第50話 協力体制2
プロムナード(仮)の開催発表から、実際に行われるまでの期間は、約一ヶ月有ったのだが、困ったことに貴族的なやり取りがあるため、俺達のような下級貴族にとっては、一ヶ月もなかったりする。
お茶会の時のように、高位貴族の選ぶ服装次第では、俺達の着れる服装が変わるためだ。
今回は仕切る側にも高位貴族が居たため、若干早く済んだらしいのだが、それでも着ていける服装が決まったのは、プロムナード(仮)まで一週間を切っていた。
余裕のある貴族たちは、高位貴族が服装を決める前から、ある程度予想して準備を進めるのだが、レレとハンナは金銭的な余裕も、余分なドレスもないから、ギリギリまで待ってから用意しようとしていた。
でも2人の参加しているサロンのメンバーが、既に準備をしてくれていたらしく、着ていける服が決まるとすぐに、二人のサイズのドレスが届けられたので、余裕を持って準備することが出来た。
当日の俺達の服装は、こんな感じになった。
俺はスレンダーラインのようなロングドレスで、飾りはほとんどないタイプを選んだ。
レレは俺のよりスカート部分が膨らんだ、Aラインのようなドレスに、大きめのリボンを腰に巻く感じで飾っている。丈はヒザ下位の物だ。
ハンナは俺と同じようなスレンダーラインのドレスだが、スカート部分がチュールスカートになっていて、俺のよりもふんわり感がある。長さはミディアム位だろうか?
色は3人で合わせて、淡い青にしてある。
主役は王子とおかしな仲間たちだろうから、俺達は壁の花に徹するつもりだ。
何が起きるか、正直全くわからないから、半分ふざけて作った、鉄の骨入り扇を持っていく。張ってあるのは布だから、見た目は普通の扇なのだが、閉じた状態ならそこそこ使える。
流石に剣をはじいたり受け止めたりは出来ないけど、学院内でさえ帯剣は禁止されているのだから、プロムナードに剣を持ち込むやつは居ないだろう。
それに今回のプロムナード(仮)の開催場所は、由緒あるダンスホールだから、剣なんて持ち込もうとしたら、警備兵に止められるはずだ。
本当ならグロスのナイフを、スカートの中に隠していきたいのだが、変に疑われても困るから、今回は鉄骨扇で我慢する。
寮からダンスホールまでの移動については、3人一緒に同じ馬車で移動することになった。俺達は移動のことなんて全く考えてなく、プロムナード(仮)三日前になって、マーブル先生からの手紙で気付いたのだが、裏では貴族同士の駆け引きが行われていて、最終的にあまり目立たないほうが良いと決まり、マーブル先生の馬車で送り迎えしてくれることになったのだと、後で軽くリサさんが教えてくれた。
当日になってマーブル先生の家の馬車で、リサさんがやってきた。
俺達の準備はそこまで大変ではないから、リサさん一人で大丈夫なんだろう。
この辺も気付いていなかったが、こういった場合現地で仕上げをする都合上、メイドさんを伴って向かうのが普通らしい。
貴族って本当に大変だ。
馬車で現地のダンスホールについても、すぐに入場とはならず、爵位毎に分けられた部屋で、準備を整えつつ、自分の入場する順番まで、待つことになる。
通常こういった場合の入場順は、下位の貴族から入場していき、最後にその日の主賓が入場するのだが、今日はプロムナード(仮)なため?、事前に配られている入場表の通りになっている。
それによると主賓と言うか、父兄枠の方々は既に入場していて、俺達は結構後の方になっているようだ。
「これって何の順番なんだろうね?」
「私達の入場順もおかしいとは思うのだけど、高位貴族の殆どが既に入場しているって、変な感じね」
「あら?これ見て。殿下も最初に入っているのだけど、殿下と一緒に入場した方々って」
「これはもしかしてあの方々なのかしら?」
今気づいたのだが、王子がエスコートして入場していたのは、ピンク頭の仲間たちであったのだ。つまり、殿下は最初の方に入場して、一人ずつエスコートしたって事らしい。
うん。意味がわからない。
側近候補が一人ずつエスコートするわけじゃ無いのか?
もう完全にハーレムルートに向かっているかのように、側近たちは無視して、王子一人に絞ったのだろうか?
「この入場順を考えたのって、殿下なのかしら?」
「準備とかは侯爵令嬢様方だったはずだけど?」
と、3人で不思議がっていると、
「ティ様。今回の件につきましては、既に沢山の方が動いておられます。あまり深く考えずに、プロムナードの雰囲気を楽しんできて下さい」
なんて、リサさんが言い出した。
あれ?もしかして?このプロムナード(仮)って、結構ヤバイ案件なのか?
そんな事を言われたら、ますます楽しめないじゃないか…
沢山の方が動いている?もしかしてマーブル先生も?
元々なにかあるとは思っていたけど、これは…
リサさんの言葉の意味を考えて、つい黙ってしまったのだが、レレもハンナも同じ様に考えているらしく、3人で黙ってしまった。
「あら?これは私としたことが、始まる前に不安にさせてしまいましたか?大丈夫ですよ。貴方達には何も問題はないのですから」
「そう…ですよね。わからないことを、色々考えても仕方ないし、とりあえず楽しみましょ」
リサさんの話で考え込んでしまったのだが、確かに今日なにかあったとしても、それは俺達の方ではなく、王子や侯爵令嬢の方なのだから、心配しすぎても仕方ない。
「さぁ。今日は当初の予定通り、壁の花として咲きながら、お菓子とか食べて帰りましょ」
「ティったら。準備の時からお菓子の話ばっかり。婚約者見つけなくていいの?」
なんて、軽い話に持っていくことに成功した。
前世のプロムナードと違って、今日のプロムナード(仮)は、お昼から開催されるので、お菓子とかが出るはずだ。名前が違っていたりするけど、見ようによっては巨大なお茶会みたいになものだと、3人で話していたのを思い出し、お菓子の話題にすり替えてみた。
そうやって、和やかに準備を終えて待っていると、案内役の方が迎えに来たので、リサさんに挨拶して入場口に向かう。
名前を呼ばれて立派な扉をくぐると、なんとも華やかな会場が見え、今の所全体的に和やかな雰囲気で、おしゃべりしている様だ。
さぁ今だけでもこの雰囲気を楽しみつつ、お菓子を食べてしまうとしよう。
2人を壁際のテーブルに誘い、色とりどりのお菓子を眺めながら、どれにしようかとか、笑い合う。
多分この後は、食べている暇なんか無さそうだから。




