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26話 絶望のその先


────迷宮の守護者(モンストルムレイ)


 それは本来、15階層以上のダンジョンにしか見られない特殊個体であり、文字通り、ダンジョンの最後の砦とも言える存在。

 通常の個体よりも凶暴で、ステータスが高いことや凶悪なスキルを持っていることが特徴に挙げられる。


 だが……それは今説明した通り、20階層以上あるダンジョンでしか存在は確認されていない。

 つまり、4階層しかないダンジョンで『それ』が存在するのはまさしく異常事態(イレギュラー)だった。


 元来、ダンジョンは各々によって階層──存在値(エネルギー)が存在しており、15以上の階層を作れないダンジョンは、そもそも『迷宮の守護者(モンストルムレイ)』を産み出すことは不可能である。


 しかし、この黒浪の洞窟(ダンジョン)は、4階層の魔物の出現頻度を極限まで低くすることで、迷宮の守護者(モンストルムレイ)を産み出すまでのエネルギーを無理矢理蓄えていたのだ。今までに類を見ないモノであり、『黒浪の洞窟』の異常さが分かるだろう。



 だからこそそのことを、メルが考えることは出来なかった。そしてそれはエイミも同じ──。


 目の前の暴力(魔物)にただただ恐怖を抱くことしか、メルたちには赦されていなかった。



 今ここに──暴虐の()()が幕を開けた





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 地に降り立ったソイツは、その、血を被ったような紅の双眸を俺……ではなく、エイミへと向けた。

 そして、徐に大剣を上段へと振り上げる。


「──ぁ」


 喉から息が漏れる音がした。

 俺より数歩先を進んでいたエイミは、俺よりもソイツに近い位置にいるのだ。最初に狙われるのは道理だ。

 対するエイミは動けない。蛇に睨まれた蛙のごとく、動くことを赦されないでいる。


『────。』


 ソイツは心底興味無さそうに、死の刃(ギロチン)をエイミへと降り下ろした。

 風切音と共に、エイミの小さな頭にソレが吸い込まれていく。

 

「──ッ!」


 瞬間。


 エイミの姿が()()()()()


『!?』


 その事実に『彼』は驚きを隠せない。

 ひ弱な種族を文字通り殺すためだけに放たれたそれが、地を爆散させるだけに留まった。


 外れたのだ。


 それから一瞬を置かず、


『グッ……!?』


『彼』の頭が揺れた。

 首に、少しだけ衝撃が走った。


 言うまでもない。

 彼女(獣人)の仕業だった。


『…………ォ!!』


 産まれて初めて感じた、その感覚。

 痛みの、感覚だ。


 途端、()()する。


──楽しめそうだ。


 と。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「──ッ!」


 オーガが大剣を降り下ろしたのとほぼ同時。


 俺は、恐怖で力が上手く入らない脚に強引に力を込め、疾走した。魔法(エンチャント)を発動させ、敏捷の底上げも図る。


 絶望的だった距離を埋め、寸でのところでエイミを抱き抱え、処刑台から離脱した。


(よし、間に合……っ!?)


 そう喜ぶ暇もなく。


 背後で、地面が爆砕した。


「~~~~~~~ッ!??」


(なんちゅう馬鹿力してんだよ!? あんなの、当たったら血肉さえ残らないぞ……!?)


 スカルウォーリアーとは比べ物にならないほどの人外の膂力から繰り出された破壊の一撃。

 俺はそれに一瞬怯むが、間髪置かず、オーガの首へと2倍のMPを注ぎ込んだ『サイクロンカッター』を見舞う。


────直撃。


『グッ……!?』


 オーガから漏れる驚嘆の鳴。

 俺の中で、淡い期待が押し寄せる──が、しかし。


「────は?」


 俺の渾身の魔法は、オーガの首に()()()()()()()()()だった。


 2倍のMPを注ぎ込んだ渾身の魔法でさえ、ダメージほぼ0。


 その事実は、俺たちを更に絶望の底に突き落とすには十分だった。


 そんな俺たちへとオーガの相貌が向けられる。


「────」


 その醜悪な顔は、()()()()()()()()()()()()ようにも見えた。


 

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