異世界人10
「見てくれ! 水が浮いてるぞ!」
「すごいですね」
空中に浮いた水を嬉しそうに報告するフータ。俺は興味がなくなってきていたので、適当に相槌を打つ。
ずっとこの調子だ。どうも街では魔法を使いづらいみたいでなんでもないことでもここでやる。水を浮かせるぐらいのことなら家でやってくれ。
『上達してきたよな! やっぱ、向いてるみたいだ!』
「へぇ」
『お前な! お前にとってはあんなのどうでもいいかもしれないけど、あれでも結構凄いんだぞ!』
「確かにねぇ……」
近くを流れている滝の水で空中にドラゴンを描く。俺は絵が下手くそなのでキモいドラゴンになった。なんか目がデカくて輪郭がグニャグニャ曲がってるキモいやつ……よく見たら足が7本も生えてるし。
「君はホントに才能があるんだなぁ……」
「ドラゴンばっか食べてるんで……」
スティーによるとフータの魔力はドラゴンの肉を食べたことによって湧き上がってきたらしい。そうなるとドラゴンが主食の俺は当然魔力がフータよりも多い。
「私はドラゴンを食べると倒れるように眠ってしまうんだよ。君はそんなことないのかい?」
「最初はそうでしたよ……でも慣れたらマシになりました」
「私もドラゴンを主食にしたいのだが……みんなが心配してしょうがないのだ」
「そうですか」
はぁー……お腹減ったなぁ。なんで無駄にドラゴンなんか描いちゃったんだろ。
「ドラゴンをアレしてきますけど食べます?」
「一口だけ頂いてもいいか?……いつも貰うばかりで申し訳ない。今度は私から何か渡したいなぁ……」
『お! 楽しみにしてるよ!』
「……ドラゴン来ないかな」
ドラゴンを待って空を眺めているとしばらく経った後に偶然そこを群れが通りかかった。すかさず巨大な火の玉を群れに向かって放り込み、全匹を火で殺す。
落下してくるそれを引き寄せて、鱗を魔法でバキバキに剥ぎ、肉を口に運ぶ。
フータは生だと腹を壊すので炙ってから渡す。
「ホントに美味しい!……ドラゴンを食べるようになってから普段の食事が寂しくてなぁ……」
『フータも一緒に暮らそうぜ! どうせ街も退屈なんだろ?』
「是非その誘いに乗りたいところだが街ではみんな私を必要としてくれているんだ。済まない」
良いように使われてるんじゃないの? フータ良い奴だしさ。
「それでは私は眠くなる前に街に帰るよ。今日はありがとう!」
「それじゃまた」
『またなぁ!』
俺も寝ようかな。腹一杯食べたら眠たくなってきたよ。
『お前! ちょっと冷たくないか!?』
「えー。なにが?」
『もうちょっと喜んだりしてもいいだろ!』
「……だって街じゃ魔法使わないんでしょ? だったらここで何しようが意味なくない?」
『ずっと街で生活するわけじゃないだろ? それに、もしもって時に役立つかもしれないだろ!』
「眠いから寝るよ」
ガミガミとエフェクトがかかったような声で俺にとやかく言ってくるやつを無視して寝た。
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