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第58話 予兆5

その日寮から帰ると手紙が届いていて、部屋に帰り見てみるとそれはグロスからの手紙だった。


今までも時々連絡は取っていたのだが、時期が時期だけにまさかとは思うが、スタン子爵家の方からなにか言われたのか?と思い急いで中を見てみた。


予想通りというか予想外というか、どうやらスタン子爵家は今回のゴブリン討伐に参加するらしく、戦力の補強と物資の運搬役にグロス達を指名したようだ。

グロスとして今回のゴブリン討伐に俺が出るのなら、協力は惜しまないと言ってきているが、俺は今回のゴブリン討伐には一切関わっていないし、今回の貴族派のゴブリン討伐は危ないものになりそうだから、参加する気は一切無い。


とりあえず明日にでも総合ギルドに行って、グロスと連絡を取ることにしよう。

幸いにも翌日は出なければいけない授業もないし、他に約束していたりもしないから問題はないはずだ。

もし何か有った時用に寮監さんには行き先を言っておこうかな?


そう思って翌日朝寮を出る前に寮監さんに挨拶に行くと、


「あら?ティさん何処かへ行かれるのですか?私もご一緒してもよろしいでしょうか?」


ボーダー伯爵令嬢が寮監さんと一緒に、お茶を飲みながら待っていたのだった。

寮監さんは椅子に座ってはいるのだが、ボーダー伯爵令嬢は何故かここでも女性の上に座っている。

俺の他にもその状況が見えている人は居るはずなのに、何故か誰も気にした様子がない。

寮監さんなんか普通にお茶しながら話しているし、俺がこの状況をおかしいと思うほうが、おかしいのではと錯覚するほどの光景だ。

とは言え、ずっと見ていても仕方ないので、


「大変申し訳ございませんが、家の事情でちょっと外に出ますので」


と、断りを入れてから寮監さんに総合ギルドへ行くことをお伝えていると、


「あらそうなのですか?丁度私も総合ギルドに行ってみたいと思っていましたし、我が家の馬車を用意させますからご一緒しませんか?」


などと言って強引に着いて来ようとしてくる。

これはあれだ前世でもよく聞いた話で、何でもかんでも着いて来たがったりする、いわゆる嫌われる人の典型のようなタイプの人だ。

束縛系とか過干渉とか言われる人達で、はっきりと断らないとなかなか理解してもらえないのに、はっきり言ってしまうと泣き出したりしてとても面倒なタイプだ。

さてどうしたものかなと考えていると、


「ラファ様。ティ様は家の事情で外に出られるとおっしゃっておりましたよ。無理に着いて行こうとするのはマナー違反になります。あまりわがままを言っていては嫌われてしまいますよ」


一瞬誰が言っているのかわからなかったが、声の出どころがかなり下だったので、椅子の女性が話していたのだとわかった。

こうして普通にしているとほとんど気配を感じないし、状況の異常さに慣れてしまっていたのか、いつの間にか意識の外に行っていたため、気づくのが遅れてしまった。

しかしこの人普通に喋れるんだな…


その後も少し揉めていたようだがなんとか外に出ることが出来た。




グロスに連絡を取ろうと総合ギルドに行くと、何故かグロスが待っていたため、総合ギルドにある小会議室を借りて話すことにした。


グロスが言うには、今回の討伐作戦はスタン子爵家の名誉と誇りがかかっていて、スタン子爵家に関わる者全てを招集する予定だと、スタン子爵家からの使いのものに言われたらしく、俺が本当に出るのならその役目を引き受けるつもりでいたらしい。


「今の所私の方には何も言ってきていないし、もし私が出るのだとしたら、先に声をかけていたと思うよ」


と、関係を否定しながらもグロスからの話を聞いていると、


「我々もそう思っていたのですが、念の為総合ギルドに話を聞いてみたら、若の預け金から支払いが行われることになっていると言われまして」

「は?私がお金を出す事になっているの?何でそんな事に?」


慌てて総合ギルドの受付に話に行ったのだが、


「既に残額は0になっており解約されておりますね。最終取引を確認いたしましたが、当座の資金として半額が降ろされておりまして、残りの半額につきましては総合ギルドへ出されました、依頼の先払い金として支払い済みとなっております。改めて口座の開設をするのであれば、あちらの窓口にお申し付け下さい」


なんて感じで全く取り合ってもらえなかった。

これは先手を打たれてしまった…

もうどうしようもない…


なんてことはなく、普通にギルドの失態による被害なので、苦情対応窓口へ行くことにしたのだが、


「この件に関しましての問い合わせにつきましては、こちらで対応できないようになっておりますので、あちらの窓口をご利用下さい」


この後もあちこちたらい回しにされて、全く話を聞いてもらえないどころか、


「ちょっと待て!うちはこんな仕事を受けてはいないぞ!」

「既に前金をお渡ししておりますので、今からの契約破棄は受け付けられません」

「前金なんて受け取ってはいないし、こんな契約をした覚えもない!」


たらい回しにされながら対応した受付をメモしたり、おかしな言い訳についてのメモをしていたら、横からやってきた係員がグロスに早く仕事をしろと詰め寄ってきた。

仕事の内容は予想通りスタン子爵家の討伐協力なのだが、既に前金が支払われている上に、契約期日を過ぎていたため違約金の発生までしている。


これは俺達ではもうどうしようもないと判断して、マーブル先生の所に行くことにした。


しかし油断していたわけではないが、ここまでの強硬手段を取ってくるとは思わなかった。

流石に総合ギルドまで巻き込んでの詐欺だと、どう転んでもただでは済まないことになるのだが、一体何を考えているんだか?

筆者「誤字報告・ご意見ご感想はありがたく読ませて頂いております。今後もよろしくお願いいたします」

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