第81話 学院2年目2
正直もうどうにも出来ない話だったし、あの噂については何もしないのが一番だと思う。
そう思いあれからも毎日普通に学院生活を送っていた。
そうした中レレとハンナと図書室に行くことになった。
今までも図書室には度々訪れていたのが、今回来たのは何かを調べると言うより、授業の間の時間つぶしのようなものだったので、特にこれというような物を探してはいなかったのだが、ちょっと気になるものを発見してしまた。
それはエスト王国年代記だったのだが、不思議なことに100年ほど前の記録が全く無い状態になっていて、調べてみると無い部分の記録がおよそ100年分ほどあったのだ。
つまり100年前から200年前までの間がすっぽりと抜けているのだ。
疑問に思い取り敢えず無くなっている年代の最新、つまり残っている中で一番新しい部分を見てみると、先先代の国王より前の所から無くなっているようで、5代分程が持ち去られているようだ。
念の為司書さんに確認を取ってみることにすると、
「大変申し訳ございません。その部分は現在閲覧禁止となっております。詳しくお知りになりたい場合は申請を挙げてもらうことになっておりますが、どうなさいますか?」
明らかに関わってはいけない雰囲気を出してきたので、そこまでして調べる気は有りませんと断っておいた。
その後は普通に授業を受けていたのだが、
「ティ・レックス男爵様。お嬢様がお会いになりたいとの事です。お時間が有りましたらご一緒頂けますでしょうか?」
何処かで見たチェンバレンさんがいつの間にか背後に立っていた。
椅子の人も正直怖いのだがこの人も怖い。
前もそうだったが今も全く気配を感じさせずに背後を取られてしまった。
しかも恐らくだが俺の予定も完全に把握している気がする。
昨日ならば予定があったし明日なら予定がある。
どうやってかは知らないけどほぼ間違いなく俺の予定を知っている。
「わかりました。伺います」
そう伝えてチェンバレン?いやメイドさんなのかな?と一緒にボーダー伯爵令嬢の待つティールームへと向かった。
つもりだったのだが、何故か寮にあるボーダー伯爵令嬢の部屋に案内されてしまった。
あれ?おかしいな俺が間違っていたのかな?
「お久しぶりでございますボーダー伯爵令嬢様。今日はどのようなご用事でしたでしょうか?」
部屋に入ってすぐにカーテシーをしボーダー伯爵令嬢に挨拶をする。
ちらっと中を見たのだが伯爵家用の部屋のようで、手前に有るこの部屋は応接室になっているようだ。
奥にもまだ部屋があるから寝室とか個人の部屋はそっちなのだろう。
学院の寮なのに2部屋以上有るなんてすごい話だ。
「お久しぶりですねティさん。王都に戻られたことは伺いましたが、なかなか会えませんでしたので寂しかったのです」
なんて言いながら座ったまま俺の横に滑ってきた。
当然のようにボーダー伯爵令嬢の下に椅子の人がいて、テーブルを挟んで奥側にいたのに本当に滑るようにこっちに来た。
「取り敢えずこちらにお座り下さい。話したい事も沢山ありますから」
なんて言いながら示したのは、なんと椅子の人の肩の辺り。
ボーダー伯爵令嬢が腰のあたりに座っているから、座るとしたらそこしか無いのだがそういう問題ではないので、そっと手前にあった椅子に座りボーダー伯爵令嬢の方を向いた。
少し残念そうな顔をしていたが、
「今回お呼びいたしましたのは、旅のお話ををと言うのも有りましたが、ティさんがちょっと危険な物に興味を持たれましたようでしたので、急いでお話しておこうかと思いまして」
「危険ですか?」
どちらかと言うと身の危険を今まさに感じているのだが?
まぁそんな事は表に出さずに小首をかしげながら聞いてみた。
「ご存じなかったのは仕方ないとは思うのですが、それなりの貴族家ではタブー扱いになっておりますので、知らなかったでは済まないと思います。私の口からも詳しいことはお話できないのですけど、取り敢えず今の国王様が」
「ラファ様。それ以上は」
忘れた頃に来るからビクッとしちゃったよ。
椅子の人が話を遮ってきたのか。
「あらごめんなさい。あまり詳しいことは話せないようですので、簡潔に言わせていただきますと、エスト王国の歴史は調べないほうがよろしいかと思いますの」
は?そこまでヤバイ案件なのか?
しかもそれなりの貴族家ではタブーとされているって事は、普通の貴族家なら知っているってことか。
今まで普通に歴史の授業は受けてきたしマーブル先生にも教わっている。
だけどそんな事全く聞いたことがない。
いや待てよ。
先先代が暴王だとか狂王だとか呼ばれているのは知っているが、その前については確かに何も知らない。
特に覚えるようなことが無かったからだと思っていたが…
話の流れを読むならおそらくは現国王が禁止しているってことか。
たかが歴史にそこまでするのか?
よほど知られたくない事があったとしても、調べることさえ許されないとか…
まぁわざわざ危険に飛び込まない方が良いよな。
「わかりました。私もそこまで気になった訳ではなく、本が並んでおりませんでしたので聞いただけでしたから」
「そうですか良かったわ。場合によっては色々と連絡しなくてはいけない所でしたので、ティさんがすぐに分かって頂けて本当に良かったです」
おおーい。
なにか?俺がここでちょっとでも気になる素振りを見せていたら、一体どうなるところだったというのだ?
まさかそれを確認するために椅子の人に座らせようと?動揺したとかそんな事を確認するため?
おおおおおおっっかねーーー。
今俺の平和な日々が一瞬で消え去るところだったのか。
にしても図書館の本棚に普通に地雷置くなよ!
「では大事なお話も済みましたし旅のお話でもお聞かせくださいな」
そう言いつつテーブル方へと意識を向けられると、いつの間に置かれたのかわからないが、既にお茶がテーブルに並べられていた。
いつの間に!とかも思ったけど、取り敢えず平静を装って軽くお話をしたのだった。




