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第7話 子爵家3

俺はすぐ倒れたのでわからなかったが、倒れた俺を見た当主は、更に叩こうとしていたらしい。


慌てて兵士たちが止めに入ったため、俺は助かったのだが、「冗談だ。本当に叩くわけないじゃないか」なんて笑いながら言って、屋敷に戻っていったそうだ。


グロスが治療の得意な兵士を呼んで、回復魔法をかけてもらったそうだが、打たれる瞬間に、咄嗟に発動した身体強化のおかげで、怪我自体は軽いものだったらしい。


とは言え、五歳児のましてや女に向かってするには、異常な攻撃だったそうだ。


まぁ向こうからしてみれば、俺が死んでも別に良かったと言うことだ。伯爵には訓練中の事故とでも言っておけば、新しい跡継ぎの選定の間は、時間が稼げるってことなのだろう。


流石に身の危険を感じるが、慌てて逃げても生きていける気がしないし、やっぱりここで頑張るしか無い。


取り敢えずあれからすぐに、俺用の木刀を作ってもらった。


長さは30cm程だろうか?考えてみたら俺の身長に合わせて、無理なく使える範囲と考えたら、こんなものか?グロス達からみたら、ナイフぐらいにしかならない大きさだ。


この日から、走り込みと身体強化の訓練に、素振りと防御の訓練が加わった。


あの時に咄嗟に発動させていた、身体強化のおかげで、頭をかち割られないですんだのだが、もっとうまく受けることが出来れば、怪我をせずに済むし、将来どうなるかはまだわからないが、街道警備の仕事をするなら、まずは防御からだそうだ。


若干グロス達が気にしているのが、五歳からこんな訓練を始めてしまうと、体が大きくなった時に変な癖が残ってしまい、修正するのに苦労してしまうとの事だが、俺としては今生き残るために必要な訓練だから、そんなに気にはならない。


ちなみにこういった転生物の定番で、実は前世で剣道やってましたとか有るが、学校の授業でもそんな物を習った覚えはなく、かろうじて柔道を授業でやった気がするだけだから、いきなり強くなったりもしない。前世の俺がもう少し頑張ってくれてればと、ちょっと恨んでしまうこの頃だ。


防御については、とにかく受け流す事を集中して学ぶ。体が小さいし力が弱いから、受け止める事ができないからだ。


グロスが片手でゆっくり振ってくる木刀を、俺の木刀を斜めに当てるようにして、滑らせる感じだ。


グロスはゆっくりやってくれてはいるが、角度が甘く滑らせられないと、グリっと押し込まれてしまう。


それに、間違った角度で滑らせてしまうと、木刀に付けられている鍔の部分に当たってしまい、それもグリっと押し込まれてしまう。


ゆっくり振ってもらっているにもかかわらず、こんなにうまく行かないなんて、俺はもしかしてセンスみたいのが無いのかも知れない。


だがグロスや他の兵士に言わせると、なかなかよく出来ているそうだ。


うまく受け流せると、すごく褒めてもらえるため、嬉しい気持ちになってしまうのだが、もしかしてこれが噂に聞く、褒めて伸ばす教育ってやつなのだろうか?


ちょろい。ちょろいぞ俺。


そうやって日々の訓練を頑張っているのだが、もしかしてこれって、充実しているって感じなのだろうか?


孤児院の時は皆して、死んだ魚のような目をしていたものだが、毎日たっぷりの食事をして、しっかり体を動かして、清潔な寝床でしっかりと寝る。


あまり思い出せないのだが前世の俺は、食事もなんか適当だったし、清潔とは言えないような部屋に住み、睡眠もあまり取れていなかった気がする。


転生物でよく有る、食事も不味くて不潔な生活ってこともなく、本当にいい感じだ。もしかしたら俺以外の転生者からしたら、違う意見もあるのかも知れないが、前世の俺の生活レベルはかなり低かったようだから、全く気にならない。


最近は訓練場から見えるお隣さんから、お菓子の差し入れをもらったりもしている。これがまた美味しくてついつい食べすぎてしまうが、しっかり運動しているせいか、夕ご飯もちゃんと食べれている。


しかも嬉しいことに、差し入れのお菓子を食べながら、少しお話をしたりするのだが、貴族のあれこれなんかも教えてもらえるし、本当にいい感じだ。


ちなみにこのお隣さんは、エルダー伯爵と同じ派閥の元伯爵さんで、今は息子さんに爵位を譲って、楽隠居状態だそうだ。


元々は法律関係の仕事をしていたらしく、今でも時々相談に来る人がいるらしいが、そういった話も俺が子供だかなのか、教えてくれたりする。


もしかしたら将来このお隣さんに、色々と助けて貰う必要があるかも知れないから、仲良くしておくことに損はないし、なによりお菓子おいしいしな。


そうやって頑張っているのだが、あれからも時々当主がやってきては、俺を殴っていく。


今はまだ体も小さいし、力も弱いから負けているが、逆に考えると当主はそんなに強くなさそうだ。


いずれ返り討ちにする日を夢見つつ、日々の訓練をこなす毎日を送っていく。


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