第54話 予兆1
そこで説明してもらったのは、なんとも面倒な話だった。
第2王子が数々の問題を起こしていながら、王命として決められてしまったため、侯爵令嬢の方からは婚約者候補をやめられず、しかも、誰を婚約者にするかさえ決めない為に、この歳になるまで候補のまま。
一応候補から外れた場合に備えて、元婚約者達が残っていてくれているが、それもそろそろ限界となってきた。
このままでは嫁ぐことも新しく縁組することも出来ないと、皆が焦り始めた頃に起きたのが、ピンク頭とその仲間たちの騒動だった。
ピンク頭含む5人は、学院で初めて王子に会った様に見せていたが、実は婚約者候補と敵対していた、王子派閥の貴族と作り上げられた、転生者もどきであったそうだ。
元々王子は、実の母である正妃の選んだ婚約者候補が嫌いで、3人の中から婚約者を選ぶ気はなく、しかも、自由に沢山の女の子を侍らせたいと思っていて、自分の派閥に相談していたらしい。
ただし相談していたのは、どうすれば自分の思い通りになるか?ではなく、王子の前世の記憶にあるゲームの通りに進める方法だった。
つまり王子は前世でこの世界そっくりのゲーム、いわゆるギャルゲーをしていて、そのシナリオ通りに攻略すれば目指せる、国中の女の子を集めたトゥルーハーレムエンドを目指していた。
この時点で何じゃそりゃとしか言えないのだが、まだまだ続きがある。
王子の目指すそのエンディングに向かうには、既に色々と失敗していて、これから目指すのはかなり難しく、本来のシナリオとのズレ、いわゆるバグが沢山あったから、とりあえずの目標として、次点のハーレムエンドルートに向かうため、派閥の貴族に手伝わせていた。
最悪それも失敗したら、リセットを考えていたらしい。
それで、あの5人は攻略対象キャラで、この後のイベントに必須のキャラなので、親密度上げのために呼んだのだが、ここで更にバグが発生。
元々のシナリオでは、この5人も転生者なのだが、何故か前世の記憶を取り戻していなかったので、王子が演技指導しつつ、シナリオを進めていたが、ピンク頭と胸出しが、前世の記憶を取り戻し、勝手な動きを始めた。
ピンク頭と胸出しにとっては、この世界は乙女ゲーの世界で、各々別々に逆ハーレムルートを、目指し始めていたそうだ。
なんかもうこの時点でグッチャグチャな感じなのだが、これらの情報は全て侯爵令嬢側に流れていた。
侯爵令嬢たちにとっては、王子の言っている意味も、やろうとしていることも、イマイチ理解できなかったのだが、このまま行くと半年後に行われるプロムナードで、一方的に悪役にされた上、貴族籍剥奪・国外追放のコンボを決められてしまう。
そうなってしまったら、家もただでは済まないのだが、同じ情報を得ているはずの親たちは、そんな事できないしさせないと言うばかりで、一向に取り合ってもらえなかった。
そこで親を動かすための説得材料を探していた所、見つけたのが俺だったという話だ。
この辺もごちゃごちゃして、わかりにくいのだが、なるべく省略して話すと。
中立派や王政派の動きから、貴族派に対してなにかあると判断して調べた所、今年中に王子の派閥を含む貴族派の多くが、処罰されてしまうのがわかり、候補とは言え王子の婚約者のままだと、処罰に巻き込まれかねないと、説得していったらしい。
それでもまだ渋る親たちに、王子の汚点を増やす必要を感じた侯爵令嬢達は、王子のシナリオを強引に前倒しにすることにした。
それがプロムナード(仮)だった。
侯爵令嬢達はまず王子の所に居るスパイに命じて、プロムナードまで待たなくても、同じ状況を作ればいいのではと、短気な王子をうまく操り、プロムナード(仮)を企画させることに成功。
ついで、あの5人に連絡を取り、自分達の言うことを聞くのなら、その後の生活の保証をすると約束し、王子に無いこと無いこと吹き込ませた。
この時にはピンク頭も胸出しも、ここがゲームの世界ではないのでは?と思っていて、簡単に寝返ってくれた。
ちなみに王子には、プロムナード(仮)を開催できるほどの能力がなく、側近たちにもそんな力のある者が居なかったため、仕方なく侯爵令嬢達が、自分達で準備することになった。
こうして準備を整えていったのだが、ここで王子がおかしなことを言い出した。
今までシナリオ通りに進めようとしても、なかなか思い通りにいかず、さらにシナリオから外れた、プロムナード(仮)に対して、不安を覚えたようで、シナリオ通りにいかなかった場合の保険として、側近たちに計画がうまく行かなかった場合、強硬手段に出るよう指示を出した。
この情報もしっかりと侯爵令嬢達に伝わったが、いきなり会場に衛兵を置いたりは出来ず、かといって、計画を知る者を増やすのも危険と考えて、急遽俺を使うことにしたそうだ。
結果としては計画はうまくいき、婚約者候補をやめることが出来た上に、元婚約者と改めて婚約することが出来、侯爵令嬢側にとっては大成功となったのだ。
ただ、計画は国王陛下のも知られていて、王子派の完全解体とは行かなかったのが、残念なところだったが、王子は行方をくらませているし、その程度は誤差範囲だったらしい。
そのおかげで俺に被害が出たのは、侯爵家にとってはどうでもいい事だけど、流石にそのままは可愛そうだから、見舞金については総合ギルドを通じて、返してくれることにはなった。
他にも色々な貴族が、それぞれの思惑で動いているらしく、侯爵令嬢達にわかっているのは、こんな感じだそうで、俺に対しても今回はよく働いたから、見舞金の返却だけではなく、今後何か有ったら助けると約束してくれた。
俺としてもこれ以上かかわりたくないし、お金も返ってきたから、これで良かったと思うしか無かった。
そうして、今回の件はなんとか落ち着いて、また平和な日々が返ってきたのだが、全部が平和になった訳ではなかった。
最近なんだか、見張られているのだ。
かなり遠くからだし、俺になにかしてくる訳でもないから、こちらから動くことも出来ないでいる。
時々視界の端に女の子が居たり、視線を感じて振り返ると、さっと隠れる人が居たりと、前世の記憶にあるストーカーみたいなのが、ついてきているようだ。
しかも、一人ではなく複数。
レレとハンナも気付いているのだが、害はないから大丈夫と言うだけだ。
もしかしてこの2人は、相手を知っているのかな?




