第83話 学院卒業
はい。そういう訳でめでたく学院を追い出されてしまったのでした。パチパチパチパチ
え?どういう訳だって?
レディーには秘密にしておきたいことの100や200は有るのだよ。
根掘り葉掘り聞いたりなんかしたらそれだけで、明日から他人になってもらうよ?
まぁ大した事でもないのだから言っても構わないのだけど。
あれから暫くしてホルドラン侯爵令嬢に呼び出されて、学校を卒業するように促されてしまったのさ。
これは全て俺の認識の甘さから来る状況判断力のなさが原因だ。
本来貴族というものは小さい頃から親について周り、まさに体でそういった空気を読む力を学んで行くものだが、前世の記憶がある俺はいまいちそこがわからなかっていなかったのと、そもそもそれを学んでいかなくてはいけない時期に、討伐だ辺境だと全く学んでなかったのが原因だったのだろう。
まず今回の引き金になったエスト王国の過去の歴史問題なのだが、俺がゴブリンの討伐に遠征に行っている間に貴族の中では触れないのが決定されていたもので、わかりやすく言ってしまうと学校休んでいる間に決まったことを知らなくて、休み明けに学校行ったら暗黙のルールが出来ているのを知らず、しっかり地雷踏み抜いてハブられる奴みたいなものだ。
中立派としては現国王が退位した後に時期を見て歴史を編纂し直す予定で、第1王子とは既にその話は纏まってはいるものの、現在の貴族達の中には依然反対する派閥も存在していて、今ここで波風を立てる訳にはいかないそうだ。
だからマーブル先生が教えてくれなかったとか、授業で教えてくれなかったのではないから、誰にも文句を言えるようなものではない。
それに引き金になったのは間違いなく歴史の問題では有ったのだが、根本の理由は全く別のところにある。
それが俺の立場の問題だ。
おれは前世の記憶があるからその辺あまり深く考えていなかったし、基本お気楽極楽な考えであったのも有るとは思う。
元日本人の記憶があるからこその平和ボケと言ったほうが良いのだろうか?
簡単に説明すると俺の立場は非常に中途半端な上に、周りから見るととても許すことの出来ない状態だったのだ。
俺からしたらそれ自体ナンノコッチャとしか思えないのだが、言われてみれば確かにそういったようにも見えなくもない。
と言うか今までもそれで失敗していたしな。
俺がどう思っていたとかは別として周りから見たら、俺は最初第2王子に取り入りスタン家の立場の回復を狙っていたのに、第2王子が劣勢と見るやすかさず侯爵家に取り入った、そしてスタン家が危ないと見るやすかさず第1王子と共に、大した危険もないゴブリン討伐に出かけ、帰ってきたら自分だけ男爵家の地位を第1王子に約束されている。
正直俺の方からも言いたいことはたくさんある。
例えば第2王子に取り入った覚えは全く無いし、侯爵家に取り入ってスタン家を守ろうとした覚えもない。
それにわかってないやつが言うようにゴブリン討伐は簡単なものではないし、実績作りのために第1王子が動いたわけでもない。
事実を知っている者にとっては全くの濡れ衣なのだが、俺を嫌っている者達からすると、とんだコウモリ野郎にしか見えないって訳で、俺の周囲を常に気にしていた連中が掴んだのが、今回の歴史問題だったて訳だ。
俺をなんとしても追い落としたい連中は、すかさずこの問題を大きくするべく動き出し、俺に謀反の気配ありと騒ぎ始めていた。
それに触発されたのが第1王子の反対派の連中。
更に問題を大きくして第1王子の派閥と見られる俺を追い落としたついでに、第1王子にも謀反の気配が有ると言って処断させようとしていたとのこと。
正直こんなの何の証拠も無いし、もし仮に俺が謀反を起こした所で何の問題もなく、俺が処刑されて終わるようなものなのだが、こういった場合事実は必要ではなく、他人にそれを知らせることだけが目的なので本当にたちが悪いのだ。
何も知らない人間にそっと一滴ずつ毒を盛っていくようなもので、気付いたら毒を盛られた人は俺を嫌っていたりする。
結局中立派としてはこの問題で派閥にヒビが入っても困るし、折角根回しの済んだ問題が振り出しに戻っても困る。
だから今回は俺を卒業しましたとして追放し、今回の件に中立派は関与してませんって態度を取ったわけだ。
俺がこれらの動きを知ったのは強制的に卒業させられて、マーブル先生に報告と相談に訪れた時だった。
マーブル先生に言わせると、
「ティちゃんは優秀な子なのに、そういった凡人の考えに気が付かないで、小石につまずく事が良くあるわね」
だそうだ。
優秀かはまた別の話としても、確かに人の足を引っ張ることしか考えないような、小物に気づかなかったのは間違いなく俺のミスなんだろう。
ただこれって正直俺が気をつけてどうにかなる問題でもないような?
あーまぁ確かにどうせ足を引っ張る奴らが居るのはわかっているのだから、もっと激しく目立って侯爵家や公爵家それに、第1王子や第1王女ともっと親しくしていれば、こんな小石で転ぶこともなく逆に踏み潰していたのかもしれない。
根本的な考えに平和だとか気楽にだとかが有るから、いまいちはっきりとした動きができない、まさに中途半端な動きしかしなかったのが問題だったのか。
まぁ既に起きてしまったことは仕方ないので、今後に活かそうと切り替えて生活してきた。
ちなみに今の状況としては、半ば追放されたような形で教養学部2を卒業した俺に、まともな貴族からのお誘いは一切なく、完全に名前だけの貴族となってしまったのだった。
今は取り敢えずナメクジ荷馬車の中継地点で事務所を兼ねている屋敷に引きこもり、錬金術でポーションの類を作って生活している。
もう少ししたら適当な街に錬金術師として引っ越し、そこで生活するつもりだったりする。
なんか夢のスローライフみたいな感じで結構楽しいのだが、グロスからは一緒に荷馬車の仕事をと誘われたり、レレとハンナからはサロンに誘われたり、地味に断るのが大変だったりするのだが、実はこの錬金術師というのは隠れ蓑なので、意外に大変だったりもするのだ。
まぁその辺は秘密の話なのであんまり言えないのだが、簡単に言ってしまえばとある派閥の密偵みたいなのも兼ねていたりする。
とあるって言ってもお隣だったりするのだが、まぁそれは引っ越してからのお楽しみだ。




