69.5 アラードの冒険
本を頑張って読んでいるとハヤトが訪ねてきた。そういえば三人で遊ぶ約束もダメになりそうだな……
「ハヤト? どうしたの?」
「アキラくん。アーノルドさんから聞いたんだけど……元の世界に帰る方法を探してるんでしょ?」
「え? ちょっと違うけど……まぁ、似たようなことはしてるよ」
「……手伝わせてよ! 僕だけじゃなくてアヤちゃんも手伝うからさ?」
「そう? ありがとうー」
ちょっと勘違いしてるけど、でも手伝ってくれるのはありがたい。元々ハヤトにも手伝ってもらおうかなぁ……とか思ってたし、ちょうどいいから本を読んでもらおうかな?
「この中でさ。興味あるやつ持ってちゃってよ」
「えーと……じゃあ、この「アラードの冒険」もらおうかな。小説だよね?」
「おぉ……こん中で一番苦手なやつだったからありがたい……」
アラードという紫のバンダナを頭に巻いた青年の物語だ。
最初の部分を読むと、砂漠を旅していたアラードがオアシスの街を見つけた……みたいな、そんな感じだ。
確かに他国感はあるが、ちょっと長い……
「この中から、外界の……感じ? 外界っぽさを見つければいいんだよね?」
「そうそう。出来れば今まで読んだ中でもこれもしかしてってのが有れば……」
「分かった! それじゃあ、僕、仕事に戻るね? アヤちゃんにも話しておくから!」
「仕事頑張ってね? じゃあまた」
よし。読むぞ……本読むぞ……
でも、ハヤトも手伝ってくれるんならエラさんから本をちょっと貰ってこようかな? 日記もほとんど終わってるし、裁縫もカエデさんが手伝ってくれるし……
ちょっと行ってこよう。考えてみれば一人で15冊は多い。
お城は今日もうるさい。きっとフーマさんが逃げ出してるんだ。
帰りに大臣のところにも行こうかな。大臣も本とか読みそうだし。
「あの、失礼しまーす。いいですか?」
「ぁ!? 今日は休みだよー?」
「本をちょっともらおうかなと思って、入っても大丈夫ですか?」
「あ……ちょっと……ごめん! ちょっとマッテ!」
きっと布を選んでいるところだろう。いくらでも待つさ。
………………遅いなぁ……布は壁一面に掛かってるからすぐに巻けそうだと思うけど……
「どうしたんですかね?」
(さぁな)
「大丈夫ですかー?」
「あ、大丈夫! 大丈夫! もうちょっとマッテテ!」
エラさんって不思議な人だなぁ。
しばらく待っていると扉が開いた。
「お、お待たせー? ほら、本、3冊くらいでいい?」
「あ……はい。なんかあったんですか?」
「いや! 大丈夫! ありがとー! それじゃあ、またね!?」
部屋から出てきたエラさんは、髪がボサボサだったし、服も乱れているような感じだった。
……もしかしてエラさんって裸族? でも、一応、ここはお城なんだけど……いいの? なんか知らんけど……
バタッと忙しなく扉が閉まる。不思議な人だなぁ……
そして帰りに大臣のところに寄る。暇だといいんだけど。
「大臣? 居ますか?」
「……あ、ごめんね!! 今忙しいから後にしてくれる?!」
「あ……そうみたいですね……また後で……」
「うん! ごめんね!? あぁ! 行かないで!」
庭にいた大臣はこの前とは違う色のイエローのドラゴンに引っ張り回されていた。壁に激突したり、地面に引きずられたり……手伝った方が良かったかな……
やっぱり一番変なのは大臣だな。そう確信して部屋から出た。
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(°し=°)