60 力が欲しい……
鍛冶屋の前に人だかりが出来ている……そりゃそうだ。あんなにドカンと爆発したんだから……
これはこのまま透明なままで、親方の家に行って服を持ってこよう。
人だかりの中には知り合いが何人もいる。アイラなんかは泣き崩れてるし……みんな、後で説明するから……
火を消すため、この世界の消防士らしき人たちが川の水を必死に建物へかけている。
申し訳ねぇ……後でちゃんと謝らないと……てかこれから鍛冶屋の仕事やらせてもらえるのかな……
親方の家に入るのも久しぶりだな。部屋に勝手に入り込むことになるけど、緊急事態だし、しょうがない……しょうがない。
親方の服を持って、自宅に帰ると目覚めた親方がいた。
「あ、これ、着替えです」
「お前も服着てないじゃないか」
「あぁ……何か着て来ます。親方も着替えといてください」
棚から適当な服を引っ張ってきて、それを着る。そういえばあの服お気に入りだったなぁ。まぁいいか。
部屋に入る前にノックをして、入っていいのかを確かめる。
「入っても大丈夫ですか?」
「いいぞ」
扉を開けるとまだ着替えが終わってない親方がいた。お腹のくびれとかその上にあるやつとかがほぼほぼ見えていて動揺してしまう……そういえば親方ってこういうの気にしない人だった……
「……閉めますね」
「閉めるのか? 私は気にしてないぞ?」
ガチャッ。扉は閉まる。
すると一階の玄関の方からコンコンとノックが聞こえてきた。多分みんなが様子を見に来てくれたんだろうな。顔だけ出しとこ。
「どうぞ。誰ですか?」
「あぁ! アキラくん!」
「ミリアさまは無事なの!?」
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「大丈夫か! 俺の店まで音が届いてたぞ!?」
みんな来てくれたんだな……ちょっと泣きそう……
「ありがとうみんな。とりあえず俺も親方も大丈夫だよ。ありがとね?」
「良かったぁ!……ホントに大丈夫なんでしょうね? ミリアさまは今どこなの?」
「……」
ウチに居るとか言ったら怒るかな。いや、怒る……かな?
「ちょっと休んでるから今は会えないかも。怪我とかはしてないんだけどさ?」
「アキラくん……もし困ったらなんでも言ってね?」
「そん時はちゃんと頼るから……今はちょっとごめんね?」
「分かった。アキラ、また後でね?」
「みんなも仕事中にごめんね? 騒がしちゃってさ」
「……良かった……でも、ホントに大丈夫なんでしょーね?」
「ちゃんとしたら挨拶に行くから……」
手を振ってみんなを見送る。ふぅ……これでオッケーって感じだけど、親方の様子も気になる……グェールがまた暴れ出したら今度はここも大変なことになるぞ……
おそらくお腹が空いてるはずなので、生で食べれそうな果物や野菜をカゴに盛って二階へと運ぶ。
もうノックをしたところで何の意味のないので、そのまま開いた。
「ご飯持ってきましたよ。食べます?」
「ゴハン!? ヤッター!」
「あれ? グェール?」
「ムシャムシャ……さっきは迷惑をかけたな……ムシャムシャ……私の肉体をグェールに貸してしまったせいで……ムシャムシャ……あんなことになってしまって……」
「親方、めちゃくちゃ食べてますね……もっと持ってきますよ」
「食べてるのは私じゃないんだ……ムシャムシャ……グェールが勝手に……」
「まぁ、とりあえず持ってきます」
自分の意思とは関係なく体が動くって怖すぎないか? 俺もルドリーに許可してたらそうなってたのかな……コワ。
「許可するとあんなことになっちゃうの? 先に言ってよ……」
(……そもそもアイツは話が出来るような相手じゃなかっただろう。我ならちゃんとお前の言う通りにするよ)
「ホントに? 怖くなってきちゃったなぁ」
(なら大丈夫だろう。我に恐れている間は絶対に許可できないだろうしな)
「……いつかね? うん。今は無理かもしれないけどさ?」
(言ったな? その時を楽しみに待つことにするよ……)
カエデさんのために買っていた食材を全部二階に持っていく。この後また買いに行くか……でも、こんな短いスパンで買いに行ってたらホントにめちゃくちゃ買うことになっちゃうな。
今はお金があるからいいけど……鍛治屋が潰れたら……まぁ、もう物理的に潰れてるけど……潰れたらお金にも余裕がなくなってしまうかもしれない……
王様とかはどう思うんだろ。これ以上敵対したら捕まるとかありそうで嫌だなぁ……
「……親方……ご飯持ってきました……」
「……そんなに落ち込まないでくれよ……」
「ウマ! ウマイゾコレ!」
「そういえば、力を許可して何か良いことありました? 俺もルドリーに許可しようか迷ってて……」
「うーん……今のところはそこまでだな。グェールには悪いが……」
「キタイシテクレ! コウカイシナイゾ!」
「はは……期待してるよ……」
親方の悲しい笑顔が痛い……やっぱりこの人めちゃくちゃいい人だ……こんなことになってもまだグェールに優しくして……
「俺も頑張ります! とりあえず明日から仕事戻らせてください!」
「……これから鍛冶屋として働けるか分からないが……もし、そうなったら協力してくれ」
いや! この際俺と親方が別の仕事になったとしても手伝おう! それぐらいの恩があるし、何より親方のためだ!
「いや! とにかく何の仕事だとしても手伝います! これからもよろしくお願いします!」
「……アキラ……ありがとう……」
親方にギュッと抱きしめられる。うぅ……泣きたくなってきたよぉ……
「私はもう少しだけ寝ててもいいか? さっきから申し訳ないな……」
「大丈夫です。俺は買い物行ってきますね?」
「じゃあな。おやすみ」
「おやすみなさい」
「オヤスミ!」
強い決意を胸にしながら階段を降りていく。コインの袋を握り締める。お金はある……お金はあるんだ!
(お前、王子の方はいいのか?)
「……」
(まぁ、好きようにやればいいさ)
「………………」
力が欲しい……なんでも思い通りに出来るような力が……
そんなことを思いながら、市場に食材を買うために出かけた。
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