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異世界で、なんか、流されるように生きている  作者: 豚煮豚


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7 怪しげなおじいさん

 

「お前たちはもう用事が済んだろう! 王様は忙しいんだ!」


 王の間に戻って話を聞いてみようとしたが兵士たちに門前払い(もんぜんばらい)されてしまった。


「俺と一緒にこの部屋にきた女の人がどっちに行ったか分かりますか?」


 しょうがないから兵士に聞いてみる。


「あぁ、それなら……ここからこっちの方に向かっていくのが見えたぞ!」


 兵士が指をさしたのは俺がさっきまでいたところと真逆の方向だった。とりあえずの見当がついたので安心した。


「ありがとうございました」

「ふん! 早く見つかるといいなぁ!」


 礼を言ってからその方向へ向かう。


 探している途中、怪しげな影が角を曲がっていくのが見えた。


「あれ? なんか動いたか?」


 そう思い、その影を追いかけて角を曲がっても誰もいない。おかしいなぁ、今何かいたんだけどなぁ。そう思いながら元の方向に戻ろうとするとそこの角の隅っこの天井に人がへばり付いていた。


「な、なんでそんなとこに人が!?」

「静かにしなさい。私は今、追手から逃げているところなんだ」


 その人は白髪(はくはつ)の結構な老人のはずだが軽々と天井から降りて俺に向かって話しかけてきた。

 天井にへばりついていた時は気付かなかったが思ったよりも背が高くて驚いた。


「君は私のことを知らないのか! ――これは利用できるぞ――いや、実は少し手伝って欲しいことがあるんだが」


 おじいさんは(ふところ)から木で出来た(ぞう)を取り出すと


「この像を向こうの窓の近くに落としてきてくれないか?」


と言った。


 おじいさんが指差した窓までは10メートルほどあったが別に大した事でもないので引き受けた。


「まぁそれぐらいのことだったら分かりました」

「ありがとう! 少年よ! あと兵士に私のことを聞かれても黙っていてほしい。それではまた会おう、さらばだ!」


 そういうと廊下を恐ろしいスピードで走り去っていった。


「一体なんだったんだ……あの人は」


 さっき言われた通りに窓に木で出来た像を置く。その際に木像(もくぞう)をしっかり見てみるとすごく精巧(せいこう)に作られていてまるで魂が宿っているような表情をしていた。


 しばらく木像を見ていると兵士達がやってきた。


「あいつ! 一体どこに向かったんだ!!」

「あ! 見てください! あれ! あいつの落し物がありました!」


 兵士達は俺が見ていた木像に目をやり、問いかけてきた。


「そこの君、フーマを見なかったか?」


 もしかしたらあのおじいさんがフーマなのかも知れないと思ったが、確証がなかった。しかも口止めをされていたので言うのはやめておいた。


「いや見てないと思います」

「そうか……おい! ここに木像があるということはあいつはおそらく窓の外に逃げた! 俺たちも向かうぞ!」

「分かりました!」


 なんだか悪いことに手を貸してしまったのかもしれないと罪悪感が少し湧いて来たが自分にはあのおじいさんがあんまり悪い人には見えなかった。


 なんだか城内がざわついていたのはあのおじいさんのせいだったのか。

 気にしていても仕方がないのでとりあえず彼女を探す事にする。もしかしたらと思って城の入り口で待っているのかもと思ってそこに向かった。


「あ、見つけました! 心配したんですよ! 大丈夫でしたか!?」

「いや、大丈夫、こっちも探してたんだよ。また会えてよかった!」


 まぁ入り口なら必ず通るし、わざわざ城内を探し回る必要はなかったかもしれない。


「用も済んだしこれからどうしようか?」


 彼女は宿を取ってくれているようだがそれがどこにあるのかも分かっていないので聞いてみた。


「そうですね。もうそろそろ夜になりそうなのでひとまず宿に泊まりに行きましょう!」


 彼女と宿に行く道のりで王様と何を話したのか聞いてみた。


「王様と何を話したの?」

「あなたのこととか、村で困っていることはないかとか、あと、褒美は何がいいのかを聞かれましたね!」

「あぁそれだけだったの?」

「あと少しだけドラゴンの話もされましたね。奴らを滅ぼす時は君も手伝ってくれ! みたいなそんな話でしたね」


 俺はあんまり王様のことを知らなかったがあの人がドラゴンに対して強い憎しみみたいなものを抱いているのは感じた。そんなに憎いような存在なのだろうか?


「そんなことより! お仕事見つかって良かったですね! おめでとうございます!」


 あぁそういえば俺は明日から鍛冶屋で働く事になるのかもしれないんだった。また明日に大臣の部屋へ行ってみないとよく分からないが、就職するとなるとここまで支えてくれた彼女ともお別れかもしれない。


「ありがとう、でもこれから俺はこの街で暮らす事になりそうだから、あんまり会えなくなるかもね。」


 もちろん暇が有れば彼女の村に行ったり、何かお土産を買ってあげようかとは思っているけどそれでも今のように一緒にいることは出来ないだろう。


「わたし! 会いにきますから! だから安心してください!」


 彼女が元気に応えてくれる。


「もちろん俺も会いに行くよ。お土産とか持って行くからさ」


 なんだか重たいような空気が流れる。本来嬉しい話なのに暗くなってしまったなぁ……


「あっ、ここが今日泊まる宿です」


 空気を変えるように彼女が言った。


 彼女が指差した先には木造の二階建ての建物があり、小さな看板に宿屋と書いていた。その中に入ってみると思ったよりも静かで受付嬢と少しの客しかいなかった。


「あの、ここで待っていてください。少し準備があるので」


 そういうと受付に向かっていき、受付嬢と話し始めた。


 何もかも頼りっぱなしだ。

 この世界に来てからずっと一緒だった彼女とこれから離ればなれになってしまう事に大きな不安を覚えてしまう。そんな事を考えてボーっとしていると彼女が話しかけてきた。


「あの、実は手違いで部屋が1つしかなかったみたいなんです。2人で1つの部屋でも大丈夫ですか?」


 あんまり聞かないでボーッとしたまま応えてしまう。


「あぁ問題ないよ」


 ん?今なんだって!?同じ部屋?問題あるだろ!大丈夫じゃないだろ!


「それでは、ゆったりとおくつろぎくださいませ」


 受付嬢が丁寧にそう言った。どうやらチェックインを済ませてしまったらしい。


「俺はここで寝るから……君は部屋で寝なよ!」


 そうするべきだと思った。


「どうしてですか? 一緒に部屋で寝ましょうよ! それに今日もドラゴンなら襲われたりとか、色々あったので疲れてるでしょう?」


 たしかに今日はとにかく色々なことがあって疲れてる。出来れば横になってぐっすりと眠りたいのは

間違いない。でもダメじゃないか?いいのかほんとうに。


「君は大丈夫なの?」

「はい! もちろん!」


 迷いなくこたえる彼女を見て、俺が何もしなければいいだけかと思いそのまま彼女に着いていき二階に向かう。


「この部屋です!」


 中を見てみるとベットは一つしかなかった。

 正気を保てよ。俺!


「それでは今日はもう寝ましょうか? 少し狭いかもしれませんが、ゆっくり休みましょう」


 ゆっくり休めるかなぁ?大丈夫だろうか?でもここまできたら自分を信じてベットに入り込む。

 彼女も後から入ってくる。


「おやすみなさい! 今日もお疲れ様でした」


 彼女の顔がすぐ近くに見える。このまま自分が何もしない事を祈って眠ろう。頼む!自分!このまま朝を迎えてくれーーー!


「あぁ……おやすみ」



 窓から差し込む月明かりは(まぶ)しく、照らされた彼女の顔はとても綺麗だった。










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