第79話 復学準備
次の日グロス達のところに行って、今回の精算と報奨金の分配を行った。
亡くなった者への見舞金は俺の方からも出させてもらって、まとめてグロスに預けたので遺族の方に届くだろう。
まぁグロスも全員の所に行くわけではなく、総合ギルドを通して手紙と一緒に送ってもらうのが多いのだけど。
手紙は帰還の途中に俺が全員分用意していたから、それにグロスの分を合わせて送る。
グロス達はナメクジも人間も半分位になったものの、今回の働きを認められて正式に西の辺境から塩の輸送を任されることになった。
今までも運んではいたのだが他の荷物と一緒に運ぶ位で、そこまでしっかりと運んでいたわけではなく、今回のことで塩全部ではないが正式に契約となり、利益は若干減ってはしまうものの安定した収入を得ることになった。
辺境から王都に塩を運ぶ関係上帰りの荷物は何でも良いしな。
前世風に言うと運送会社が認められて郵便局の下請けになった感じかな?
まぁその辺は人によって違うけど、以前ナメクジが誹謗中傷で干されたことを考えると、今後はそういった事が起きにくくなったから良かったねって話だ。
ついでと言っては何なのだがお取り潰しになったスタン家が、借金の整理のために売りに出されているのをマーブル先生に教えてもらったので、今回の輸送任務のお礼とお祝いとして、俺が元スタン子爵家の土地建物を購入しておいた。
マーブル先生や周囲の根回しも行い正式にナメクジ荷馬車の中継地として、元スタン子爵家の土地屋敷を俺のものにしたので、清掃や整理のためにグロスたちを連れて乗り込んだのだが、
「何の用です!ここは由緒正しいスタン子爵家のお屋敷ですよ!貴方のような下賤なものが入っていい場所では有りません!」
「そうだそうだ!」
あー奥さんとガキが不法占拠を決め込んでいたのか。
見れば屋敷の中の殆どの物は既に持ち去られていて、ガランとしているものの奥さん達だけは立派な服を着ている。
だがその服も煤けていると言うか汚れていて、本来の服とはかなり違ってしまっているのが分かる状態だ。
「あー貴方達は完全に包囲されている速やかに屋敷を引き渡しなさい。さもないと実家に連絡しますよー」
なんて言ってみても、彼らは正直実家には居場所なんかないだろうし、おそらくはその実家すらもう無いだろう。
「孤児のくせに生意気だぞ!俺の子分にしてやるから這いつくばってゆるしをこえー」
んーなんだか面倒くさいし、このままいられても迷惑なだけだな。
かと言ってそこらに放り出しても悪評が立ちそうだし、変な因縁つけられても面倒だから、
「あー今すぐ立ち退くのであれば当面の生活費はお支払いします。それ以降に関してはご自分たちで何とかしてもらいますが、ご実家に帰るだけのお金は渡しますので、それで手を打ちませんか?サインしていただければ手配しますので」
と、妥協案を示してみたところ何も考えていないかのように、さっさとサインを貰えたのだった。
余計な出費ではあったのだがまぁ必要経費みたいなものだろう。
念の為この書類を公式に届けて、この物件の販売者には抗議の手紙を送っておきましょう。
そうしてやっと屋敷の中を確認できたのだが、かなりひどい有様になっていたのだった。
価値の有りそうな物は既に持ち去られているため、残っている物は大した物は無いのだが、それにしてもそれ以外がひどすぎる。
ゴミのような物が散乱しているし掃除もされているようには見えない。
それに彼奴等が散らかした本当のゴミまでもが適当にぶちまけられている。
仕方ないので総合ギルドに片付けの仕事を依頼したのだが、今はどこもかしこも同じような状況らしく、人がなかなか集まらない状態だったのだ。
考えてみれば当たり前で、貴族派の処罰によって屋敷が売りに出されることが多く、腹いせにわざと汚されていたり、もともと整理が出来ない貴族屋敷もあったので、今は大清掃時代に突入していたのだった。
かっこよく言ってもなにか変わるわけではないので、取り敢えず貧民街に行って日銭を稼ぐ人達を雇用し、全体の清掃を依頼してみた。
なんか元締め的な人に声をかけたのが良かったのか、そもそもそういった事に精通しているグロスが居たからなのか、真面目な人員を揃えることが出来たので、なんとか大雑把な清掃は形が付き最後の仕上げとして、俺が中級魔法の大清掃を発動させることで、屋敷の片付けが終わったのだった。
兵舎や訓練場に関してはグロス達が使えるように整備していき、ナメクジの子供達もここで育てていく。
屋敷は事務所兼俺の部屋として確保していて、総合ギルドにも依頼してその辺の整備を行っていく予定だ。
ナメクジは臭くもならないし鳴いたり吠えたりもしないから、周囲への根回しは簡単だった。
ちなみに貧民街の人達は総合ギルドの加入金も払えないため、普段からギリギリの生活をしているらしいし、そういった所にお決まりの今回使った元締めみたいのが、国の法律とは別にルールを作って仕切っていたりする。
俺がどうこう言える立場ではないし、職務上取り締まることも多々あったから、あまり関わらない方が良いと思っているが、グロスは長年そういった仕事をしてきたからこそ、そういった元締ともある程度話ができるし、場合によってはお金を渡して利用することも有るのだ。
元締めには今回の事で話ができたから、レックス男爵家には今後言われれば人材の提供はするって事になり、こちらも既に業務から離れて日も経っているから、そちらのする事に口出ししないと密約の様な物をかわすことになった。
まぁ俺も正義の味方ってわけでもないから、俺に迷惑をかけない範囲でならそういった事に目をつむるのもやぶさかではないのだ。
ついでに人員の減ってしまったナメクジ荷馬車の人員補充も、この元締めを通して行うことが出来たし、ナメクジの子供達の家も確保できたからある程度満足できたのだが、屋敷を元スタン家の俺が手に入れた話はすぐさま王都中に流れてしまった。
どうなったかと言うと、スタン子爵家に金を貸していた商人達が屋敷に押しかけたのだ。
法律上既にスタン子爵家は取り潰されており、その借金は無効になっているのだが、諦め切れない商人達が俺に返済を迫ってきた。
正直言って馬鹿ばっかりなのでサクッと警備兵に通報してお持ち帰りいただいた。
違う家に借金の取り立てに来るのが既におかしいのだが、貴族家にそんな事をしたらどうなるか分かっていない方がおかしいのだ。
こうしてなんとか生活基盤を整えていくことが出来たので、次は俺の生活を整える番で、俺は取り敢えず学院に復学することにした。
学院はバルサーが戦死した時に念の為に休学届を出していたから、それから考えると既に6ヶ月は経っているのだし、王都を離れていたのも5ヶ月以上あったから、本当に久しぶりの登校になる。
一応昨日には寮に入っていて、本当なら男爵用の二人部屋以下の部屋になるのだが、既に寮のお金を払っていたのと居場所がはっきりしていたので、同じ部屋をそのまま使えるようにしてもらえた。
長い休学期間を開けたらもう一度1年目をやり直すようなこともなく、元のクラスに復帰という形になっている。
まぁ成績はそれなりにちゃんとしていたし、しようと思えば既に卒業することも出来るのだから、元のクラスでも何も問題はないのだ。




