40 二人で頑張ろう……
ある日、アヤカとハヤトとこの前の喫茶店みたいな場所で待ち合わせをすることになった。魔法の話をするためだ。
アヤカとハヤトは魔法使えるようになったかな? 二人とも俺より先に習得してそうでなんか怖い……みんな! 俺より進まないでくれ!
アヤカはアイラの所で働いたりしてるから女神像とも長い時間付き合ってるだろうし、ハヤトは本をよく読んでるからなんか出来そう。なにそれ?
みんな! 置いてかないでくれ! そんな気持ちを抱えつつ、二人に会いに行ってみた。
「二人とも魔法使える?」
「私はちょっとだけね。でも、ハヤトはスゴイよ?」
「いや、アヤちゃんの方がスゴイよ。僕には出来ないことを沢山出来るし」
出来た上でその上手さを競うようになってる……俺は遠くに置いて行かれてるみたいだ……悲しい。
紅茶を飲みながら外を眺める。まだお昼前だろうか?
「アキラくんスゴそうだよね。どんな魔法使える?」
「え? あ、いや?」
「ん? アンタもしかして……」
「いや! あの……」
俺が黙ってしまうとみんなも黙る。どうしたらいいんだ! 俺も魔法使いたいヨ!
「……大丈夫だよ! 僕たちも教えるからさ。ね?」
「そうね。私たちも数日で出来るようになったんだし、アキラもすぐだよ。きっと」
「そうかな……」
優しさが逆に辛い。俺ってホントに魔法使えるようになるのかな?
「コツってある?」
「コツかぁ。でもホントにイメージするだけっていうか……想像するとその、思った通りになるんだよ」
「俺の想像力が足りないのかな……」
想像力ってどうやったら増やせるの? 瞑想でも初めてみようかな……でもこの二人が魔法使えたってことは他に使えてない人って俺とマスターと親方ぐらいなのかな?
ちょっと怖いけど、マスターのところにも行ってみようかな……いやハヤトに聞けばいいんじゃん。
「ハヤト? マスターってもう魔法使える?」
「え、いや、うん……もう使えるようになったみたいだよ」
「えーー……そうなの?」
だとしたら俺と親方だけ? なんで?
こうしちゃいられない、親方とどうにかして魔法を使えるように修行をしないと……何すればいいのか分からないけど……
「ははは……ありがとね……俺、親方のところ行ってくるから……」
「アキラ? あんまり落ち込まないでよ?」
「ははは……大丈夫だよ……」
このままずっと魔法が使えなかったらどうしよ……やっぱり戦力外だからドラゴン退治にも行けなくなるかな……
「ただいま……親方?」
親方がテーブルの上をジッと眺めている……あぁ、もしかして、親方もまだ魔法を……
「親方……」
「……お前か……どうした?……」
お通夜みたいな空気になってしまった。お通夜行ったことないけど……いや、あるか? おじいちゃんが亡くなった時に行った記憶があるような、ないような……って! そんなことどうでもいいんじゃ!!
「親方……俺、魔法が……」
「言うな! それ以上は言わなくていい!」
親方は俺の側に近寄り、俺をギュッと抱きしめてきた……あぁ、なんか泣きそうになってきたよ……
「…………ちょっと、気晴らしにドラゴン倒してきていいですか?」
「私も着いていくよ……歩きたい気分なんだ」
二人で輝く鎧を身に付けて外に出る。俺は、剣の道を進むしかないのかもしれません……
「あ、そう言えば……」
「ん? どうした?」
「あの、妖精の子いるじゃないですか? あの子のところ行ってみるのどうですかね?」
「あぁ、確か魔力の流れが見えるんだよな……」
「はい。なんか前に、この鎧に引っ張られてる? とかなんか言われたの思い出して……」
「鎧? どうしてだ?」
「分かんないです……ごめんなさい」
そうだ、確か鎧のせいでどうこうとか言われてたんだ……
「このまま行くか?」
「まぁ……ちょっと目立ちそうですけど、行ってみますか?」
「大臣のところだろ? 確か」
「はい」
また大臣の部屋に行くことになるとは……やっぱりスティー……俺のところに帰ってきてくれないかな……
「お! カッコいいね。なにそれ?」
「スティーは居るか? アイツに用があるんだ」
『ん? なんだ? なんの用だ?』
「実は……俺たち、まだ魔法が使えなくて……」
「それで魔力の流れを見てほしいんだ。お前なら出来るんだろ?」
『良いよ。じゃあ……ほら、窓の外』
窓の外の木の枝が一本光っている。これも魔法か?
『アレを折ってみろよ。じゃあ、まずは、えっと……名前なんだっけ?』
俺に光が付いたので俺に聞いてるのだろうか?
「アキラです」
『じゃあ、アキラからやってみてよ』
枝が折れるイメージを強く抱く……ぐぬぬぬぉぉ! 折れろ! オラ!!………………折れない!!! なんでだ!
『もうちょっと続けてくれ』
はぁ……行くぞ! 折るぞ!
窓の外の枝だけを視界に入れる。それだけが存在する世界に飛び込む。そしてそれが折れることだけを考える……
「…………」
「…………」
「…………」
耳からキーンと音が聞こえてきた。沈黙が痛い……
『よし。分かったぞ』
「え? 分かったんですか?」
『あぁ、前にも言った通り、その鎧に引っ張られてるんだ。しかも強烈に』
「でも、脱いでても出来ないんです!」
『もう混ざってるんだろうな。そのドラゴンとお前らの魔力が混濁してて、扱いづらくなってるんだ』
「では、どうすれば良いんだ?」
『分かんねーけど、でも、その鎧の魔力ごと操るしかねーだろうな』
どうやって? 魔力なんて俺たちには全く見えないのに、どうやって操れば良いんだ?
はぁ……せっかくカッコいい鎧なのに、呪われてる装備だったなんて……
今日は溜息ばかりだ。溜息っていうか、テンションが全体的に低目だったなぁ……
お疲れ様です。
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