第37話 学院1年目1
あれから一ヶ月が過ぎた。
俺のクラスには、ピンク頭の仲間みたいなのが、一人いるのだが、休み時間や放課後には、すぐにクラスを出ていくため、それほどの問題にはなっていない。
それでも常に暑いのか、胸元を広げて豊満な胸を、半ばさらけ出しているため、クラスの男子はなかなか大変らしい。
王子や側近の方々も、俺のクラスには居ないので、ある意味平和に暮らせている。
なんだかんだ有ったものの、同じクラスの中でよく話す、友達?の様な存在も数人居るため、このまま平穏であれば、俺の学院生活は安泰だと思われる。
ちなみに俺がいつもいるのは、レレ・ハーティア男爵令嬢と、ハンナ・アンティ子爵令嬢だ。
ふたりとも亜人族の出で、レレはクマ獣人ハンナは山人の貴族になる。
ぶっちゃけて言うなら、2人も何かしらの事情で、他の亜人グループからはみ出ていて、はみ出し同士で仲良くしている。そもそもこのクラス自体が、貴族学院からはみ出しているため、クラス中何かしらの問題を抱えていたりする。
ここで学院の構成を言っておこう。
まず騎士学院・魔法学院は、卒業したら王国騎士団や魔法士団に入ることが前提で、家の家業の都合で入れない者以外は、強制的にそれらに入ることになる。
残る貴族学院だが、こちらは騎士魔法士とは違い、文官の育成場所となっていて、特に家の事情がなければ、基本的には自動で行き先が分けられる。
ただし最近の傾向として、貴族派の子供に関しては、振り分けされずに予備要員とされることも多い。
まぁどこの部署も、足引っ張ることが確実の、貴族派は入れにくいってことだ。
それで貴族学院の内部は、いくつもの科に別れていて、各部門ごとの教育が行われるのだが、その中で特にどこかに偏っていない学部が有る。
教養学部1と教養学部2だ。
この2つの学部は、表向きと言うか本来と言うか迷うが、目指す所は領主や代官と言った役職で、幅広く学び判断力を鍛えるのが目的なのだが、実際にそういった教育が行われるのは、教養学部1だけであったりする。
つまり教養学部2に関しては、そういった目的での教育はされておらず、言うなれば、他の学部に入る必要がなく、また、入るだけの能力がない者が、学院を卒業するための学部だったりする。
何でそんな話をしたかと言うと、要するに俺がいる学部が、この教養学部2だからだ。
教養学部2にある俺の居るクラスは、何かしらの問題を抱えているものばかりなのは、こういった訳があるからだ。
バルサーは俺が騎士になって家を乗っ取る可能性を潰すために、騎士学院ではなく貴族学院に入れたばかりか、そこでも何かしらの立場を築くことを恐れて、一番問題のない学部に入れたのだった。
現にこの学部には、上位貴族は一人もおらず、一番上でも伯爵止まりになっている。
これでは何かの縁で、逆転できるようなコネは作れないって事なのだろうが、そもそもそういったコネは、すでにあるのだから意味がない。
マーブル先生からは、すごく残念がられはしたが、俺としてはこれから楽に生きる予定なので、この位が丁度良いと思っている。
それに教養学部なだけあって、学ぼうと思えば本当に色々学べるのも良い。
貴族学院では授業ごとのスキップが認められていて、俺は既に、卒業レベルまでスキップした授業が何個か有るため、自由時間がかなり認められていて、その自由時間にいくつかの授業を入れている。
最悪身一つで追い出されても問題ないように、知識と技術を身に付けていくつもりだ。
自主練として訓練も前のようにやっていて、体がなまらないようにはしているし、学院の食事は兵舎のものより美味しいから、かなり充実した毎日を送れている。
こんな日が毎日続くのなら、この異世界転生も、そう悪いものではなかったのかも知れない。なんて思いつつ、まさかこれがフラグか?フラグなのか?と怯えていたりもする。
なんか結構ハードな人生を歩んできたせいか、疑い深くなっているような気がする。
そうそう忘れていたのだが、入学式で盛大にやらかした第2王子は、事の次第を聞きつけた国王様によって、めちゃめちゃ怒られたらしく、次の日の緊急集会で、
「この学院にいる間は、第2王子殿下の王族としての地位と、特権の全てを停止すると、国王陛下から王命が届きました。以後第2王子殿下は、学院にいる間に限り、普通の生徒として扱われますので、他の生徒諸君もその様に接して下さい」
と、学長に言われていた。
まぁ俺から言わせると、国王もぬるい処罰を与えると思った。
もし俺がアレの親ならば、即刻学院をやめさせて、平民の学校に平民として入学させるところだ。その上でお付きの奴らは、全員儚くなってもらって、お付きの親達も同様に扱ったほうが、今後のためには良かったと思う。
現に王子は、今も時によって態度を変えて、有る時は1生徒だからそんな事は知らん、有る時は王子である俺に対してと、全く反省した素振りがないのである。
それもそのはずで、さっきの王命は学院の中だけであって、学院から出た後に報復とかされる可能性を考えれば、結局誰も対応できないのは変わりがないのだ。
子供の躾位ちゃんとしろよとも思うのだが、この王子には問題が多々有ったりする。
この第2王子。
異世界転生者を名乗っている。
しかも、地球の日本出身だそうだ。
その割に、見た目は金髪青目なのだが、最早何でも有りなのだろうか?
一応知識チートを試したらしく、箝口令が敷かれているものの、噂が流れまくっていて、例を挙げると、ノーフォーク農法を試したらしい。
俺の知識では細かい所はわからないものの、ノーフォーク地方で行われた農業改革だったはずで、前世のそういった話には結構出てくるのだが、これを詳しく知らないのに、名前の雰囲気だけで行った結果、テストケースの村は廃村に追い込まれたそうだ。
なんでも、ノーフォークなんだからと、畑を耕さないで、雑草とカブと麦の種をばらまき、そこに豚を入れたとか。
聞いただけでも頭がおかしいとしか言えないのだが、こういった失敗を何回もしているものの、異世界転生者なため、処罰がしにくいらしい。
更に第2王子の母親が、大陸中央の国の王女で、当時既に結婚して子供が居るにもかかわらず、貴族派を抑えきれない国王が、貴族派と取引したことで、正妃として迎えたって言う経緯もあって、なかなか抑えられないらしい。
ヤバイね。本当にヤバイね。
もう近寄ったら負けなくらい、王子には接近したくないのだが、クラスに居る胸出し女の狙いが王子らしく、よくすり寄っているって噂だ。
まぁ王子には他にもおかしな女がすり寄っているらしく、外から見た感じでは、ハーレムみたいな状態になっていて、特にお気に入りではないようだが、俺の居るクラスは仲が良かったり、グループ間の交流があったりするわけではないが、全員がきっと思っていることだろう。
『王子に関わり合いたくなければ、胸出し女に関わるな』と。