44 どこにあるんだ?
遂に洞窟探検に出かける日がきた。そして今日のメンバーは四人、俺と親方と大臣とアヤカだ。
親方が戦闘力で選んだみたいだけど、アヤカもそんなに強くなってたんだね。
「ミリアさま! お気を付けて!」
「大丈夫だ! 安心しろ」
「アキラくんも気を付けてね」
「じゃあ行ってくるわ」
アイラとハヤトが見送りに来てくれた。
門の外に出ると親方の案内で目的の洞窟へと向かう。俺は一度行ったことがあるので見慣れた道を歩くことになった。
進んでいくと前に入った洞窟が見えた。やっと目的地に着いたみたいだな。
「ここですね。入りましょうか」
『懐かしいなぁ』
「ん? ここじゃないよ? もっと奥の方にあるはずだけど……もしかして間違えてる? ははは!」
あ、そうなんだ……単に勘違いしてるだけだった……そりゃドラゴンなんかいないわけだ。
その洞窟を無視してさらに森の中を進む。するとスティーから声が上がった。多分ドラゴンの気配が見えたんだろうな。
『お? アレか?』
「魔力が見えたか? よし。そこに向かうとしよう」
目的の山をやっと見つけた。後は洞窟の入り口を見つけるだけのはずだが、中々見つからない。あまりに見つからないので二手に分かれた。アヤカと俺のチームと大臣と親方のチームに分かれた。
「アキラも魔法使えるんだよね?」
「うん。結局使えるようになったよ」
「覚えるのは遅かったけど、上手いらしいじゃん。ハヤトが言ってたよ」
「なんでだろうね。とりあえず出来てよかったけどさ」
「……見つからん!!」
世間話をしていると遠くの方から親方の困った声が聞こえてくる。向こうでもまだ見つかってないみたいだな。
「無いね……」
「……うん。ないみたいだね」
ない、多分一時間ぐらいは探していたがどこにもない。本当にこの山にあるのかな。一見単なる普通の山にしか見えないんだけどな……
そんなことを考えていたら遠くの方から光の玉が浮かんでこちらに飛んできた。スティーかな?
『おーい! 見つかったぞー』
「あ、あったんだね。じゃあ行こうか?」
「良かったぁ」
アヤカも疲れてるみたいだ。このままドラゴンと戦うのかな? ちょっと厳しいかも……俺も疲れたし……
スティーに着いていくと親方と大臣の二人が話し合っていた。アレ? どこにも洞窟の入り口ないけど?
「ありましたか?」
「あぁ、あった」
「……でもどこにあるんですか?」
「うん。あの、火山あるでしょ? あそこからここまで繋がってるみたいなんだよねー」
「え? ていうと?」
『ドラゴンはこの山ん中にいるんだけどな。そこまでの道は火山からしかないみたいだ』
それってどういうこと? 火山に近づくわけにもいかないし、ドラゴンはなかったことにすんのかな。
「じゃあ、帰ります? 無理そうですしね」
「いや、スティーくんが熱くないように魔法を使ってくれるみたいなんだよ」
『任せとけ』
「……それじゃ、今から火山に登るってことですか?」
「ははは! そうなるね!」
別に今日じゃなくてもいいじゃない……うーん……そうなるとアレかな……アレだな。
「……ちょっと俺、死ぬほど疲れてるんですけど、帰りません?」
「そうか? まぁ、なら別の日にしようか」
「えー、元気そうじゃーん。行かないの?」
「明日とかでいいんで……ダメですかね?」
「明日僕仕事だよ?……じゃあ二人で行く?」
大臣が親方に向かって話しかけている。二人では危なくないか?
「お前と一緒に行ってなんになるんだ。今日は帰ろう。また次の機会に来ればいい」
「ありがとうございます」
「まぁ、良いか。別に休みなんて作ればいいしね」
良かったぁ。このまま二人で行くのかと思った。スティーもいるし、もしかすると二人で先に倒しちゃってたかもしれない。流石に俺もちょっと見るだけ見たい……軽く戦いたいし。
俺は頑張れば行けそうだけどアヤカがヤバそうだからな、上手いこと言って良かった。まぁ、俺も疲れてるけどね。
「あのさ。アキラ?」
「え? なに?」
「なんでもない……今度一緒に遊ばない? 私の家も出来たし」
「そうなの? 知らなかった……」
「知らなかったの?」
ここに来てから眠るのが早くなっちゃって遊ぶ機会も減った。ハヤトがご飯屋で意外と夜まで働いてるから時間が合わないんだよなぁ。それに休日も図書館に行っちゃってるからな。今度三人で遊びたい。
街に帰ってきた時にはもう夕方だった。親方と大臣は今から次の冒険のことについて色々話している。俺とアヤカは疲れていたので、二人で先に帰ることにした。
「今日疲れたね」
「そうだね」
うわぁ、二人で話すの久々すぎてよく分からん。元々ちゃんと二人で話したことなくね? アヤカと話すときは大体ハヤトが居たからなんか話すのがムズイ。
「洞窟探検終わったら三人で遊ぼうよ。うん」
「そうだね。ハヤトも誘ってね?」
どうせこの世界に住むことになるんだったら、楽しんだ方がいいだろう。
考えてみればいつ死ぬか分かんないんだし……うわぁ、考えてみたらいつ死ぬか分からないのかぁ……やっぱりドラゴン退治やめようかな。お金あるから転職したい。でも、職業系のアレコレって大臣がやってるんでしょ? 辞めさせてくれなさそうだな。
「じゃあまたね? 今日はありがとう」
「あ、あぁ、じゃ、次も頑張ろうね」
変なこと考えてたら変な対応になってしまった。とにかく今はできることをやるだけだな。
よろしければ下の☆マークから評価をお願いします!
読んでいただきありがとうございました!!