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第46話 襲来2

翌日寮を出る時に、寮監の先生に捕まり、


「ティさん。昨日のようなことは、もう無いようにしてくださいね!殿下を男子禁制の女子寮に招き入れるなど、わたくしがここに来てから初めてのことです!」


昨日の件で思うところがあったらしく、俺を見るなりお説教が始まってしまったが、とにかく状況を話して落ち着いてもらった。


「そうだったの。でもね、殿下は王族特権を使って入ったのよ、貴方に用事があると言ってね。これは重大な問題になりますから、心して置いたほうが良いわ。おそらくは近々王城からも、事情を聞きに来ると思うから」


恐ろしい話を聞いてしまった。

王城の方から事情を聞きに来るってことは、場合によっては口封じとか、それでなくても嘘の証言をするように、脅されたりとかか…

思っていたより大事になってしまっている。

これはもしかして、かなり不味い方向にいっているのでは?




残念ながらこういった時、悪い方向にだけ予想が当たるもので、寮を出てから凄まじい視線にさらされることになった。


「あれが?」「男なの女なの?」「そんなふうには見えないけど」「夜に男をねぇ」「クマ投げ」「殿下争奪戦に名乗りを?」「ナメクジ大好き?」「現在トップ独走?」「女子寮に呼ぶなんて」「朝まで待たせていたそうよ」「あの髪もあの連中と一緒?」


ヤバイ、非常にヤバイ。

元々学院の噂の大半を占めていた、王子関連の噂に、昨日の事が油を注いだみたいだ。

そりゃ男子禁制の女子寮に、王族特権を使って王子が来たんだ、俺の居る女子寮の子なら、皆知っているだろうし、既に一晩で尾ひれも背びれも胸びれも生えて、ゆうゆうと泳ぎまくっている。


昨日クラスに文句を言いに来てくれれば、そこでカウンター出来てたのに、まさか俺が来るまで寮で待っているなんて、想像することすら無理な話だ。

もしかしてあいつ、前世ではこじらせボッチだったのか?

あーもう、寮で自信満々で待っていたら、なかなか来ない俺に腹を立てたり、心配してオロオロしたり、最終的には捨てられた子犬みたいになっている所まで、想像してしまったじゃないか。


それにしても俺にどうしろと言うんだ?

向こうは王子であることを宣言しているのだから、正式に名乗りを許されたわけでもない俺が、王子に対して何か言うことは出来ない。


おまけに王子は気付いていないのだが、王族の護衛ってのは誰でも成れるわけではない。


家柄・技量・性格等すべてが認められた者が、国王陛下によって近衛騎士に任じられ、その中でも特に優秀な者が、近衛騎士団長の指図で護衛に当たるのが、この国の法律だ。


昔後継者争いが激しかった時に、護衛を勝手に増やす事が頻繁に行われ、王城が護衛だらけになった事が原因で、決められた法律なのだが、その後も護衛が個人的に王族と繋がることの無いよう、特定の護衛がつかないようになっているのに、王子に任命されたからと言って、俺が今日から護衛ですなんて言った日には、俺が罰せられてしまうじゃないか。

せっかく俺が、何もなかったかのように振る舞い、あれは王子の独り言だったって感じにしたのに、この事が公になれば、王子だって無傷では居られないだろう。文官系の貴族ならまだしも、武官系の貴族なら誰でも知っていることだし、王族である王子だって習っているはずなんだが。




その後も色々影に日向に言われつつ、なんとか放課後まで乗り越えられた。


クラスの中では、事情を知っている武官系の貴族から話を聞いたのか、あまりその話は出なかったが、


「ちょっと!つらかしてくんない!」


なんて、胸出し女が絡んできたり、


「きーふざけんじゃないわよ!なんであんたが王子に!」


と、頭の中までピンク色のおかしな奴が、言ってきたりもした。

その度に貴族な対応をしたり、軽くあしらったりしていたが、


「ふーん。じゃあティは何も悪くないんだね。法律で決まっているなら、どう言われても出来ることではないもんね」

「それに名乗りも許されていないなら、説明もできないもんね。でもどう勘違いしたら、あの変な噂になるんだろうね」


噂の打ち消しを考えて、学食でわざわざ大きな声で、説明する羽目になった。

それで、少しは落ち着いてくれると良いのだけど、多分無理なんだろうな。

現にざわざわが止まらないし。




放課後になって、ホルドラン公爵令嬢の使いと名乗る、品の良いメイドさんが迎えに来てくれた。


「大丈夫ティ?私達も」

「ううん。私は大丈夫だから気にしないで。2人はほら、今度のサロンまでに新刊を形にするのでしょ」


心配して付いて来ようとするレレとハンナを、やんわりと断って、一人で向かうことにする。


俺の居るクラスから目的の場所は結構離れていた。

メイドさんについて行ったから良かったが、これは一人では来られなかっただろうし、一人では帰れないかも知れない。

今いるのは、上位貴族とその招待者だけが入れる、専用のティールームがある辺りだ。

侯爵家ともなれば、こういった場所を用意できるのだろう。


メイドさんが中に声をかけて、扉を開けてくれた。

部屋に入ると、深くカーテシーをしながら、


「ご招待いただきましてありがとうございます。ホルドラン公爵令嬢様。この度はご迷惑をおかけいたしまして、誠に申し訳ございません」


と、挨拶を済ませ、顔を伏せたまま待っていると、


「スタン子爵令嬢、顔を上げてこちらにお座り下さい。色々と話さなければならないこともありますし、紹介しなければいけない方々も居ますので」


言われて顔を上げると、ホルドラン公爵令嬢を含め、男女6人が別々のテーブルに座って、こちらを見ている。

もちろんテーブルに座っている6人以外にも、壁際だったりテーブルの近くだったりに、使用人と思われる方々もいるが、ホルドラン公爵令嬢を抜かした、5人は明らかに高位貴族の子弟だ。


一体これから何が始まるのやら。

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