62 グェール!!
「親方、カエデさん帰ってきましたよ。ご飯食べましょ?」
「あぁ! ちょっと待っててくれな?」
煤の山でゴソゴソしてる親方。多分、全身真っ黒になってるんだろうな。
「あれ、なんですかそれ?」
「これはグェールの鱗で作った籠手だ。一応、完成してたんだよ」
「確かにちょっとだけオレンジに光ってますね」
親方は実際、真っ黒だったが、それよりも手に持ってる物に目がいった。
手のひらのちょうど真ん中にオレンジの光がキラッと輝いている籠手。これで何が出来るんだろう?
「まだ試作品ではあるが、恐らくちゃんと機能するはずだ……よし! それではご飯にしよう。待たせてしまったな」
「確か、弓矢の威力が増すんでしたっけ?」
「そうだな。とにかくそれはまた後でだ。今はお腹が空いた……」
「スイタ! オナカ!」
真っ黒な親方は魔法で煤を払う……魔法ってマジで便利だなぁとか思いながら道を歩いた。星空がキレイだなと上を見てると転びそうになった。ちょっと恥ずいやつ……
「ただいまー」
「あ、おかえりなさい! ミリアさんもお久しぶりです!」
「久しぶりだな。三人でご飯を食べるなんてどれぐらいぶりだ?」
マジでいつぶりだろ? まだ自由だったあの時に戻りたいよぉ……そこまで自由でも無かったか……
「用意しておきました。もう食べましょ?」
「え! ごめん、疲れてるのに……」
「ありがとうな。カエデ」
「タベヨウ! ハラヘッタ!」
「え? 今の声なんですか?」
「え? 聴こえたの? カエデさんも?」
「食べようって言ってましたよね? もしかしてこれがドラゴンの声なんですか?」
「タベヨウ! タベヨウ!」
「あ、また聞こえました」
聞こえてるじゃん。そんなことも出来るようになるんだね。そりゃドラゴンとしては許可されたいわな。
声は親方の口からではなく、親方の辺りから聞こえてくるので、肉体から発声しているわけではないみたいだ。ということは……どういうことだ? カエデさんに聞こえる理由がよく分からない。
「と、とにかく食べましょう? いただきます……」
「タベマス!」
親方がテーブルの上の料理をドカドカと口に運んでいる。なんか不思議な光景だ……
「おい! グェール! 良い加減にしろ!」
「ナニガ!?」
「ちゃんとゆっくり食べろ! お前だけの肉体じゃないんだぞ!」
「タシカニ。ワカッタ」
案外物分かり良いんだね。それからは何事もなかったかのように普通の親方に戻った。
「大変そうですね。大丈夫ですか?」
「あぁ、でも意外と上手くやっていけるかもしれないな」
「ミリアさん……何があったんですか?」
「ちょっと説明するのは難しいが……まぁ、簡単に言えばドラゴンと一緒に暮らしてるんだ」
「ホント……ですか?」
「ソウダ! オレモイルゾ!」
もし、俺がルドリーと共同生活することを許可した場合、こんなことになる可能性もあるのか……自分の意思で肉体を動かせなくなる……ちょっと怖いなぁ。
(お前に言っておくが……我はちゃんと指示に従うぞ?……)
「……そう……だよね? うん」
「どうしたんですか? アキラさん?」
「あ、俺も今ドラゴンと話してた……ていうか、カエデさん明日も仕事でしょ? ごめんね混乱させるようなことばっかりで」
「いや、大丈夫です! 気にしないでください!」
「ア! オマエシッテルゾ!」
「え? 私のこと?」
「アァ! ソウダ! カエデカ?」
「うん。そうだよ?」
知ってるならもっと早く気付くもんなんじゃないの? それはどうでもいいか……
「ナカヨクナッタカ!? コドモト!」
「王子様のこと?」
「ソウ! ケンカシテタカラ!」
急によく喋るなぁ。てか、王子と俺達で一緒に外出た時も見てたんだ。
「仲良く……でも私と王子様は、あの、友達とかじゃなくて……」
「前、私に話してくれたじゃないか。最近仲良くなれたんだってな」
「ミリアさん……でも、王子様だから……」
なんでカエデさんが責められてるみたいになってるんだ?……気まずいの苦手なのに……
「カンケーネー! ナカヨクシロヨ!」
「まぁ、そんなにね? グイグイ言わなくてもいいじゃん? ねー?」
「……アキラさん……私、王子様とちゃんと向き合います! ちゃんと辞めたい理由とかを王子様に隠さず、自分で説明したい……」
「ナカヨクスンノカ!?」
「します!」
なんかよく分からんけど、上手くいきそうな雰囲気がちょっと出てきたんじゃないか? 王子様が納得してくれたらカエデさんも今の仕事、辞められるだろうし。
「明日、頑張ってみます! ドラゴンさん、ありがとうございました!」
「グェールダ! ドラゴンジャネー!」
「グェールさん! ありがとう!」
なんか知らんがよし! ナイスだグェール!
それから食器を俺と親方の二人で片付ける。カエデさんは先に寝る支度を始めた。
「なんか上手くいきそうです。ありがとうございます」
「お礼ならグェールに言ってくれ」
「ナンデダ?」
「とにかくありがとうグェール。良かったね、許可してもらえて」
「ヨカッタ! アリガトウミリア!」
「……どういたしまして……」
良い関係に見えてきてしまったなぁ。ちょっと羨ましい。いや! でも冷静に考えてグェールと一生を共にするのって割とキツそうだぞ……親方の歩く道は茨の道かもしれない……
カエデさんが寝る前におやすみを言いに来てくれた。それに二人で返した後すぐに、親方は自分の家に帰っていった。
グェールと二人で大丈夫かな……そんな心配も頭のどこかにあったが、なんとかなるでしょ! うん。
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