51 爆発実験
大臣の部屋へ向かうべく街を歩いているとグェールが話しかけてくる。街中ではやめてほしいなぁ……
(ドコイクンダ!?)
「…………」
(ムシスンナヨ!)
「…………」
(オーーーーイ!!!)
(五月蝿いぞ、貴様。今はいくら話しかけても返事はないぞ)
(ナンデダヨ! キコエテンダロ!)
(無駄だ。今は静かにしてろ)
ありがたい。もしグェールがずっと俺に話しかけ続けることになってたら頭がおかしくなってただろうから。
城が見えてきたころには頭の中から騒音は消えていた。大臣のところにもグェールいんのかな? 話聞いてみるか。てか、用事ってナニィ?
「失礼しまーす」
「お! 来たねぇ。この前はお疲れ様」
「お疲れ様です。あの後大丈夫でしたか?」
「うん! 見ての通りだね? それより君だよ! その腕! スゴイよね?」
(オ! モウイイノカ??)
「え? 何の声?」
「あれ? 大臣のところにはグェール行ってないんですか?」
「グェール? もしかしてこの間のドラゴン? 僕のとこには来てないよ?」
(ソウダ! マケテナイカラナ!)
俺にも負けてないんじゃなかったっけ? でも、俺より普通に大臣の方が上手く戦ってたけどなぁ。トドメ刺したら勝ちみたいな感じなのか?
「あ、ハヤトに言われてきたんですけど、今日何で呼んだんですか?」
「もっと彼のことも気になるけど……まぁいいか! 実は昨日グェールくん? の鱗を取りに行ってきたんだよ」
「へぇ。一人じゃないですよね?」
「いや、一人で。だって危ないじゃない、爆発するんだよ?」
そうか。そりゃそうだ。運んでる途中にいきなり爆発したら大変なことになるしな。そうなると大臣はどうやって運んできたんだろ? まぁ、なんでもいいか!
「それをさ、いつもみたいに粉にしたら良いものが出来上がったんだよ」
「え? どんなのですか?」
「見てて? あ、離れてよ?」
大臣が袋の中に優しく手を突っ込んで粉を取り出す。オレンジに輝いていたそれを持って草が生えた庭の方へと歩いていった。
見るために窓に近づき、大臣の動きを観察する。大臣が下から上へと腕を振ると、キラキラのオレンジが空中で綺麗に光った。
全ての粉が地面に落ちた後、屈んで石を拾い、その辺りへと投げつけた。すると、ドカーン! と窓が振動するほどの爆発が起きた!……そりゃそうなるわ!
(スゲェ!! スゴ!)
「大臣!? 大丈夫ですか!?」
「面白くない!? あれだけの粉でこんなに爆発したんだよ!?」
「いや! ここでやんないでくださいよ! 外でやりましょう?」
「何回か外でやってるから大丈夫!」
大丈夫なのか? まぁ、大臣がそういうなら大丈夫なんだろうな……うん。
(オマエヤルジャン! スゲェ!!)
「そうだよね? 面白いよね!?」
(スゲェ! スゲェ!)
意外とこの二人合うのかもな。いや、大臣って意外と誰とでも仲良くなれる人? いうて大臣だしな……
「……こんなのどうやって粉にしたんですか? 無理じゃないですか?」
「これ? スティーに頼んだらやってくれた」
「やっぱスゴイですね。あ、そういえばスティーは?」
『いるぞ。お前ら頑張ったな』
「……どうも。スティーも良い感じで……助かったよ」
(ア! オマエ! オマエニマケタンダヨ!)
『なんだ、また増えたのか?……確かに魔力も増えてんなぁ……』
「スティーにも聞こえてるんだね」
『ぼんやりとな。ちゃんとは分かんねーぞ』
「そうだ! 鱗は前に行った倉庫の奥の方にあるからさ。欲しかったら言ってね?」
「親方が起きてからですかね。まぁ、後でまた来ます」
「お疲れ様。またね?」
「じゃあまた」
大臣の用事ってあの粉だったのか。確かにスゴイけど、危ないんじゃないかな……しかも割と無造作に置かれてた、もしこぼしたらあそこはもうお終いだ。
でも親方も多分、鱗を貰うんだろうなぁ。そうなったら他人事じゃいられないぞ。爆発しないように気をつけないと……
もう起きてるかな。外出たついでに親方の様子も見てみるか……
親方の家に久々に入ってみると先客が居た。アイラだ。
「アイラ? 親方起きてる?」
「まだ寝てます。なんの用ですか?」
「用っていうか……まぁ、様子見に来ただけだよ」
「そうですか……あの、ミリアさまのことについてなんですけど……良いですか?」
「え? うん。いいけど」
珍しくアイラから話題を持ちかけられた。何を聞かれるんだろう。
「……ミリアさまの安全を今! 一番側で守れるのはアナタなんです」
「まぁそうかもね」
「こんなことを頼むなんておかしいですけど、もしミリアさまが危ない目にあった時には命がけでアナタが助けなさいよ」
「命がけかぁ……でも助けられるなら助けるよ。てか、スティーがいるから大丈夫だよ。俺よりスティーに頼んだら?」
「とにかくよろしくお願いしますね?」
「分かった。多分大丈夫だけどね」
本当に大丈夫だと思う。前に会った喋るドラゴンがそんなこと言ってたし。
「アイラも親方の力になれてるよ。てか、親方にとっては俺よりも必要な存在だと思う」
「……そうですかね……いや、そんなことないですよ。きっと……」
「じゃあ俺、帰るから。親方のことは任せるからさ」
「はい! さようなら……また会いましょうね」
「う、うん。じゃあね」
急に距離が縮まった感じがしてびっくりしたぁ。眠り過ぎてて心配になってるのかもな。
まだ疲れが身体のどこかに残っていたのか、家に帰ると眠気がやってきたので、寝ることにした。
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