47 オレンジのドカーン
「うわぁ、前よりデカイ……」
輝くオレンジ色の鱗が洞窟内を明るく照らすとともに、この広けた場所を怪しい雰囲気にしている。
目の前にはこの前よりも大きなドラゴンが居た。おそらく20から25メートルぐらいはある。しかも今度は前と違って二本の脚で立っている。
二つの腕には水かきみたいな羽が生えていて、飛べるようになってるみたいだが、ここからどこに飛んでいくのだろうか? それとも別の使い道があるとか?
顔の周りにエリマキトカゲのようなヒラヒラが付いている。それと同じくらい特徴的なのは目だ。
大きな白目の中で小さな黒目が上下左右、自由に動き回っている。しかも右の目と左の目でその動きが違う。おそらく広い視野を持っているんだろうと予想してみた。
「……まだ気付かれてないみたいだね……」
「……綺麗な鱗だな」
「……とりあえず何しましょうか?」
(何をヒソヒソ話してるんだ。どうせ戦うんだろ)
確かにな。もう観察も済んだし、先制攻撃とかしてみようかな。
「じゃあ、大臣と親方は弓よろしくお願いします……俺たちは気付かれないギリギリまで近付いとくんで……」
「……私も?」
「無理そう?」
「いや……何とかなりそう!」
ちょっと変なアヤカと一緒に、コッソリとドラゴンへ近づいていく。ここは天井も高いし、広い。バレないようにゆっくり進めばギリギリまで近づけるはずだ。
ちょっとした窪みに隠れながら、独り言のように呟く。
「合図とか決めてなかったなぁ……いつ飛び出したら良いんだろ」
『準備できたか? あっちは準備できたみたいだぞ?』
「お、じゃあ、行っていいのかな」
「行こう!!」
アヤカが飛び出してしまった。それをきっかけに俺も飛び出す。
弓矢がドラゴンに放たれてるのが、ビュンという音で分かった。もう後には戻れない。
ギョァァァァァア!!
流石に向こうも気付いたみたいだ。奇妙な鳴き声が洞窟の中を何回も反響する。耳がおかしくなりそうだぁ!
あと少しで大剣が届くぐらいに近づいた時、ドラゴンがその場をとんでもない跳躍力でジャンプする。天井にブチ当たったのかドン!! と大きな音がした。
「踏まれる!」
落下地点に俺たちがいる。このままじゃ、巨大な肉体に踏み潰されて死亡だ。
何とかしないと……そんなことを考えている間にもドラゴンは地面に落下してきている。
身構えていたが、着地と同時にドラゴンの周りでドガーーン!! と爆発が起こった! なぜ!?
「うわぁ!」
爆発の衝撃で、今度は俺たち二人が天井に叩きつけられる。鎧があっても痛いものは痛い! 呼吸が数秒間止まった! もー、どうなってるんだ!!
(落ち着け、まだ生きてるだろ)
頭の中から聞こえる声が俺を少しだけ冷静にした。ありがとう! ドラゴン!
辺りを見るとさっきの振動のせいか、天井から岩が落ちている。親方と大臣は大丈夫か……
俺が落下していると、近くでアヤカが両手両足をバタバタと振ってパニックになっていた。どうやって助ければいいんだ……
空を飛ぶ……空を飛ぶ……さっきスティーが俺たちを洞窟の入り口に運んだ時みたいに、俺たちが空を飛ぶイメージを強く想像する……
ピタッ!っとアヤカが空中で留まる。俺は落下してる。あー、もう終わったわ。
ピョーン! 地面がトランポリンのように深く沈んだ後、俺はまた空中に飛ばされた……吐きそうになってきた……なにこれ?
『大丈夫だ。俺が守ってやる』
「スティーーー!!」
はぁ! 助かったぁ!
スティーの魔法でフワフワと着地した。地に足がついてる感覚がなんだか懐かしい……
『俺が倒そうか?』
「…………もうちょっとだけやらして?」
「ははは!! そうだよねぇ!」
いつのまにか背後にいた大臣に聞かれてしまった。出来れば聞かれない方が……ってそんなことどうでもいいか。
「あ! アヤカは? 大丈夫でしたか?」
『あぁ、アイツは空中で気を失ってたよ。今は安全な場所に避難させてる』
「あ、ありがとう。それじゃ、前と同じ三人ですかね?」
「そうだ。私とお前とアイツと三人だ」
今、思うことじゃないけど、親方って人のこと名前で呼ばないよな……何でこんなこと今考えてんだ。
『絶対に死なないから安心して殺してこい』
「……俺、前に行くんで、援護お願いします!」
「うん! 任せといてよ!」
改めて見るとクソデカイな。二足歩行してる分大きく見える。
大剣を両手でしっかり握り直し、呼吸を深く深く吸って吐く。落ち着け……落ち着かないと魔法が使えない……
(我の力を使って負けるなどあり得ないぞ)
「……でも、アンタは俺たちに負けただろ?」
(それだけ余裕があれば問題ない。楽しみにしてるぞ?)
変なやつばっかりだ……楽しみってなんだよ! 普通にスティーにやって貰えばいいじゃん! どうせ瞬殺なんでしょ? スティーが本気出したらさ!……何やってんだろうな……冷静になりすぎた頭でドラゴンと向き直る。何故かこちらを見失ってるけど、これも魔法か?
グルグルと黒目が動いて気持ち悪い。あれだけ視野が広いなら変な小細工するよりも正面から突破した方が良さそうだ。さっきはそれで失敗したけど……
「それじゃ、行きます! 今度こそ絶対、殺してみせます!!」
「ははは!! あっははは!! いいねーー!!」
「……お前ら大丈夫か?」
真っ直ぐドラゴンに向かう。オレンジ色の照明が俺たちをちょっとおかしくしてる。
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