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第2話 孤児院1

ここが異世界だとわかってから、より一層周りに注意を払う様になった。


俺の転生者というアドバンテージが0ではないが、殆どなくなってしまった。


元の世界ならたとえ国が違っていても、基本的な知識は何処も一緒だし、最悪日本に逃げる事も考えられたのだが、異世界では基本の知識すらあやしい。


例えば数学だ。元の世界なら数字はほとんど共通だし、計算も多少の違いはあれど4則計算だろう。ところが異世界となると、数字の概念が無かったり、計算が足し引き位しかない場合もあるかも知れない。


一つ一つをこの世界に当てはめていかなくては、あっという間に異端扱いされることだろう。


取り敢えず俺は、周囲の赤ん坊と足並みを揃えることにした。とは言え別に難しいことではない。


なんとなく周囲がハイハイし始めたら俺もやるし、何か言葉っぽい者を話せば俺もそうするだけだ。


あんまり合わせすぎても疑われるかも知れないが、取り敢えずはこの方針で行く。


転生前の世界でよく見たチート的なものは狙わない。なぜならどんな結果になるか全く予想できないからだ。






そうして月日が過ぎた。


現在俺は四歳になっている。この世界は数え年な上に、そもそも俺の誕生日がわからないから、正確な年齢はわからないが、元の世界なら三歳ちょっとなのだろうか?


この三年間で俺の異世界生活は、更にハードモードのランクが上がってしまった。


まずここは孤児院だと言ったが、あれは間違いであったようだ。


一応孤児院の看板を掲げているらしいのだが、実態は人間牧場だ。


どうしてそう思うかを挙げていこう。


まず各部屋なのだが、窓には格子が入っている。

普通の孤児院が各部屋全ての窓に格子を入れるだろうか?しかも窓自体が小さく高い位置に有る。最初それに気付いたときには、外敵の可能性が?とも思ったのだが、俺よりも後から入ってきた年上のやつの話からそれは否定された。

この孤児院は街の中にあり、普通の家々にはこういった窓はないらしい。


次に敷地内がおかしい。

孤児院の敷地はかなり広く、サッカー場四面分程度だと思う。その真ん中に孤児院の建物があり、敷地の外側は完全に壁に覆われている。壁の高さも窓から見た感じだと子供四〜五人分はあり、見える範囲に門は一つだけ。門には常に人が居るようだし、壁の近くどころか建物以外の建築物も木もない。

わかるだろうか?つまり外側から見ても、中の様子は一切見えない作りになっていて、内側からも外を見ることが出来ないようになっている。


更にさっき言った年上のやつが話していたのだが、ここの孤児院はとある宗教団体が経営しているらしいのだが、孤児院内では一切宗教について話がされない。それどころか神様の話も無ければ、なにかに感謝しましょう的なこともない。


それにここでは一切の私物が許されていない。

俺の記憶が確かなら、自立心を育てるためにも、服くらいは個人の持ち物として配られると思うのだが、ここでは朝にまとめて回収されて、洗濯担当の手によって洗濯された後、サイズごとに分けて箱に入れられて、夜にそこから持っていくスタイルだ。


個人の部屋も決まっていない。

夜寝る前に一列に並ばされた後、適当に振り分けられて各部屋に入れられる。一応男女は分けられるが、仲が良い悪いは関係なく、寝具を渡されて部屋に入れられ、外から鍵をかけられてトイレにもいけない。朝になったら部屋を出て、寝具と着替えを所定の箱に入れて、各々の担当場所に向かう。


ついでに言うならば、ある程度育った子供はお迎えが来るのだが、一度出ていった子供は二度と来ることはないし、手紙のたぐいも来たという話も聞かない。ちなみにさっき言っていた年上のやつは、ここに来てそうそう外の話をしていたからか、すぐにお迎えがきて帰ってくることはなかった。


人間牧場は言い過ぎかも知れないが、おそらくは似たような物だろうと思う。



一応良いことを挙げるならば、足りないながらも食事は出るし、夜寒い日もあるが部屋で寝れて、勉強もさせてもらえる。


そう、勉強ができるのだ。


四歳児が出来る程度のものでは有るが、アルファベットのようなものを教わっている。

周りに合わせているため、なかなか進まないのはもどかしいが、この世界のこの国の文字は、表音文字になっていて三六文字有る。今はその文字の練習中だ。

算数は、指折りで十までは教わった。多分元の世界と殆ど同じだと思う。


そして、驚いたことに、魔力のコントロールも教えてもらえた。


流石に魔法自体は教えてもらえないのだが、この魔力コントロールを頑張れば、そのうち教わるであろう魔法を、使う時に役立つそうだ。勘違いしてはいけないのが、この魔力コントロールはいくら頑張っても、魔力は増えないことが重要だ。


この世界の魔力とは、魂から出るエネルギーであるようで、魔力が減れば気絶するし、魔力が尽きれば死んでしまう。ゲーム的な見方をするなら、HPもMPも0になったら死ぬわけだ。HPは体が成長すれば増えるが、MPは魂が成長しないと増えない。魂を成長させる手段はいくつか有るそうだが、基本は生物を殺すことで、相手の魂を取り込む必要があるらしい。


つまり将来に向けて魔力コントロールを頑張っても、魔力が増えないからばれない。


この世界にはステータスを見る方法はない。その代わりに魔力の量については、計る方法がある。よくある石版のようなものにてを乗せると、魔力の高いほどよく光るみたいなもので、具体的な数字に表せないから、助かっている部分でも有る。


そうそう言い忘れたのだが、勉強のおかげで大事なことを知ることが出来た。


他の転生者の存在だ。


転生者は過去に何人も見つかっていて、この世界にない知識を持っていたり、他の人とは違う特別な力を持っていたりするそうだ。そのため転生者は、見つけたらすぐに保護してもらうらしいのだが、俺が転生者だと知られたら、間違いなくまともな暮らしが出来ないだろう。なんせ子供にこんな扱いをするところなんだから。


だから俺は転生者で有ることを隠して生きている。本当に不味い事態になったら、交渉材料になるかも知れないしな。


ちなみに、転生者の特徴なのだが、


黒髪・黒目・高い魔力だそうだ。


俺は高い魔力であることから、目をつけられている可能性がある。

とは言え、髪は黒では有るのだが白髪も混じっていて、遠目には灰色に見えるし、目は濃い茶色といった感じで、微妙に助かっているところだろう。それと魔力が高い件については、この世界の女は総じて魔力が高いらしい。

だから高くは有るものの、それだけで転生者と言えないくらいのようだ。


とにかく気をつけていかないと、4歳にして人生終了してしまうかもしれない、ハードモードなのは変わらない生活を送っている。


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