1話 到着
俺たちを乗せた馬車が、大草原をひたすらに進んでいく。
「……きもちいい」
ジガートを出発してから、既に5日という時が経過していた。
今俺たちが乗っている馬車は、10人以上が乗れそうな立派なモノだった。
しかし、その乗客は俺の他にはエイミとゼファーがいるのみある。
『俺たちが目立つのはよろしくない』ということで、クリフが通常よりサリスを払うという条件で御者に無理を通してくれたのだ。
流石、10徹(推定)のデキる男は伊達ではない。
因みにゼファーは保護者兼、案内役として付いてきて貰っている。他の皆は、名残惜しいけれどジガートでお別れとなった。
そこには、セルカとアルマ、そしてクリフが見送りに来てくれていた。
そこで別れの挨拶はちゃんと済ませている……とは言ってもまだまだ寂しい気持ちはあるのだが、気持ちを切り替えるしか無いだろう。
まあ、斯くして順調に旅路は進んでいた。
揺れは少ないものの、結構な速度で緑の海原を突っ切っていく。
「速いですね! メル様!」
「うん」
エイミは小さな窓から顔を出して、年相応の女の子のように喜んでいた。綺麗なピンクがかった白髪を風になびかせ、その顔には明るい笑顔を浮かべている。
その微笑ましい光景に、つい頬が緩みそうになってしまう。いや、実際緩んでいるのだが。
ふと視界の端に映ったゼファーも、頬を緩めていた。
…………なんか、うん。
スキンヘッド筋肉モリモリマッチョマンのゼファーが微笑んでいるところを見ると、なにやら犯罪臭がしてくるのは気のせいでは無いのだろう。
いや、ゼファーならそういうのはしないだろうけども。
だが、本能的に『これは──絵面的に──イケナイ』と悟った俺は、気を逸らせようとゼファーに話を振ることにした。
「そ、それでこの調子だと、王都まではあと5日くらい?」
「ん? あぁ、そうだな。それぐらいか、少し遅くなるかのどちらかだと思うが。それがどうかしたか? 嬢ちゃん。気になることでも?」
「ううん。気になっただけ」
そんな他愛もない会話をしながら、平和に、5日という時は流れていく。
レベルの恩恵を確認したいと言いだしたエイミが、道程に現れたゴブリンの群れを蹂躙したり、スライムの群れ───この世界にもスライムはいたらしい───を蹂躙したり、何匹ものホーンラビットが悲鳴を上げて美味しいお肉になったり。
正直、こちらは気が気ではなかったのだけれど。
御者の人も口をあんぐりと開けて驚いていた。可憐な少女がダガー片手にモンスターを片っ端から殲滅して行ったのだ。震慄の眼差しを向けるのも当然の成り行きと言えよう。
まあそんな訳で、色々あったものの、俺たちは無事王都に行き着くことが出来たのだった。
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『デカッ………』
第一印象はそれに尽きる。只でさえ大きかったジガートの外壁をも上回る巨壁が、見渡す限り広がっていた。
それだけでも驚きだと言うのに、その壁を上回る建造物がここからでも視認できるのだ。
東京のように近代的なビルがあったりするわけでは無いけれど、確かに、そこは王都呼ぶに相応しい大都市であった。
「着いたぞ。嬢ちゃん」
ゼファーから声が掛けられる。
俺はそれに頷くと、馬車から降りていった。
俺たちの新たな冒険が今、この都市で始まろうとしていた。




