表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代に生きる神喰の巫女

作者: 3時のおやつはうどん

初めて書くので拙い文ですがどうか楽しんでいただけば幸いです。

平安の頃、とある山の奥の神社に住む四人の巫女と一柱の神が居ました。

巫女、と言っても人ではなく自然の気が固まり、出来た妖怪の様なもの。巫女達は毎朝早く起き、祝詞を捧げ、人のように生きていました。

巫女達は国津神に仕えて居ました。

その神の名はもう誰にも分かりません。

毎日笑って生きていましたが、楽しい日々はあっという間に過ぎ去るもの。

ある日、1人の人間がやって来ました。人間は巫女達の姿を見、驚き逃げ帰ってしまいました。

そして三日後、人間は仲間を連れ、神社に火を放ちました。たまたま外に居た巫女の1人が仲間と神を助けようと燃え盛り、崩れていく神社に入ります。

煙で息苦しく、熱さで何も見えません。聞こえるのは仲間の悲鳴と神の苦しそうな呻き声。

外で人間達の嗤うこえが聞こえます。

巫女は思いました。

人間が憎い。

…神社に放たれた火は勢いを無くすことも無く、仲間を助けようとした巫女も飲み込みました。

巫女が最後に見たのは炎の向こうで悶えている仲間達と神でした。


それから1000年ほど経った日本に巫女は人として生まれました。

なんの嫌がらせでしょうか、巫女が憎んだ人に生まれるとは。

幸運な事に最初から記憶がある、という訳ではなく、14歳に全てではありませんが前世を思い出しました。

今はサクラと名乗っており、もう巫女だった頃の名も思い出せません。

いえ、思い出さない方がいいのでしょう。

幸い、母や父はオカルトに理解があるのでサクラを支えて、辛かったことも聞いてくれました。

聞けば母も父も前世がある様で、聞いた範囲では母は自らの命を断ち亡くなり、父も妹を救いたいがために手に掛けていました。

巫女だった頃の習慣としてかなり早く起きてしまい、毎朝家の近所や馴染みの神社に散歩していました。

いつもの様に散歩をしていますと廃れた社がありました。呼ばれた様な気がして近付いてみますと今にも消えてしまいそうな神が横たわっていました。

神は信仰を失えば消えてしまう。サクラはそれを思い出し、慌てて馴染みの神社に連れていきます。

しかし手遅れで神主さんに頭を振られてしまいました。

せめて私達だけでも見ていてあげよう。

そう言われ何も出来ず神を見ていました。

馴染みの神社の神は龍ですが、穢れにより祟り神となっています。しかし神主さんがとある事と引き換えに抑えて、正気を保たせています。

何時間経ったのでしょうか。神は散ってしまいました。

何も出来ないのが悔しい。人が信仰を失う事で散っていく神がいることがあまりにも悲しい。

神社にある小さな小屋で神主さんにお茶を頂き、慰めて貰いました。

サクラの隣では神主さんが仕えている龍が悲しそうに鳴いていました。

そっと撫でてみると鱗がザラザラとしていて擽ったくてくすくすと笑うと龍は腕に巻きついて来ました。

神主さんは言います。

人が信仰を失うせいで、沢山の神々が散ってしまっている。その龍もそうだ。ここいらの人間の信仰が無くなったせいで祟り神と化し、それを私が抑え、正気を取り戻させている。

完全に祟り神になってしまえば戻る事は出来ない。

神主さんに手を振り、その日は真っ直ぐ家に帰りました。

それから数ヶ月経ち、母と車で病院に行く途中でした。サクラは母にこの世界が滅びたらどうなるのかと聞いていると国津神の事をきき、涙が溢れて止まりませんでした。

サクラは言います。

ただのうのうと生きていて、神がいることも知らないで居られたのならこんなに辛い事を知らずに済んだのにと。

母はサクラを宥めこう言いました。

あんたが持っている媒体としての力は言い方を変えてしまえば神を喰らうことも出来る。

それならあんたの中で神を眠らせればいい。

全てが終わり、始まるまで。

それがあんたが笑って生まれてきて背負った使命だよ。

サクラはそれを聞いて納得しました。

消えていく位なら眠らせてその力を借りる。

涙は引き、目に宿るのは強い意志。

母は

本来ならその使命は自分で気付くもんなんだけどね。

私がオカルトに通じていて良かったねぇ

と笑っていました。

それからは消えそうな神と契約してから喰らい眠らせて行きました。

とはいえ既に手遅れなものや散ってしまった神も居ました。

ある日神主さんの所に行くと神主さんに

お前さん強くなったね。ようやく使命見つけたんだね。

と言われました。

神主さんに怖くないのかと聞いてみると

怖くないよ。神喰おうが何しようが君は君。

まぁ少し力のある人間は怯えるだろうね。

人間と言うのは未知なる物に異様な程の恐怖を覚えるからね。代表的なのは幽霊だろうさ。

私達は常に見えているから気にしないし何も感じないけど、人はそれが見えてしまうとパニックになってしまう。

そう言えば最近異世界物が増えているみたいだね。もしかしたら知らず知らずの内にああ言う異世界から来た魂が居るのかもね。

確かにそうかもしれない。

この世界は人間が認識しているもの以外にも沢山異様な物がある。

古い時代の機械。伝承に残る妖怪や悪魔、神の話。

それは所謂異世界からこぼれ出したもので。

どんなに人がその存在を否定してもそこにある。

家に帰ると人の魂を持たない母と父と妹。

思うと人の魂を持つ人が周りにいない。親友だってそうだ。

人じゃないからこそ人が見えない闇の部分も見てしまって、正直この世界は人でないものにとっては生きにくい場所で。

それでも人として皮を被って生きていく。

それぞれの使命を背負って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ