69 遠くのアナタに
仕事は終わったが、家に帰って本を読んでみる。三日で全部読めるかな?
この世界の印刷技術は凄まじいみたいで、イラストが細部まで細かく表現されている。
この「セントラルの美男美女」という本も被写体の服や顔などが写真のように鮮明にイラストで描かれていた。
何故こんな本をアーノルドさんが知っているのか、そしてなぜ、これが他国の人を探すヒントとなるであろうと思ったのか、不思議ではあったが、もしかすると他国の血が入るとエラさんみたいに美人になるのかもしれない。
元の世界でもハーフがどうのこうのとかあったし、そんな感じかな?
そもそもこの世界の人の顔の特徴がそこまで理解できてないのに、どうして他国の人を見分けられるんだろうか?
はぁ……クマったなぁ……
他にはファンタジー小説や、日記、辞書や裁縫? についての本など、他国の感じを読み取るには俺の知識が足りないような気がする……
美男美女の本を閉じて、日記を読む。これが一番読みやすそうだしね。
《日頃の出来事の共有》
どうやらリレー形式の日記らしく、近所の人たち数十人で書いてたみたいだ。そういうのってこの世界にもあるんだね。それが本になってるのも面白い。
適当にページをめくっているとちょっと気になるところを見つけた。
『84回、晴れ。この街の雑貨屋は彩りが少なくて、少し寂しい。私はもっと家中を様々な色で飾りたい。その為に今日はアドリエータという植物を使って染物をしてみよ……』
アラ? これめちゃくちゃ他国の人じゃん。
セントラルのことをこの街って書いてるし、それに晴れってところもおかしい。セントラルはほとんど晴れなのでわざわざ『晴れ』なんて書かなくても晴れてると分かるはずだ。
前後10回を見てみても、やっぱり天気のことなんて書いてない。これは怪しいぞぉ?
他にもこの人が書いてるページあるかな? 「84」とメモって、『晴れ』と書かれた日記を探す。
「あ!あった!」
『36回、晴れ。たまに昔の味を思い出すことがある。再現しようと思い、作ってみたはいいものの、野菜が柔らかくて、熱を加えるとどうしてもドロっとした食感になってしまう。もしかしたらここでは難しいのかもしれない……』
この人中々アクティブだな。普通に面白いかも。
他にもあるかな……無いかぁ?……
「見つけた……」
『203回、晴れ。私が生きていたという証をこの本に残せたことに、心の底からの喜びを感じます。もしこれを、遠く、どこまでも遠くのアナタに見せることが出来たなら……』
…………探してもこれ以上は見つからない。
俺たちがやろうとしてること、それの意味っていうのをしっかり確認した。
さてと! まずはこれがセントラルのどのあたりで書かれたかだよな? おそらくどこかに場所を特定できるような記述があるはず! 気合で探すぞ!
場所を探そうとして、最後のページを見てみると、日記を書いた人の名前がズラッと並んでいる。
人数は38人。その中から変わった目立つ名前を一つ見つけた。
『タグュール』
多分、この人が違う国から来た人だと思う……後でエラさんにも確かめてみよ。
その後、場所を特定しようとしても……中々見つからない……どうすれば良いのかも分からない。
そもそもみんな大したことを書いてない。例えば自分の息子のことだったり、護衛をやってる夫のことだったり、ホントに日常について書かれている。
全部セントラルでの出来事なので、登場する場所も知ってる場所ばかりだ。
地図で見るとセントラルはそこそこデカいが、みんなが行く場所は大抵一緒だ。
お城、市場、高い丘、広場。これぐらいしか人が集まる場所がないので、そればっかり出てくる。
市場で買ったものが腐ってたとか、広場で催し物をしてたとか、俺も経験があるようなことばかりだ。
うーん……難しいが、ちょっとだけ光も見えてきた気もするなぁ。
「ただいま! アキラさん?」
玄関の方からカエデさんの声が聞こえてきた。もうそんな時間になってたの? ご飯作ってないじゃん!
「おかえり……すぐご飯用意するから……」
「もしかして今日も帰りが遅かったんですか? 私も手伝いますよ!」
「帰りは早かったんだけどね? 本読んでて……」
二人で料理をする。久々にちゃんとカエデさんの横顔を見てるとなんか……ドキドキしてきて、アララ? アラ?って気分になる? なんだそりゃ?
いつもより素早く料理を終えると、二人でテーブルに着いた。ふぅ……腹減ったぜ!
「「いただきまーす」」
「あの、本ってなんの本読んでたんですか?」
「えっと、交換日記みたいな本。今なんの仕事してるのか話したっけ?」
「そういえば知らないかもしれないです。どんなお仕事なんですか?」
「セントラル以外の国を探すみたいな仕事だね。そのために違う国の人について書かれた本を読んでるんだよ」
「……ちょっと興味あるかもしれません。その本ってみても良いですか?」
「ちょっと待ってこようか?」
二階の寝室から本を5冊持ってくる。テーブルには置くスペースが無かったので、床に置いた。
「あ、お裁縫の本」
「見ていいよ。もし気になるとこあったら教えて?」
食べ終わったお皿をテーブルに置いたまま、カエデさんは拾った本を椅子に座りながら熱心にめくっている。
「これ珍しい縫い方ですよ? 私、初めて見ました」
「え? どれ? ちょっと、メモ取ってくる」
また二階に戻り、メモ用紙とペンを持って帰ってくる。
「普通はここで縫い返すんですけど、この本だとそのままに次のところに行って、そこから最初に戻ってる」
「ん? まぁ、とにかく特殊なんだよね?」
「私は今まで見たことないです……他にもたくさん変わった縫い方が描かれてますよ?」
「はぁ……ホントに他国の人っているんだね……」
今まではちょっと鍛冶屋に戻りたいとか思ってたけど……一つ、区切りが付くまではこの仕事を頑張りたい。
やる気出てきたぞ! 絶対、他国見つけるぞ!
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(°し=°)
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