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魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
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プロローグ

 春風が吹く新月の夜。都会の灯りが星の輝きを消して空を真っ黒に塗り潰している。その中心にそびえ建つ一際高い塔の天辺(てっぺん)に人影があった。背格好からして少年のようだが、その表情はどこか老人を思わせる。紺色の軍服に身を包み、袖は着物のように長く風にはためいている。真っ白な髪と左目だけが銀色だった。少年はしばらく黙って、ネオンの輝きに満ちた摩天楼(まてんろう)を見下ろしていた。その銀色の瞳には複雑な感情が渦巻いている。そしてほんの少しの高揚感が少年の頬に紅を差していた。


「聴け、我が子らよ。目覚めの時は来た」


  闇の中で少年は大きく息を吸い、両手を開いて天を仰いだ。


 その頭上には少年を守るように一匹の巨大な生物が飛んでいた。それはまさしく竜であった。五本のかぎ爪を持ち、美しい純白の鱗に覆われている。白竜は少年の周囲をぐるりと旋回(せんかい)すると虚空(こくう)へと飛び去っていった。そして、少年は歌い始めた。その声をより遠くへと響かせようと竜もさえずり始めた。





ああ、この歌が君に届くだろうか。


奇跡は、いつだって誰にでも起こる。


私はそんな歌を信じない。


神がこの世にいるはずなんてない。


君はきっと言うだろう。


どんな逆境にも打ち勝つのだと。


最期の一瞬まで自分の力を振り絞れ。


全てを試される瞬間が来た。


何もかも失った今、私は何を歌うのだろう。


諦めてしまえば楽になれる。


私は今絶望の淵にいる。


新たなる世界の守護者よ、祈れ。




 少年は夜が明けるまで歌い続け、竜が戻ってくるとそれにすがるようにその場に崩れ落ちた。


「俺が出来るのはここまでだ。どうか、一人でも多くの子に届いて……」


 しゃがれた声で少年は呟き、そのまま意識を失った。


 こうして、最後の竜の歌が終わった。


 これが人と竜と(みずち)にまつわる物語の終わりの始まりであった。

お読みいただきありがとうございました。


次回『退屈で貴重な一日』をよろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎がたくさん設置されていることで続きがとても気になりました! [気になる点] 文頭字下げなどがされていないことと、一話と二話目でワンセットのプロローグなんでしょうかね? あとは、朔也の名…
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