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第89話 ニューパラセッツの街

ニューパラセッツの街はダンジョンを中心に作られ始めたが、その後に代官が更に西に屋敷を構えたり新たに役所が出来たりしたため、街の中心はそっちに移動してしまっているものの、ダンジョンから中心に伸びる大通りが一番の通りとなっている。


そしてこの街を最初に考えた俺はダンジョンの直ぐ側で、その大通りに面した所に店を構えてかなり繁盛している。


まぁダンジョンの間引きや資源回収にポーション必要ってのも有るけど、万が一ダンジョンで問題が発生した時に、俺が対応するためにここに店を構えたのだ。


今では従業員3人を抱えるそれなりの店だ。

しかももう暫くしたら後2人雇い入れる予定で、その2人は錬金術が使える者の予定だ。

今の所俺しかポーションを作れないので、毎日朝から夜までずっとポーションを作っている。


自分で経営しているのにとんだブラック労働だ。


ポーションは前世の薬に比べればかなり簡単に作れる。

まず適切な材料をすりつぶしながら魔力を込めて、それを煮出して濾した後に成分調整のために薄めるだけだ。

そのままでも使えることは使えるが、濃すぎてもうまく効果が発揮されないし、とんでもなく苦いものになってしまう。

それに薄めた分利益率も上がるしな。


ちなみに俺はゴーレム技術を利用した薬研で、すり潰すのを半自動化しているのだが、エスト王国のポーション製造工場では犯罪奴隷にこれをやらせている。

謎の棒を押してぐるぐるするやつを実際にやっているのだ。

強制的に魔力を搾り取られながら延々と棒を押して回り続ける、本当に過酷な労働がされているらしいが、犯罪奴隷だから仕方ないのだろう。




ニューパラセッツの街が計画された頃にこの町に来た代官は、ストラディ侯爵家の次男であるヨハン・ストラディ子爵だった。

皆覚えているかわからないが、昔俺に剣術大会で勝負を挑んできたやつで、ホルドラン侯爵令嬢の現婚約者であり来年には結婚することが決まっている。


子爵なのは次男であったためと過去のやらかしのせいで、そのままではホルドラン侯爵令嬢と釣り合わなかったのだが、ニューパラセッツの代官としてこの街を任され、今回この街がここまで完成した所で伯爵に昇爵している。


公式にはこの街の発起人と発展に寄与したことになっていて、俺の功績の殆どが向こうに行ったような物だ。


まぁ俺としては表立って第2王子と争う気もないし、第2王子とやりあえるだけの後ろ盾も持っていないから全然気にしていない。

それにそんなに昇爵する気もなかったから別に良いってのも有る。

それでも俺も昇爵することになってしまって、今では俺もティ・レックス子爵になってしまった。


俺としては爵位が上がってしまった事よりも、ホルドラン侯爵家とこれで縁ができたお陰で、学院経由で錬金術を使える人を紹介してもらえるほうが大きい。

街の薬屋さんという希望していたスローライフに近づいたのに、いまいちスロー感が無いのが不満だったからとても嬉しい状況だ。


現状は不満がないわけでもないのだが、ある程度俺の希望通りと言っても良いし、あんまり贅沢を言っていても仕方ない。


それでも不満に思ってしまうのは貴族関係の面倒事だ。


今のところ多いのが俺の婚約者になってやろうというもの。

言い間違いではなくはっきりと言ってくるのだ。

『お前の婚約者になってやろう』と。


前世でもこんなプロポーズ聞いたこともないのだが、本気で何を考えて言っているのかわからない。


まぁそういった奴はたいてい、家の爵位を継げない次男や三男なんだが、面倒なのは親の爵位が伯爵以上になってくると、どんなに馬鹿らしい話でも一応対応しなければならないって事だ。


一応対策はしてある。

今の俺は第1王女改めメッセサイト公爵の派閥に入っているので、そちらから牽制してもらっているので普通の貴族は手を出しては来ない。

だけどこういう事をする馬鹿の多くは国王派の馬鹿ばっかりで、いまいち牽制の効果が薄いのだ。


まぁ最悪あまりにもしつこかったら、ダンジョンに一緒に入ってもらって、俺だけ帰ってくる事になるのだが、それでもなかなか無くならない。


他にもこの店を貰ってやろうだとか献上することを許すだとか、あまりにも住む世界が違う奴が多くて面倒この上ない。

俺としては婚約だとか結婚だとかはあんまり考えていないし、正直レックス家がどうなろうとも俺の知ったことではないのだ。


それに正直男と結婚は勘弁して欲しい。


17年間女をやってはいるものの、俺の意識は依然男のままなのだ。


かと言って女と一緒になるのもどうなんだろうと思っている。


女が嫌いとかそういった意味ではなく、おそらくは体の方の好みの問題だと思うのだが、女に引かれるとか女に欲情するとかもなく、心と体の両方が別々に拒否しているのかもしれない。


こればっかりは頭で考えても仕方ないことだ。


もしかしたらある日突然、どっちかの性に引かれるのではないかと思っているところだ。




そんな事を考えながら毎日過ごしていたら、ストラディ伯爵より使者が来た。


曰く、急いで屋敷の方に来てくれと。


突然の呼び出しに緊張しながらも従業員に指示を出し、急いで準備をして出かけた。


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