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5 王とのお話

 

 セントラルの門が開くと都会にいた時のような、なんだか懐かしい喧騒(けんそう)が聞こえてきた。


「ほんとにすごい活気だなぁ。こんなに人が」

「ここは入り口なので静かな方ですよ! もっと奥に行けばもっと沢山の人で賑わってる場所もあります!」


 雑踏(ざっとう)の中を歩きながら会話を続ける。


「カエデさんはよくこの街には来るの?」

「よくってほどでもないですけど、国王様から招待されてこの街に来ることがたまにあって」

「え!? 国王様に招待されるってすごいことじゃないの?」

「いいえ、そんなことないです。国王様はたまに地方の人を呼んでそこでの生活の不満とか、ここはこうした方がいいんじゃないかって意見をみんなから聞いてくれるんです!」

「へぇ、凄いんだね」

「今の大きな倉庫に変わったのも、意見を聞いてくれたからなんですか」


 文句の付けようがないような王様じゃないか。マジで偉い人だって分かって、なおさら緊張してきた。


「あっ!もしかしてあれが王様の城!?」


 そんな話をしている目の前にゲームか!ってなるくらいのお手本のような城が出てきた。石造り、とんがった屋根、国旗みたいな旗。


 城の周りは堀のようになっており、水が流れていた。その水の上には跳ね橋のような(くさり)のついた橋が下ろされている。その上を渡って多くの人が城内に入って行く姿が見える。


「今日はもう遅いので、帰りは明日になると思います。宿はもう取ってあるので、安心してくださいね?」

「あ、いつのまに……」

「少し観光も出来ると思います! 私に案内させてください!」

「ホント? ありがとう」

「それじゃあ、行きましょうか?」

「はい、あぁほんとに緊張してきた……」

 

 橋を渡り城に入るとなんだか慌ただしい異様な空気になっていて城の兵があちこちを走り回っていた。


「いつもこんなに慌ただしくしてるの?」

「いや……いつもはもっと……どっしりというか、私もすこし気が引き締まるような感じなんですけどどうしたんだろう?」


 どうやら城に何かが起こったらしい。こんな時に俺の相手なんかしていられるだろうか。まぁ彼女がいうようないい人であることを期待しておこう。


「ここが国王様の間だ、失礼のないように気をつけるんだぞ!」


 扉の前の兵士が威勢(いせい)良く国王の間だということを告げる。

 国王の間の扉が開くと思ったよりも狭い部屋に威厳(いげん)のある人が立って待ってくれていた。


「よく来たねぇ、そこに座りなさい」


 言われた通りに座る。王様は立ったままだ。

 王様は思ったよりも若かった。


「城内がうるさいだろうが気にせずにゆっくりしていってくれ。君の話は小耳に挟んでいるよ、異世界から来たんだって? 大変そうじゃないか、疲れただろう」


 どこから聞いたのか分からないが異世界から来たことを知っていた。


「たしかにすこし疲れましたがこの世界の方々が優しくしてくださっているのでとても楽しく、この世界に馴染んで生活できています」

「それはそれは良かった。この方の世話をしているのは君かね」


 となりのカエデに(たず)ねる。


「はい! 私だけの力ではないですが……」

「君には後で褒美(ほうび)をやろう。さて、異世界の話をぜひ聞かせて欲しいのだけど何か面白い話はあるかい?」


 いきなり面白い話と言われてしまい困ったが悩んだ末にこの世界にはないであろうゲームの話をしてみた。


「私たちの世界では自分が物語の主人公になり、いろいろな体験をすることができるゲームと言うものがありました。」

「それはどんな風にできるんだ?」

「はい、それはですね……」


 ゲームの話をしようとしたがよくよく考えたら、テレビやらコントローラーやらをどうやって説明すればいいのかわからなかった。なぜなら俺もなんで動くのかよく分かってないからだ。


「うーんなんと言ったらいいのか……」


 困った挙句、死ぬ前にプレイしたアクションrpgの話を始めた。


「例えばですけどたくさんある武器の中から一つを選んでその武器でドラゴンを倒していくと言うようなゲームがありました」


 というと王様が目を輝かせ始めた。


「やはり君達の世界にもドラゴンはいるんだな! どうやって君達はドラゴンを倒しているのだ! ぜひ教えてくれないか?」


 どうやら何かを勘違いさせてしまったようた。

なんだかややこしいことになってしまった。


「いや、ドラゴンは物語の中だけの存在だとみんなが思っています。この世界に来てドラゴンに初めて会ったときはずいぶんと驚かされました」


 まぁあのときは襲って来たから驚いたのもあるけど。


「君達の世界はドラゴンがいない平和な世界なのだな……それは羨ましいなぁ」


 王様はドラゴンがいない平和な世界と言っていたがずっと平和なわけではなかった。

 人と人の争いがたとえドラゴンがいなくても幾度(いくど)となく行われて来た歴史が俺の世界にはあった。


 この世界では人間同士のいざこざはないのだろうか?


「すみません王様お伺いしたいことがありまして」

「なんだ、好きなことを申してみろ」

「この世界では人間同士で争うことはあるのでしょうか?」

「それは……どんな仲のいい関係でも喧嘩をすることもあるし、時には殴り合いになることだってあるさ」

「いやもっと大規模な争いというかなんというか……大勢の人が殺し合いの喧嘩をするようなことはないんですか?」

「それはないなぁ。しかし大勢の人間がいたら誰かが止めに入ることになるだろう? そんな大勢の喧嘩なんて今まで聞いたことがない!」


 なんだかすごくショックを受けた。そうなると国どうしの揉め事のないのだろうか?


「この世界にほかの国はいくつあるんですか?」

「あぁそれは正確には判らない。ドラゴンがいるせいでほかの国の情報がほとんど入ってこないんだ。迷ってこの国にやって来る人が時々いるが、それぐらいしか私たちにはほかの国のことを知る機会がない」


 王様が話を続ける。


「私はもっとこの世界のことを知りたいのだ! いや王として知らなければならない! そのためには私たちの邪魔をするドラゴンは必ず、倒さなければならないのだ! 私たちにとってドラゴンは長年の宿敵(しゅくてき)だ! 必ず(ほろ)ぼす! それがこの私の、いや……この国に生まれたものの宿命(しゅくめい)である!」


 国王様は熱く語った後に落ち着いて俺の目を見て続ける。


「だが君はこの世界の人間ではない。君にドラゴン退治をしろなどとは私は言わないよ。しかし! 君も元の世界に今すぐ戻ることは難しいであろう? そこでだ! 君に仕事を与えたい! もし君にやる気があるのであればこの街で働いてみないか?」


 どうやら仕事を探してくれるらしい。このまま彼女たちに世話になるのも気が引けるので仕事を受けることにした。


「はい! 私に出来ることであればよろしくお願いします!」

「良い返事をありがとう! それでは部屋を出て右にまっすぐ行った所に大臣の部屋があるのでそこで話を聞いてみてくれ。それと付き添いの君には褒美とすこしの話があるから残っていってくれたまえ」

「「はい!」」


  彼女が僕に話しかけて来た。


「それではまた後で会いましょう! 頑張ってくださいね!」

「あぁまた後で!」


 俺は大臣の部屋を探そうと王の間を出た。

 相変わらず城内は慌ただしかった。










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