だこんなもん刻んだド畜生は。


 その呪いがどんな物かはさておき、命に関わる程ではないなら特別気にはならないな。楽観的過ぎるか? いいや、現状じゃどうしようもないんだから考えるだけ無駄さ。



 最後にスキルポイント。

 また出てきたスキル(・・・)の3文字。ポイントの意味は流石に分かる。でもやっぱり分からないのはここ(スキル)だ。

 それにこの部分だけ他と違って2の数字が書かれている。ポイント……つまり、点か何かが2つ残っていると捉えられるが、だからどうしたである。


 「レベルにスキル……ポイントねぇ。うおっ?!」


 何気なくスキルポイントという部分に触れると、それまで浮いていた文字が再び変化を見せる。

 出来上がったのは全く違う文字列。単語の数も先程とは比べ物にならないほど多い。しかもほぼ理解が追いつかない物ばかりだ。


 次から次へと、そろそろ俺の残念な頭じゃ限界が近いよ〜。


 「なんじゃあこりゃ。駆け足、探知、略奪者、鑑定、思考加速、美食家……って読むの面倒くさ。あり過ぎ」


 こんな感じでズラリと並んでいる言葉の数々。

 頭痛い。俺普段から本とか読まない人間だったから、こういう文字ばかりの物を見ると気分が悪くなるんだよなぁ。


 「ん?」


 目眩までしてきた頃に、今更ながらある事に気付いて目を走らせた。

 無数の言葉は、それぞれ白い文字と赤い文字とで書き分けられている。例えばさっき読み上げた駆け足や探知の文字は白いのに、略奪者、鑑定といった言葉は赤い色。何の違いが――。


 《スキル略奪者を習得するのに必要なスキルポイントが不足しています》


 「うひゃいっ!!?」


 何となく赤い文字に触れた瞬間、この場所全体に響くような声が聞こえてきて思わずしりもちをついてしまった。

 それに「うひゃい」て、女子か俺は。ドラゴンの鳴き声に慣れてきちゃったせいかな。


 というかこの声聞き覚えあるぞ! 昼間に街で頭に響いてきた声だろ! 性懲りも無く出てきやがったな!


 「おい何処に居る! お前は何者だ! 姿を見せろ!」


 あの時はキュイキュイしか言えなかったが今は別だ。喋れるならトコトン追求してやる。たぶんコイツは俺の身に起こっている事を知っている筈だからな。


 俺の疑問全てに答えてもらうとしようじゃないか!


 「……」


 と、意気込んでみたはいいものの、肝心の声の主はうんともすんとも言わない。静寂だけが広がり、俺の心には虚しさばかりが募る。


 無視されてるだけなら、何だこの野郎の姿勢を崩す気はない。でも、気配すら感じないのは妙だ。

 さっきの声は明らかにすぐ近くから聞こえてきたし。なら気配くらい感じるのが普通だろ? それが無いって事はだ。


 「つまり、どういう事かしら」


 考えた末に、出た答えは分からない(・・・・・)である。どうしようもない残念さんだなぁ俺。


 「クソっ」


 腹いせに目の前の文字群を殴り付けてやる。

 これで何か解決する訳でもないし、意味の無い行動だと理解もしてた。だけど、この気持ち悪さを少しでも払拭したかったからこその行動。


 そして幸か不幸か、そんな行動が再び変化を引き起こした。


 《スキル 跳躍が選択されました。スキルポイントを消費しますか?》


 「はい……?」


 《了承を確認。スキル 跳躍を習得しました》


 「え、なに? ちょ、ちょっと待て! 今のは別に了承した訳じゃない!」


 《現在スキルポイントを所持していません》


 「聞けよ! ってか習得したって、その詳細を教えろよ! そもそもスキルってなんだ! 答えろ!」


 《振り分け時間(セレクトタイム)を終了します》


 「おいっ! 答え……うっ、何、だ? 急に眠気が――」


 一方的なやり取りが続く中、突如として瞼が重くなった。

 聞きたいこと、知りたいことは山のようにあるのに。それを知っているだろう奴が此処に居るのに、何も聞けないままで終われるか!


 「答え、ろ……! お前は何なんだっ!!!」


 《デモンズカース》


 腹の底から叫ぶ。もう意識は限界で、視界のほとんどは真っ暗だった。


 そんな状態でも、微かに聞こえた一言。


 デモンズカース。

 どこかで聞いた事のある言葉を耳に、ついに俺の意識は途絶えた。

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