63 変? かも?
俺たちは二人で大臣のところに赴く。変なこと言われそうだなぁ。
「あ、来ると思ったよ! さぁさぁ、座って?」
「こんな椅子どこにあったんですか?」
「買ってきたんだよ。二人が来ると分かってたからさ?」
「……私たちがなぜここに来たのか分かっているならまず結論から教えてくれないか?」
「それって仕事のこと? まぁ、結論から言うと鍛冶屋は当分ダメだね」
「……分かった……」
「ダメナノカ!?」
「僕も説得しようとしたんだけどさ? 王様はもう絶対ダメだ!って感じなんだよねー。ははは!」
はぁ……やっぱりダメか……そりゃダメだよなぁ。でも鍛冶屋がダメだったら俺たちの仕事は何になるんだろう?
「それじゃあ、何の仕事をすればいいんですか?」
「ミリはアイラくんの雑貨屋で働いて? で、問題は君なんだけどさ……」
アイラが死ぬほど喜ぶ姿が目に浮かぶ。あそこなら親方も自由にやれそうでいいな。
「君は……なんか「外界探索隊」? の隊長だって?」
「なんですか? それ?」
なんか微妙にダサい名前。それに大臣がずっと疑問符を浮かべたような感じで喋ってる。俺も初めて聞いて……てか、隊長!?
「え? 隊長なんですか? 俺が?」
「そう。と言っても昨日……いや、今日出来た部隊だからさ。隊員が君ともう一人の子しかいないんだよ……はははは! なんか面白いね? ははは!」
「えー、それってどんな仕事なんですか?」
「詳しくはその子に聞いてよ。案内してあげようか?」
「まぁ、お願いします」
「一応国の仕事だからさ。そんなに悲観的にならなくてもいいと思うよ?」
「……私はもう帰るぞ。それじゃあな」
「あ! ミリには話しておかないといけないことがあるから……待っててくれる?」
「分かった」
「ハヤクシロヨ!」
「じゃあ、親方、また後で」
「またな?」
大臣の部屋から出て行き、目的の場所へと二人で歩いて行く。その途中に大臣から話しかけられた。
「爆発したらしいね? 僕も気を付けないとなぁ」
「いや、ホントにそうですよ! 無造作に粉置いてたらいつか大臣も……」
「そうだね。まぁ、気を付けるよ。はは」
「なんで外界探索隊なんて出来たんですか? 今日出来たんですよね?」
「ん? それは君が鍛冶屋を辞めることが決まったからだね。ほぼほぼ思いつきだよ」
「……思いつきで国の仕事って作れるんですね?」
「まぁ、もう一人の隊員? あの子変わった子だからね。君も気を付けなよ?」
「まぁ、はい」
大臣から変人って言われるってどんだけなんだ。
「大臣はドラゴンと契約とかするんですか?」
「ん? なにそれ?……初耳だけど」
「あれ? ルドリー言ってないの?」
(我にも肉体を選ぶ権利はある)
「聞かせてよ? 面白そうだからさ?」
「なんか……説明むずいなぁ……簡単に言うとドラゴンと一生、一緒にいることになるみたいな……ちなみに親方はグェールと契約したみたいですよ? それのせいで鍛冶屋が爆発したんですけどね」
「へぇ、面白そうだね?」
「魔力が増えてるみたいな……スティーだったら分かるんじゃない? スティー?」
親方の魔力はグェールの分も増えてるはず? それを確かめることが出来るのはスティーだけなので、聞いてみようと呼びかけても返事がない。どこ?
「いないんですか?」
「さっきまで居たからね。もしかしてもうミリに話とか聞いてるんじゃない?」
「あぁ、ありそうですね」
「あ、着いたよ」
目の前の部屋は普通の扉だ。大臣の部屋の扉よりも百倍くらい普通なので、大臣が言うほど変な人じゃないんだと思う……思いたい……
「お邪魔するよ?」
「マッテ、待って! 今開けるから、ちょっとそっちからは開けないでー!?」
変な人ぽいなぁ。いや、早すぎか? まだ分からない……ただ声からして女性だったな。
それからそこそこ待っていると部屋の扉がキィーッとゆっくりーと開き始めた。
「ようこそー……君が隊長?」
「あ……そうみたいです……これから……よろしくお願いします……」
「優しい人で良かったぁ……ユーリみたいな人じゃなくて良かったぁ……」
扉から出てきたのは、もう少しでアフロになるんじゃないかと思うほど天然パーマの髪の女性だ。
水色の布を鼻から首元まで巻いていて目以外見えない。
目は綺麗な目をしていて、そこだけみたらなんだか優しそうにもみえる。でも布はなんで巻いてるんだ?
元の世界にも似たような女性がいたような……どちらにしろ理由は分からないけど。
「よーし……隊長さん、これからよろしくおねがいしますね?」
「あ、よろしくお願いします……」
「ユーリはどっか行ってよ……二人で話すから……」
「ははは! ね? 変な人でしょ?」
「え?……まぁ、変じゃない……ですよ」
「ウソ!? 変じゃない? ありがとぉー」
「はは! 上手くやっていけそうじゃない? 僕はミリと話があるからもう帰るね?」
「案内、ありがとうございました」
「やったー、良かったぁ……良さそうな人で良かった……」
「……入ってもいいですか?」
「いいですよ。でも………………いや、なんでもないです」
なんでもないんかい! 随分長い間の後にそんなことを言われてちょっと狼狽えた。
確かにちょっと変な人だけど、この世界で出会った、親方とか大臣に比べたら全然まともだ。
良い人そうだから、不安だけど……なんとかなるかも……
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