第27話 剣術大会5
剣術大会から帰ってきて、マーブル先生に事のあらましを説明したら、すごい微妙な顔をされてしまった。
「状況的には仕方ないとも言えるけど、それはどうなのかしらね?」
なんて言われて、今後はどうしようかなどと言われたのだが、
「今度ですか?もう呼ばれないのではないでしょうか?元々浮いた存在であるスタン家の子供ですし、今回参加したことで用は済んだのではないかと?」
「そうだと良いのだけど、何か他からの力が有るような感じなのよね?だから多分まだ呼ばれるのじゃないかしら?」
気のせいでしょうか?それはフラグというものでは?
なんて考えていた時期も有りました。
それからしばらくして、マーブル先生の予想通りというか、この手の大会に呼ばれることが有った。
当主にはその度に嫌味を言われつつ、なんとかこなしていたのだが、
「また招待状だ。何とかしておけ、試合は明日だ」
うあーーーー明日だとーーーー絶対前もって貰ってただろーーーー
寝かしてんじゃねーよ、さっさともってこいーーー
はぁはぁ
落ち着け落ち着け、冷静に冷静に…
幸いお金はなんとかなる。いい加減毎回執事に嫌味を言って、お金を出させるのも面倒なので、大会予算をひねり出させた。っていうか、そのお金どこから出ているんだ?そんな金があるなら、もっと街道警備に金を出せよ。
またもやマーブル先生に馬車とリサさんを借りて、その日の夕方にはローデンプルの町についた。
ここもセリニャンと同じく、中立派が代官を務めている町で、リサさんからも説明は受けていたが、ここの代官であるビリーズ子爵は、今でこそ代官を務めているが、元々は武門の家系だったそうで、子爵以下の子供限定の大会を開くことが有るらしい。立ち位置としてはセリニャンの代官である、ベスター伯爵の下請けみたいなもののようだ。
取り敢えず、ちょうどよいくらいの宿を探したのだが、ローデンプルの町はセリニャンに比べて小さく、また闘技場もないので高級な宿など無かった。
どうしたものかと考えていると、
「今回はマーブル様もなにかあると言っておられましたし、ここで迷ってても仕方有りません。取り敢えず宿は取らなくてはなりませんし、そこの大衆宿に泊まることにしましょう。本当ならローデンプルの代官屋敷に泊まるはずですが、今日来て泊めて欲しいというのは、流石に失礼になりますから」
本当に普通の宿だったが、野宿するわけにもいかないし、その宿を押さえつつ、一旦ローデンプルの代官屋敷に向かうことにした。
代官屋敷では、ローデンプル到着と大会の参加を伝えに来たが、何やら屋敷内が騒がしいと言うか忙しそう?
門番に用事を伝えたが、なんか要領を得ない感じ?
詳しく聞くことは出来なかったが、大会自体は明日の朝に、屋敷の訓練場で行われるらしい。なので明日の朝にまた来て欲しいとのこと。
来た事については、必ず子爵様に伝えるので、とのことだったから、大人しく明日の朝に来ることにした。
宿に帰りリサさんと相談したのだが、なにか色々とおかしい感じがする。
そもそも養父が今日の朝に招待状を持ってきたのもおかしい、いくらクズでもそれをしたらどうなるか位わかりそうなものだ。
そう言えば、いつも負ける事は許さんとかいうのに、今回は何も言ってこなかった。
一応いつも通りと考えるなら、今回の俺の目標は、全員に勝って優勝することなのだが?
いくら考えてもわからないし、そもそも判断するための情報がなさすぎる。
「よくわかりませんが、既に招待状を受け取ってしまっている上に、事前に参加できないことを伝えていません。それにもう来てしまったわけですし、後は明日行くだけしか出来ませんね」
「そうですね。中立派の町ですし滅多な事は起きないと思います。念の為気をつけてくださいね」
そんな話をして大会に望むことにした。
翌朝代官屋敷につくと、昨日と違う門番が居たが、話が通っていたのかすぐに案内してくれた。
だが何故か俺だけ別のところへと連れられていく。
一応理由としては、訓練場での対戦になるため、参加者は別に集められるのだという。
うーん、お付きと引き離されて一人にされてしまった。そもそも他の参加者の子供はどこだ?それに俺はまだビリーズ子爵に挨拶もしていないのだが?
間違いなく何かがおかしい、だがそれがなにかもわからないし、こんな所で罠を仕掛けて、俺をどうにかするのも、イマイチ意図が見えない。
控室というか待合室で、対戦表を見せてもらったのだが、今までの大会で見たことの有るような名前しか無く、俺の初戦の相手も普通に男爵家令息になっている。
なんだろう?何が変なのかはわからないけど、色々と変すぎてどこがとか言えない。
そんな事を考えていたら、出番になったのか呼ばれた。
やっぱりおかしい、俺以外の参加者が見えないし、何より今試合が有ったような雰囲気はなかった。
取り敢えず案内されて、訓練場の中央に進む。
途中ボサとリサさんが見えた。
別に拘束されているわけでもなさそうだ。
少し安心した。
これが何かしらの罠で、俺に危害を加える気なら、2人に何かしたしてくるかもと思ったが、そういったことではないらしい。
しかしなんだろう?何か手で罰を作っているような?
「やぁ。やっと君と戦えるね、君はすぐ魔力切れになってしまうから、直接戦えるように、色々と手を打たせてもらったよ」
訓練場の中央に居たのは、ストラディ侯爵令息だった。