灰色の鳩
消えてしまった、消えてしまった……
すべてがなくなってしまった。
みんなでおしゃべりしていたあの電柱、ボクが帰るあの家の屋根にある巣、いつもおばあさんがパンを分けてくれるあの公園。
暗い……とても暗い。ここはどこなのだろう?
なにも見えない、なにも聞こえない。なぜこうなってしまったのだろう。
朝、巣から起きて。昼、おばあさんのパンを食べて。夜、電柱の上で話して。
それから?それから。
家に帰ろうとして、飛ぶのに疲れていたから歩いて横断歩道をわたっていると。
横からすごい光と、クラクションの音と、
……激痛と。
その後からみんな消えてしまった……
みんなどこ?さみしいよ……戻ってきて、一人にしないで。
急に周りが明るくなってきた。だんだんと視界が開けてきた。
そこには、ボクの友達と、おばあさんと……血まみれの、ボク?
みんな泣いている。
なぜ泣いているの?また会えたのに。
あぁ、そうか……消えてしまったのはみんなじゃなくてボクなのか。
泣かないで?たしかにボクは消えてしまった。
でも、まだ君たちは消えていないのだから。
君たちが泣いていると泣いているボクまで悲しくなるよ。
また戻りたいと思ってしまうよ。
あぁ、また周りが暗くなってきた。
消えてしまった、消えてしまった……
すべてがなくなって