表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

答えを下さい

騎士団長視点で続きます。

その日、カレンは容赦なく告げた。「今日で、ひとつきです」そう言えば。早いもんだ。




「はい」


「何も答えをくれないのは、酷いです」


「面目ない」


「仕事ではビシバシ決断できる人なのに、私にはのらりくらりで誠実でないです」


「ほら幻滅したでしょ?」




 仕事みたいに、割り切って進めることは難しい。いい訳じみた言葉しか出ない。


ここまで詰め寄られて、困り果てても、どちらの回答も出来ない。イエスの答えで進み、カレンに幻滅されるのは嫌だ。しかし、ノーでカレンが離れていくのも嫌だ。




 ただ、日々彼女と夕飯を食べているだけで、幸せなんだ。これを無くすのがもう辛いということに気づいてしまった。けれどこれ以上の一歩を踏み込みたくも踏み込まれたくもない。身勝手だとは重々承知だ。




「このままではダメかな? こう、仲の良い友人の様に、居られないかな」


彼女の頬が紅潮し、きりりとした眉が少し吊り上がった。


「何、ふざけた事言ってるんですか? てか、このひとつき事実婚ならぬ、事実交際じゃないですか?」




 ひとつき前に、ネクタイを捕まれた時と同じ位の勢いだ。


「え、いや」


「もう、最初の予定通り、ひとつき後の回答してください」と追い込みをかけられた。




 おりしも金曜日、それでも煮え切らない僕に、業を煮やした彼女は、一方的に宣言した。


「今日は回答貰えるまで、付きまといます。帰りまでに回答いただけないなら、お宅にお邪魔します。なんなら、週末ずっと居座ります」




 結局、食事後、飲み続け、店じまいの時間まで、僕が粘った挙句、根負けして帰宅。宣言どおり、カレンに家へ乗り込まれた。


しかしながら、この期に及んでも、これだけ煮え切らない僕が、なし崩しになる訳も無く、色めいた展開にも進展しないまま午前0時を過ぎたところ。




 目の据わった彼女を目の前に、一歩も動けない。そろそろ寝たい。


「湯を浴びてきていいかな? 先に使う?」


出来る限り、その先に何かを匂わせない様に、言ったつもりでも、自分の言葉が意味深長に聞こえて、気恥ずかしい。


彼女は意味深長を煽りもせず、聞こえなかったかの様に、そして質問にも答えず、全く違う質問を投げかけた。




「この家、お酒ないんですか?」


「ないことも無いけど珍しいね。飲み足りない?」


「酔った勢いとか、責任とるからとか、そういう理由付きでも良いから、恋人になってくださいって言うためです」


「何、馬鹿なこと言ってるんだ」




「馬鹿なこと言わせてるのは、誰ですか」


「僕だって、こんな優柔不断な男は嫌だよ。君は、何をムキになってるんだ。いい加減に、愛想尽かすところだろう」


「その手には乗りません。私と付き合うことを、回避したいなら、絶対に自分から『ノー』を突きつけてください」

誤字脱字の指摘は是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ