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第59話 波乱1

「ティちゃんが私を頼ってくれて嬉しいわ。それでどうするのかしら?」


まだお昼を過ぎたところだったので、そのままマーブル先生の所に来たらたまたま家にいたらしく、執事さんに連れられて応接間で話をすることになった。

とりあえず現状を話して助けてほしいことを伝えたら、どうしたいのかを聞いてきた。


「私としては総合ギルド内の問題に、あまり関与する気は有りませんし、グロスの件も合わせて何もなかったことに出来れば、それで良いと考えています。あんまり欲張って謝罪をとか賠償をとか言っていたら、後々面倒なことになると思いますので」

「そうね。それが良いでしょうね。今ね色々な所がゴブリン対策で動き出しているから、あまり長引かせ無いほうが良いかも知れないわね」


そう言って対策を相談してみたのだが、別に特殊な方法をする必要はないと思っている。

向こうは俺が貴族では有るものの、子供の上に特に権限も持っていないから、舐めてかかってきているだろうし、向こうのバックにはおそらく貴族派が控えているのだろうから、あまりしつこいようなら貴族に言って対処するつもりなのだろう。

だからこちらは法律に詳しい貴族である、マーブル先生に助っ人をお願いしに来たのだ。


人ってのは結局力に弱い生き物だ。

力ってのが腕力であったり権力であったりするわけだが、そういった背景を見せずに交渉しようとすると、舐められて話が進まなかったり、酷い時には開き直られたりしてしまう。

向こうもそれなりの場数を踏んでいるだろうから、腕力にはそうそう屈しないだろう、なので今回は権力を持って交渉に行くってことだ。

残念ながら明日の午前中はあまり抜けたくない授業が有るので、午後から向こうに行くことにした。


とは言え明日の約束をしたらすぐ帰りますってわけには行かないから、マーブル先生と久しぶりにゆったりとお茶をすることにした。

色々なうわさ話とか俺が学院であったこととかを話していたのだが、ボーダー伯爵令嬢の話をした所で


「あらあら?あの子まだそんな事しているのね。ちょっと不思議な子なんだけどとても優秀な子なのよ。あの趣味がなければもっと良い所で働けるのに」


なんて軽く呆れながら話してくれたのは椅子の人の事だった。

聞いてみた感じだとあれはボーダー伯爵令嬢の趣味ではなく、椅子の人の趣味のようなのだが、それにしてもその状態を受け入れられるのも、どうかと思ってしまう…

ちなみにとても優秀で貴族の間ではよく知られているものの、その趣味のせいでなかなか就職先が決まらなかったとか、何というかとても残念な人らしい。


そんな話をしていたら良い時間になったので、お礼を言って寮に帰ることにした。

帰る前に今回のお礼の話もしてみたが、暇だからいらないと断られてしまった。おまけに帰りの足として馬車を出してくれているし、いつかこれまでの恩もまとめて返せると良いのだけど、どうしたら良いのかは全くわからないままだ。




翌日は寮から普通にクラスに向かったが、今日はボーダー伯爵令嬢には会わなかった。

昨日の様子だと今日も来るかと思ったが、いなかったのにはちょっと驚いた。

もしかしたら椅子の人の判断なのだろうか?

あんまり考えても仕方ないからさっさとクラスに行くことにした。


午後のことを考えるとどうしても授業に身が入らないが、なんとかうまく切り抜けて午前の授業が終わると、すぐにマーブル先生の屋敷に向かった

屋敷に着くとマーブル先生は準備して待っていてくれて、直ぐに出発となるかと思ったのだが、


「ティちゃんこれから戦いに向かうのに制服のままはだめよ。それにご飯は食べていったほうが良いからちょっと待ちなさい」


マーブル先生に言われ確かにそのとおりだとも思ったので、軽く軽食を取った後着替えることになった。

今回はお茶会とかではないから高位貴族の服装を気にする必要もなく、すぐに準備して着替えていったのだが、


「マーブル先生これは流石に…」

「ティちゃんもお年頃なんだからその位はね。それにその方が動きやすいでしょう」


確かに動きやすいと言えば動きやすいのだが、赤いミモレ丈のドレスで裾捌きとか気にしなくて良いから、確かに動きやすくは有るのだが、これで派手に動いてしまうとスカートの中が見えてしまう。

それに胸元が結構開いていてスースーするのだ。

別に殴り込みに行くわけでもないからこれで良いかなと思っていたら、


「ティちゃんついでにこれも持って貰えるかしら?」


と、渡されたのは綺麗に装飾された剣だった。

前世風に言うならばエストックだったかな?細い剣で結構長い突くのに特化した剣で、長さがかなり長く多分120cm位だろうか?身長の低い俺が持つと抜くことも出来ないように思うのだが?


「ふふふ。大丈夫よそれは私が使うから、そんな感じで両手で持っていてくれるかしら?それは私が戦いに行くときに常に持っていたものなの。知っている人は知っているから大丈夫よ」


なんて言っている。ちなみに持ち方としては持ち手を上に向けて両手で中程を持つ感じだ。

あれかな?使う時はマーブル先生が持ち手を持って俺が後ろに引くのかな?

まぁ俺の方も一応グロスのナイフを腰に差しているし、俺の空間倉庫には短剣も入れているから、万が一の時でも問題はないかな?

ちなみに今の俺の空間倉庫の容量は、大きめなリュックにして2個分無い位だから、おそらくは10リットル無い位だろう。

まぁそんな事は置いておき早速総合ギルドへ向かう。

ちなみにグロスは先に総合ギルドで待機している予定で、またなんか難癖をつけてきたら、俺とマーブル先生が来るまでは一切答えられないと言うように言ってある。




馬車で総合ギルドに乗り付け堂々と入り口から入ると、すぐにグロスがやってきて俺達の後ろに回った。

そのままギルドの総合受付に向かうのだが、受付の様子がかなり緊張しているのが分かる。

昨日は普通の服装できたのだけど、今日は明らかに貴族って格好できたからね。


「昨日はあまり話せませんでしたので日を改めてまいりました。私はティ、スタン子爵家の長女です。昨日の件でもう一度お話をしようと伺いました。責任者の方を出して頂けますか?」


にこやかに声をかけると、受付のおっさんが震えながら、


「なん何の御用でしょうか?ッ責任者と言われましてももも」


なんて話にならない。

昨日いた人間ではないのだろうけど、問題の共有とかしていないのだろうか?


「そちらの問題で私の預け金が無くなっていることと、こちらにいますグロスが身に覚えのない契約を結んでいた件についてです。昨日は話の分かる方がいらっしゃらないようでしたので、改めて今日こうして出直してまいりましたが、今日もいらっしゃらないというのですか?」

「いえいえいえ大変申し訳ございませんが、その件につきましてはなにぶん今聞いたところでして、私ではわかりませんので別の日にお願いします」


おや?この状態でもたらい回しをしようというのかな?さてとどう追い詰めようかな?

なんて考えているとマーブル先生が動き出した。


「あらあらまぁまぁ、では責任者の方は別に呼ばなくても良いですよ。こちらは別に話し合いをしたい訳ではないのです。先程の件を解決してくれればそれで済みますので」

「いいっまあま今初めて伺いましたから、これから調査いたしまして状況を把握した後にごにょごにょ」

「そうですか?それでは状況の把握や調査にどの位かかるのかしら?その間にも被害が出ていますのでその分の請求をしませんと」


受付のおっさんはなんとかこの場を収めようとするけど、何の解決策もなしにそれは出来ないだろう。段々と追い詰められていくおっさんの顔は、もう紫色のようになってきている。

それでもなんとか逃れようとしているのか、チラチラと後ろを見ているがそこからは応援は来ないようだ。

そうして10分もした頃ついに総合ギルド側に動きがあった。


「これはこれはベラ・マーブル様では有りませんか。このような場所でどうかなされましたかな?」


見ると、片眼鏡をかけた紳士が何人もの部下のような方を引き連れて、帰ってきたところのようだ。

やっとまともに話ができる相手が出てきたのかな?

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