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第5話 子爵家1

成り上がりストーリーが始まると言ったが、あれは嘘だ。


あれからしばらくして子爵家についた。結構立派なお屋敷でちょっと感動したのだが、俺はそこには入れないらしく、さっき言われたように屋敷の裏手に有る、2階建ての兵舎に案内された。


今までの集団生活に比べればマシだろうと思ったのだが、そんなに簡単なものではなかった。


執事に連れられて兵舎に入ると、いかにも古参兵という感じの男に紹介された。


「今日からこの者がスタン子爵家の跡取りとなる。スタン子爵家に恥じないよう、しっかりと鍛えるようにと旦那様はおっしゃられた。時々様子を見に来るそうだから、しっかりと鍛えておけ。ほら自己紹介しろ」

「はい。私はティと申します。以後よろしくおねがいします」


なんて事を言っていたのだが、あそうそう、俺の名前はティと言うことになっている。捨てられた時に一緒に入っていたタオルに、この世界でティと発音する文字があったからだそうだが、なんとも安直な名前だ。


「今後はティ・スタン子爵令息と名乗るように。旦那様はお前を男として登録するとのことだ。グロス皆にもそう伝えておけ。こいつは男だと」

「承知いたしました。このスタン子爵令息を、スタン家に恥じぬよう鍛えます」


このいかつい古参兵のおっさんは、グロスというらしい。と言うか、ここに来ていきなり今度は男として過ごせとか、一体何なんだ?もう好きにしてくれよ…


執事は言うだけ言って帰っていったが、グロスに部屋に案内された。


嬉しいことに個室だ。


「流石に跡取りを大部屋にするわけにもいかんし、士官用の個室を使ってもらう。今日はこの後軽く運動してもらって、どのくらい出来るのかを見ることにしよう。細かい事はおいおいわかっていけばよいが、当面の着替えはどうしたものか…そんな服では運動できないだろう。取り敢えず服が用意できるまで待っていてくれ」


グロスはそう言って部屋を出ていった。その目は哀れみに満ちていたから、これからの生活が心配になってしまった。






それから俺は毎日走り込みと身体強化の毎日だ。


とにかく基礎体力をつけることが目標のようで、毎日毎日倒れるまで走り、一息ついたら今度は身体強化。魔力が減って倒れそうになるまでやる。


おいおいこんなんじゃすぐに死んでしまうぞ、やばいのか?逃げたほうが良いのか?そんな事を考えながら、とにかく毎日の日課として、訓練を続ける。


とは言え、正直孤児院よりかはマシなのかも知れない。


まず食事は毎日三食しっかりと出る、というか吐きそうなほどたくさん出る。


パンと言うのもおこがましい、謎の味のしない固形物が三個、それに具沢山で肉まで入っているスープが付く。木皿自体も孤児院の軽く三倍は大きい。


今まで粗食というのも馬鹿らしいほど、生きていくのに最低限の食事しか貰えなかったから、この量は体が受け付けないのだが、グロスに言わせると、最低でもこれくらいは食べないと、体が強くならないらしいから、諦めて無理してでも食べるしか無い。


それに個室だ。士官用と言っていたように、結構きれいなその部屋は、清潔な上に寝具も立派なものだった。おまけに兵舎には、専属の掃除や洗濯をしてくれる人がいるため、清潔な生活が出来るようになった。


さらに孤児院では、大人が洗浄の魔法を使って、子供を洗っていたのだが、この兵舎にはシャワーのようなものが付いている。一応兵舎の中には女性も居るから、男性用女性用が分かれているので、安心して入ることが出来る。


食事と住環境は間違いなく孤児院より良いものだが、とにかく訓練の日々だ。


朝起きて朝飯食って走って身体強化、昼飯食って寝て走って身体強化、シャワー浴びて夕飯食って身体強化して寝る。という生活を強いられた。


女の体の俺にはかなりきついのだが、そもそも五歳時にやらせる訓練ではない気がする。


でもここで頑張れば将来何かあっても、自力で生きていくことが出来ると思えば、我慢もできる…ような気がする…


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