第88話 パラセッツの街4
あれから3ヶ月経った。
正直俺の思いつきでここまでの事が起きるとは思わなかったのだが、起きてしまったのは仕方ないと諦めるしか無い。
取り敢えずあれから何が起きたかを説明していくことにする。
まず俺がやろうとしている事の法律上の問題を教えてもらうため、マーブル先生に手紙を出したのだ。
ついで次の日以降俺が離れても、市場でポーションを販売できるようにメイさんにお願いして、丁度よい感じのギルド員の手配と、総合ギルドの護衛の手配をお願いした。
ポーション販売は街の人達や獣人達にとってこれからも必要なものだし、商人連合の目をこちらにひきつけておく必要も有るので、それなりに繁盛して貰う必要が有ったからだ。
まぁ恐らくこっちに奴らの目をひきつけると、バカな奴らがちょっかいかけてくるのは間違いないから、護衛を付けてもらうのだが、これで万全なわけではない。
恐らくこっちに護衛がいると知れば街の衛兵を出してくるだろうし、もしかしたらもっと上の人間が出てくる可能性もある。
万が一の場合に備えて表向きの護衛とは別に、裏向きの護衛も総合ギルドに依頼してあるが、本心を言ってしまえば俺が居る時に衛兵とか出てきてくれて方が、対処しやすいというのもあって、マーブル先生ネットワークに向こうの動きを見張ってもらったりと、色々と手を打ち終わるまでに1週間はかかってしまった。
その間周りの人達に頑張って貰っていただけかと言うとそうではない。
昼は市場に行って販売方法と各種ポーションのレクチャーをしつつ、夜はひたすら売り物のポーションづくり。
結構大変な思いをしてしまったが、俺が手配したのだから仕方ない。
やっと市場のポーション売りを任せられるようになった頃には、色々と手を打った事が結果を出し始めて、結局昼はそっちの対応に追われつつ、夜はひたすらポーション作りを続けて、2ヶ月立った頃にはなんとか最低限の形を整えることが出来た。
やっと一息つけると油断していたのだが、一度動き出したものは早々止まらないものらしく、あえて言うのなら川の流れのように俺の思惑を無視して、パラセッツの街の住人の殆どが動き出してしまった。
結局公爵家だとか侯爵家が色々動いた結果出来たのが、このパラセッツの街の西に有る、ニューパラセッツの街だ。
もう本当に途中で泣きそうになったことが何度あったことか。
最初は門の所で素材を強制的に買われてしまうのならば、ダンジョンの直ぐ側に総合ギルドの派出所を作れば良いのでは?と言う、俺の浅はかな考えから始まったのだ。
念の為にここのダンジョンの、所有もしくは管理しているのが誰かを、総合ギルドで確認してもらいつつ、マーブル先生に移民や開拓村について質問したところ、何処から話が漏れたのか第1王女改めメッセサイト公爵とランドレイ侯爵が、いきなり乗り込んでくる騒ぎに発展してしまった。
というのもパラセッツの街は、第2王子が教育の一環として治めることになったが、元々の管理をしていたのはヒューポッド公爵家で、現在本来管理すべきなのはメッセサイト公爵家という事なのだそうだ。
それと北の都市を管理しているランドレイ侯爵家としても、パラセッツの街の状況が悪化するに連れて、物資の運搬にも悪影響が出ているらしく、対応策を模索していたのだそうだ。
そこに俺が考えたダンジョン前村構想がはまり込み、いっそパラセッツの隣にパラセッツを作ってしまえとなってしまった。
現在元のパラセッツの街に残っている住民は殆どおらず、商人連合の関係者と第2王子の関係者だけが残っており、後は全てニューパラセッツの街に移住してきてしまったのだ。
当然移住に際して文句を言ってきたりもしたが、エスト王国では国民の移住に関して規制するような法律はなく、領主や代官が勝手に作ることも出来ないようになっていて、逆に移住を妨害する行為のほうが罪になるため、結構な人数の商人連合の人間を捕まえた所で、何も言ってこなくなったのだった。
住民がこぞってこっちに来た理由としては、そもそもこの国の住民には自分の家という感覚がなく、住み慣れた家であっても他に行けるところがあるのなら、さっさと移動してしまうのが普通である。
これは土地の所有権が住民に無いせいなんだろうと思う。
それに税金は高いし仕事の賃金は安いし、おまけに商人連合は偉そうにしているだけで何もしない、パラセッツの街には愛着なんて全く無く、他に行く所がないから仕方無く居ただけだったようで、新しい街は3年間無税で仕事もある上に、メッセサイト公爵家から派遣されてきた代官もまともな貴族であったので、あっと言う間にこっちに来てしまったのだ。
本来街を作るとなると3ヶ月では建物が全く揃わない所だが、この世界には魔法が有るため、まさにあっと言う間に建物が建ってしまったし、建てるための資材だってダンジョンや北からどんどん運び込まれて、結果3ヶ月で街になってしまったのだった。
こうなってしまうともはやパラセッツの街に用は無く、逆に街の門を街道側から見張って逃げられないようにし、反逆罪として処罰する準備をしている段階だ。
流石に今回は第2王子も逃げられないとは思うが、パラセッツの街にはまだ商人連合が残っているし、神光聖声教会の残党も居ることが確認されているので、どんな手を打ってくるか油断はできない。




