第72話 ゴブリン大討伐2
以前からおかしいと思っていたのだが、今回のゴブリンの奇襲でわかった事がある。
第2王子の言っていたギャルゲーの世界は、確かにこの世界に似ているようで、今回ゴブリンの出どころが判明したのはそのお陰だった。
すぐにアントライア公爵令嬢に進言して王子の尋問を進めてもらうことにした。
特に重要なのはゴブリンのリーダーが勇者にしか倒せないというもの。
どう言った理屈なのかはっきりさせておかないと、もし本当に王子の言うとおりだとしたら、かなりやばいのは間違いないのだから。
今はゴブリンが出てくる所には二千人程の部隊が待機していて、拠点を作って見張ってもらっているので大丈夫と思いたいのだが…
どうもその地下通路は魔法の効果のようで、こちら側から街に向かう事はできず、どうやって出てきているのかさえわかっていない。
ゴブリンが出てきた周辺をかなり深くまで掘っても、洞窟や穴は見つからないし何か鍵になるようなものも見つかっては居ない。
だから取り敢えず周辺を監視してもらってはいるが、あれだけ掘り返したにもかかわらず、同じ場所からゴブリンが出てくるのを確認している。
それに地下通路はここだけではないらしく、他の国から来た部隊で物資を奪われたところがあるから、そちらの警戒も強化してもらった。
ここまで順調にゴブリン討伐をしてきたのだが、ここに来て問題が発生してきているようだ。
奪われた物資の問題も有るのだが、予定していた他の国の部隊が集まるのが遅れている。
これは各地に散っていたゴブリンが予想より多かったという事なのだが、あまり遅れてしまうとゴブリンの方に各個撃破のチャンスを与えてしまうし、まだ見つかっていない通路を通って妨害している可能性も考えられるため、奪われた街の生き残りにも話を聞く必要が出てきた。
そんな感じで色々と手を打っているのだが、それとは別に俺の方の問題も出てきてしまった。
それは…
非常に暇になってしまったのだ。
簡単に言ってしまうと今まで俺が忙しかった理由は、手が空いている暇なバカがここに文句を言ってくるせいだったので、各地でしっかりと警備をしなくてはいけない今は、そんなバカな事をやっている暇はないし、ここまでわざわざ来る時間も無くなってしまっているからだ。
とりあえず今回判明した地下通路が他にないならば、ここが奇襲される事は殆ど無いし、やる事と言えばナメクジ達のお食事風景を見ている位になってしまった。
一応考えなければいけないことも有るのだが考えても仕方無い事でも有る。
豪華な箱をなぜゴブリンが持っていたのか?
ゴブリンはどうやって物資のある場所を知ったのか?
最初の豪華な箱については以前から考えてもいたが、残念ながら情報が足りないと言うか、何か重大な事を知らないからわからないのではないかと思っている。
ゴブリンがここを知っていたのも同じ理由で、何というかパズルのピースがまだ揃っていない感じなのだ。
考えていることは有るのだがそんな事があるのか俺にはわからない。
それに他の誰かに言うことも出来ない突拍子も無い考えというか、逆に言ってしまうとそれ位しか理由がないと言うか…
まぁありえないとは思うのだが、ゴブリンと手を結んでいるやつが居るってことだ。
こんな事を考えても仕方ないしナメクジでも可愛がるとしよう。
今回のゴブリン討伐では100匹のナメクジを連れてきて居るのだが、この子達のご飯はゴブリンで済むから楽で良い。
今なら大量にあるから1日1体以上好きなだけ食べさせている。
ナメクジ達は味は感じないらしく何でもよく食べる。
たとえゴブリンが腐っても別に気にしないらしく、新鮮なゴブリンと腐ったゴブリンを並べても、同じ様に食べるから問題ないのだろう。
タンパク質?が好きなのか肉系を好むのだが、骨とかもカルシウム目的なのか好きなようで、行軍の休憩中とかに大型の動物の骨をあげると、ごりごりごりごりずっと音がするし、食べ終わる前に行くよって言うと、触角で残りを持ってきて渡してくる。
次の休憩の時には触角を振って骨をねだったりもするしな。
今は特にやることもないからナメクジ達の飲水を出してやろう。
そう思ってナメクジ達用の水樽に近づくと、それに気づいたのか各所にある桶にナメクジ達が集まり始めた。
100匹も居ると一匹ずつに水をあげていくのも大変なので、水樽に水を補給するとそこから樋を伝って10箇所の水飲み桶に、自動で給水出来るように作ったのだが、まぁぶっちゃけて言ってしまえば流しそうめんのそうめん無しみたいなものだ。
ナメクジ達にとっては桶だろうと皿だろうが飲みにくいらしく、ある程度桶に水が溜まってくると触角を使って水をこぼして、こぼれた分をみんなで飲んでいたりする。
桶に水が入っていれば勝手にこぼして飲んでいくから、きっとこれで良いのだと思う。
水が足りない時は樽を触角で突いてアピールするようになったしな。
そうそうグロス達がナメクジ荷馬車で成功すると、一部の奴らが真似をしてナメクジを飼い始めたらしいのだが、何のノウハウもなしに始められるものでもなく、結構な人数がナメクジに逆襲されたと聞いた。
この世界の馬事情は前も話したが、ナメクジ達は慣れていれば飼いやすくなかなか優秀なんだけど、知っていないといけない事も多いから、誰でも出来るものではないらしい。
あんまりナメクジ達を可愛がりすぎると、また『なめくじだいすき』とか言われかねないから程々にしているのだが、慣れると結構かわいいものなんだがな。
ここの奴らは体が硬い鱗になっているから、ぬめぬめしたりもしていないし、クビというのか頭のあたりを左右に振って、なにかアピールしたりするしな。
そんな感じでボーッとしていたら、
「お嬢。本隊から来てくれって連絡が来ました。行かれますか?」
「うーん今暇だし行ってこようかな?それにしても何の用だろう?」
本隊に呼び出されるような事をしていないし状況も変化が無いはずだから、呼ばれた理由はわからないけど断れる立場でもないし、さっさと行ってくるとしよう。
歩いて行っても片道1時間かからない位の距離を、お供も付けずに一人で向かうと、
「来てもらってすまないが、早速本題に入らせてもらう」
案内されて入った部屋には既に、第1王子や総合ギルドの担当者といったお偉いさんが集まっていて、俺の場違い感が半端ないのだが、待っていたと言うよりかは丁度来たといった感じだろうか?
「不味い報告しか無いのだが報告しないわけにもいかない、まず一つ目南東の街がゴブリンに落とされた」
「「「は?」」」
「次に東から来ていた部隊の食料が全て失われた。東側の部隊は下がるための食料を要求している」
「「「はぁ?」」」
「最後に大変面倒なことに、第2王子殿下が脱走した」
「「「はぁあ?!」」」
いったいなにがどうなっているのやら…




