52 おやすみ
「お前に休みをやろう! 私が連絡するまでは休んでていいぞ」
「へぇ? なんでですか?」
「最近始めた作業がとても危険でな。危ないから私一人でやることに決めた」
「もしかしてグェールの鱗で何か作るんですか?」
「そうだ。しかし難しくてなぁ……どうしても作業中に爆発してしまうんだよ」
「……大丈夫だったんですか? それ」
「ちゃんと魔法で守ってたからな。私と建物はなんとかなったよ」
(バクハツシテタゾ!)
「爆発しないように出来ないの?」
(ナンデダ? シタホウガイイダロ!)
ルドリーの時のように上手くいかなくて困ってるみたいだ。そんなに難しいならやらなきゃいいのに……とか思いながら、おそらく長くなる休みを頂いた。でも、手伝える仕事だと思ったけど……
「俺もやりますよ。俺も魔法使えるから大丈夫ですし」
「これは私のわがままみたいなものだ。仕事とは関係ない」
「いや、怪我したら大変じゃないですか。爆発するんですよね?」
「ダメだ! 私一人でやらせてくれ!」
どうしてか分からないが一人でやりたいらしい。今ままで死にかけるようなこと沢山あったから、それぐらいの危険ならもう別にいいのに……でも俺も怪我したくないからな。
「人手が必要になったらいつでも言ってくださいね」
「しかしなぁ……まぁ、必要になったら呼ぶよ。その時はよろしくな」
(ガンバレヨ! オウエンスルカラサ!)
「お前、作業中は静かにしててくれないか? 集中できないんだよ……」
(ガンバレ! ガンバレー!)
「はぁ……しょうがないか……」
グェールが最近静かになったと思ったら、親方のところに行ってたんだな。てか、ドラゴン達ってどういう仕組みになってんだよ。俺の所とか親方の所とか、あっち行ったりこっち行ったり、どうやってんだろ?
考えごとをしながら歩いていると背後から小さな爆発音が聞こえてきた。本当に大丈夫なのか?
いきなり休みか、でもちょうどいいかも。アヤカとハヤトの三人で遊ぶ約束してたし、休みだよぉ〜って言えば向こうからも誘いやすいだろうし。
ご飯ついでにハヤトのところへ行こっと。
「いらっしゃいませー。あ、アキラくん」
「チャーハンある? 後は楽なやつでいいよ」
「うん、分かった。ちょっと待っててね?」
マスターの店は前よりも人が増えた。ハヤトがきたお陰で料理が美味しくなったと噂になっているからだ。
それにチャーハンとか元の世界にあった料理をおいてたりもするから珍しくて来る人もいるらしい。そのせいで遊べてないってのもあるけど、まぁ、しょうがない。暇すぎるよりはいいだろ。
「お待たせ! チャーハンと卵スープ!」
「お、ありがとう!」
テーブルから離れようとするハヤトをちょっとだけ呼びとめる。ホントのちょっとだけ!
「あ、ハヤト?」
「なに? どうしたの?」
「俺、長い休みもらったからさ。暇だったら呼んでよ」
「え? 何かあったの?」
「親方が一人でやりたい作業があるんだってさ。危ないから俺は来ないでいいみたいなさ?」
「そっかぁ。じゃあ、今度、遊びに行くね?」
「オッケー。仕事頑張ってね?」
「ありがとう!」
パラパラのチャーハンと少しだけ味の薄い卵スープを飲んで、お店を出た。材料も元の世界と違うのにちゃんと料理になってるのがスゴイわ。何よりマスターの料理不味かったのに……不味かったっていうか、素材が悪かったのかな? それなのに素材を生かした料理を作ってたマスターが不器用だったってだけか。
そのままの足で雑貨屋へと向かう。今まで行こうと思っても行きづらかったけど、理由があると気楽に遊びに行ける。二人ともこの世界と仕事に慣れ始めたっていうのはあるけど。
「いらっしゃいませ! あ、アナタですか……」
「アヤカ今いる?」
「アヤカさん? アヤカさんなら今買い出しです」
「へぇ、何買いに行ったの?」
「アクセサリーとかお昼ご飯とか、色々ですよ」
「どれぐらいで帰ってきそうかな?」
「ちょっと時間は掛かるかもしれません……待ちますか?」
「あぁ、それなら伝言頼めるかな?」
「それくらいならいいですよ」
「休みになったから暇なら遊びに来てって感じのこと言っといて? 大丈夫?」
アイラが律儀にメモを取ってくれていた。良い子なんだろうけど、俺には微妙に厳しい……
メモを取り終わるとすぐさま質問が飛んできた。
「ミリアさまに何かあったんですか!?」
「え? なんで?」
「だってアナタは鍛治屋さんで働いてるんでしょ?」
「親方は危ない作業? みたいなのしてるから一人でやりたいんだって?」
「はぁ! 危ないことはアナタがやりなさいよ! それか怪我しないように手伝ったりとか……」
「いや、手伝うとは言ったんだけど……」
「ミリアさまはお優しいから! そう言うに決まってるじゃないですか!」
確かに改めて考えると俺もヒドイやつな気もするが、そんなに怒られることでもないような……あるような……いや、でもしょうがなくないか?
「私、行ってきます! ミリアさまが心配なので!」
「でも邪魔しないほうが良くない? 結構、難しいことしてるから」
「大丈夫です! 私も魔法は使えますよ!」
アイラはそう言って鍛冶屋に向かってしまった。えぇーー……やっぱり手伝ったほうがいいかな? でも、基本的に作るのはいつも親方だけだからな。俺は雑用だけで……
思い悩みながら、アヤカが来るのを待っていた。
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