第53話 協力体制5
翌日は元々休日だったのだが、前日の余波を受けて、教師たちも生徒たちも、右往左往の大騒ぎになっている。
あっちでひそひそ、こっちでざわざわ。
全く落ち着きのない状態だ。
色々な情報が錯綜して、どれが本物なのかなんて、誰にもわからない状況で、新しい噂ばかりが先行していく。
そんななか俺と言えば、日課の訓練の合間に、レレとハンナとお茶を楽しんだり、教師に呼ばれて証言したり、王子の女子寮侵入の件まで復活して、王城からの調査にまで協力する羽目になった。
結局騒ぎが落ち着き、もろもろの処分が決まるまでに、2週間もかかった。
現在学院内はとりあえず落ち着いているのだが、プロムナード(仮)の余波は大きく、前と後ではかなりの違いが起きている。
まず問題の張本人である第2王子は、あれから姿を消していて、軍まで動かした捜索にもかかわらず、完全に消息不明になっているらしい。
あの素晴らしい捨て台詞の続きは、今のところ聞けていない。
王子が一人走り去ったことで、残されていた側近達は、全員捕縛されていて、全ては王子の命令だったと言ったらしい。
3人の侯爵令嬢や元婚約者ズは、いまだに学院に顔を出していないものの、親しい貴族たちからの噂では、元気にしているそうだ。
今回の件は貴族世界にとって、かなり重大なことだったので、全ての判断は国王陛下が下すことになったのだが、あまりにも甘いその対応に、口には出さないまでも、不満に思っている貴族は多い。
まず事件の当事者で問題の中心人物である第2王子は、現在行方不明のために処分保留の上、学院を無期休学としていて、表向きには何の処罰もされていない事になっている。
側近たちの方は、中心人物の第2王子が行方不明であり、全ては第2王子からの命令であったため、お咎めなしだそうだ。
ただし、流石にそのままでは問題が有るとして、各家が自主的に自宅謹慎をさせている。
3人の侯爵令嬢については、第2王子との婚約を解消して、元婚約者ズと再び婚約したらしい。
婚約破棄ではなく、両家合意の上での婚約解消になっているのは、当事者である第2王子が行方不明で、事実確認が出来ない為だそうだ。
基本的にどの家にも明確な処罰がないのだが、明確な処罰を下された者もいた。
それが俺だ。
処罰理由については、高位貴族への暴行となっていて、あまり覚えていないのだが、手首が折れていたとか男の急所が潰れていたとかで、見舞金という名の罰金を払わされてしまった。
これは政治的な理由の、スケープゴートのようなもので、当事者である各家が、これだけの事件を起こしながら、お咎め無しでは示しがつかないのと、被害者?家族の不満をそらすための物だが、俺だけが加害者扱いなのは、納得行くわけがない。
まぁ事件当事者の中で、一番家格が低いのが俺だからなのだろうが、そもそもこれだけの事件を起こしながら、被害者?の家をそのままにするから、不満が上がるわけで、取り潰しにしてしまえば問題なかったはずだ。
前から思ってはいたが、この国の現国王は、善人では有るのかも知れないが、無能で有ることは間違いないだろう。
おそらくは裏側での取引や、政治的なやり取りがあったのだろうが、被害者?の家も俺も納得がいかない判断だった。
マーブル先生からは、今はこらえて欲しいと連絡が来たし、仲良くしている人達に迷惑をかけられないから、素直に従ってはいるが…
ちなみにこの件に関して、スタン子爵家の方からもお叱りが来たが、適当に返事だけしておいた。
罰金も俺の財布から支払っているのだし、そもそも既に縁を切っているのだ。おまけに今回の処罰に関しても、汚名というものでもないのだから、なにか言われる筋合いではない。
家の名前を傷つけて〜とか言った所で、最終的には金よこせだしな。
そうそう忘れていたのだが、5人のピンク頭とその仲間たちは、公式にはこの件でのお咎めは無かったものの、制服を改造していたり、普段の生活態度の悪さや、注意しても全く改善しなかったりと、かなりの問題児だったのもあり、めでたく除籍処分となっていた。
そんな不満ばかりの日常を過ごしていたら、突然侯爵家のメイドさんが現れて、
「ティ様。忙しい所大変恐縮ですが、お嬢様がお呼びです。ご一緒頂けますでしょうか?」
なんて言ってきた。
これは、多分事情説明なんだろうなと思い、ついて行くと、
「お久しぶりですね。今回は色々と助かりましたわ。お礼と言ってなんですが、事情説明をしようと思いまして呼びました」
いつもの専用ティールームに居たのは、いつもの6人だったのだが、事件なんて無かったかのように、優雅に待っていた。




