第52話 協力体制4
「まずイジメとおっしゃられましたが、どなたをどのようにイジメたと言うのでしょうか?」
「第2王子であるこの俺に反論するというのか!その態度が既に罪を犯しているということが、まだわからぬのか!だが!温厚な俺様がお前たちに分かるように説明してやろう。お前らがイジメていたのはこの5人だ!」
「殿下?それで私達がどのようにイジメたというのですか?その方々に私は話したことも有りませんが?」
「それだ!そうやってこの者たちを無視し、挙げ句に学院の生徒達にも、無視することを命令したそうじゃないか!」
凄い言いがかりだ。無視されているのかは知らないけど、少なくとも俺が貴族的な対応をするのは、マナーがなってないからなんだが。
「よくわかりませんが?それはその方々の問題では?それに私達が命令したという証拠でも有るのでしょうか?」
「ふん!そんなものお前らが隠蔽しているのはわかっている!権力を使い脅しているのだろう!」
「つまり何の証拠もないのに、私達を糾弾したのですか?」
「現にこの5人は学院中で無視されて、まともに話せるのは俺様と、俺様の側近位だそうじゃないか!」
「それを私達に言われましても、せめて証人でも用意してくだされば、まだ話し合いの余地がありますが、これでは言い合うばかりで、なんの証明にもなりませんわ」
こんな感じで、有りもしない罪を3人の侯爵令嬢に押し付け、侯爵令嬢達が反論していった。
元々こうなる予定だったのか、侯爵令嬢の方は至って冷静に対応しているのだが、対する王子の方は顔が赤くなってきていて、本気で糾弾しているようだ。
前世にあったような婚約破棄物のように、無視された・盗まれた・壊された・怪我をさせられただけでなく、成績が落ちたり、態度が制服がと注意されるのは、教師が買収されているからとか、最後にはすべて「王子である俺が言っている」で押し通そうとして、周りの冷たい視線が、王子たちに集中しているのも気づかないようだ。
なんかもうどうでも良くなってきた時、側近の一人に動きがあった。
「王子がいっているのがわkrにのか!だまtえしtがえ!」
よくわからないことを叫んで飛び出してきたが、すかさず元婚約者ズの一人が突き飛ばし、他の元婚約者ズが組み伏せる。
そこに別の側近が走り込む。
「キャー」
突然の凶行にちょっと遅れて、令嬢方が悲鳴を上げ始め、男たちが人垣の向こうに令嬢方を、引っ込め始めた。
悲鳴や喧騒で音が乱れて、元婚約者ズの注意は先に突っ込んできた奴のまま、新たな襲撃者には気付いていない。
しかも、ナイフまで持ち出しやがった。
ほうっておくと大惨事になりかねないし、ここは仕方ないかと諦めながら前に出る。
最初のやつに比べてこいつは少しは使えるらしく、黙ったまま無表情で突っ込んでくるが、所詮少しは使える程度の奴でしか無く、ナイフを持つ手に左手を添えて、扇で喉を突いて動きを止める。
ナイフを叩き落としたり、足を引っ掛けて転ばせると、ナイフがどこに行くかわからないから、ちょっと嫌だけど接近して対処した。
仰向けに倒れたところを、ナイフを持っている手首を踏みつけながら、みぞおちの辺りにヒールをめり込ませ、動かなくしながら、周りに意識を向けると、
「6人目の登場だ」「ナメクジ」「相手が違うぞ」「やっぱり男では」「おねぇさま」
「こいつは腕力担当か」「投げないんだな」「俺も踏んで」
好き勝手に言ってやがる。
変な事を言ってる奴も居るし、今後が怖そうだ。
「何をしている!お前は俺様の部下だろ!仲間割れをせず、そいつらを捕まえろ!」
どうやら最初から強硬手段に出るつもりがあったようだ。
部下とか言われても困るし、仲間割れとか言われても、こいつら仲間じゃないし。
「殿下の声が聞こえただろ。どいてもらおうか?」
おっと3人目が近寄ってきた。
他のは動く気がないのか、後ろに下がっていってる。
じゃぁ3人目をどうにかすれば終わりだな。
念の為に押さえていたやつの顎をけとばし3人めに正対する。
「お前状況がわかっていないのか?殿下に逆らえばお前なんて、すぐにどうとでも出来るんだぞ」
なんて言いつつ、こいつもナイフを出しながら、ゆっくりこちらに近づいてくる。
「女だてらになかなか使うみたいだが、俺はお前より遥かに強いぞ。何せ代々騎士職を務めてきた家系だ。お前のような孤児上がりでは、到底勝ち目はないぞ」
なんか変なこと言っているが気にしない。
向こうから来てくれるのなら、こっちは待っていればよいだけだ。
ロングドレスだから少し動きづらいし、激しく動いたら色々見えそうになるから、来てくれるのは良いけど、
「今なら俺が殿下に言って、妾にしてやってもいいんだぞ、ちょっと小さいがかわいがってやろう」
なんて言いながら、ナイフを持っていない方の手で、俺の肩に触ろうとしてきた。
無防備すぎるその行動を、待ってやる必要もないから、その手をかわしつつナイフを持つ手を掴み、ひねり上げながら体を入れ替えて崩し、頭が下がってきた所に扇で一撃を入れて終わらせた。
凄くキモいから、倒れた後も蹴ってしまったが、別に問題ないはず。
「な、何をしている!お前たち!王子である俺様の命令だ!そいつを取り押さえろ!」
なんて叫んでいるが、既に王子の周りには誰も居なくなっていた。
あれ?あの5人も居ないぞ?
周りに意識を向けても、ざわざわしているだけで、誰も王子の味方をするものは居ないようだ。
「何やらおかしなことが起きましたが、殿下、先程のお話の続きを致しましょうか?」
「クソッ、覚えていろよ!俺様にこんな恥をかかせたんだ!後でひどい目に遭わせてやる!」
そう捨て台詞を残して、王子はどこかに行ってしまった。
「お騒がせして申し訳有りませんわ。問題も解決したみたいですし、まだ時間もありますから、ゆっくりしていって下さい」
なんて、ホルドラン侯爵令嬢が、事態の収拾に動き出した。
結局なんだったんだ?
単に王子の暴走だったのか?
その後はしばらくざわざわしていたものの、大っぴらに今起きたことを話すものはおらず、見た目だけは和やかに、プロムナード(仮)は続いたのだった。




