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4 素晴らしい王様

 

 馬車での旅は、とても気持ちがいいものだった。


 荷台は布などが貼られておらず、風が直接顔に当たってきて清々しい気持ちになる。

 雨の日はどうするのだろう、と疑問に思ったが、今はそんなことを聞く気にもならないくらい心地よかった。なんか、張るんでしょ、布を。


「風が気持ちいいですね!」

「確かに……気持ち良いなぁ」


 そのまま世間話をする。


「これから会いに行く国王様って、どんな人なのか分かる?」


 王様に会うというのに、全く何にも知らないのは失礼かと思って聞いてみた。というか、まさか生きてる間に王様に会うことになるなんて考えた事もなかったなぁ。

 それもこれも事故にあったから、と思うと、憎きトラックにも感謝するべきかな……いや、そんなことないか、てか、俺が信号無視したのが悪いか……そもそも生きてる間じゃなかったわ。なんだこれ。


「とても素晴らしい人ですよ! 私がまだ小さくて、記憶も曖昧な頃の事なんですけど、竜巻が私たちの村を襲った後にわざわざ来てくれたんです! あの時はみんなが暗くなってしまって……」


 その時を思い出したのか、少し落ち込んだ様子を見せるカエデさん。村の建物はそこまで頑丈じゃなさそうだったし、実際に被害は大きかっただろうな。


「でも! 王様が来てからは一致団結して、頑張って今の村になったんですよ? 王様と握手した事を、なんとなく覚えていて……」


 そんなに立派な人に会いに行くとなると、なおさら緊張してきてしまった。少し気を紛らわせようと起き上がり、荷台からの景色を見渡してみるとチラッと動くものが見えた気がした。


「あれ? 今なんか動かなかった?」


 疑問に思っているとすぐに護衛の1人が叫んだ。


「おい!! ドラゴンが来てるぞ!」


 喋り終わる前に馬車は動きを止め、みんなは弓矢を取り出し狙いを定める。それから遅れ、俺も貰った棒をしっかりと握りしめた。これ使うのか?

 遠くだからよくわからないが、おそらく人の身長ほどある大きなドラゴンがいた。


 目測(もくそく)でここからは十数メートルほどあるが、護衛の一人が放った矢は吸い込まれるようにドラゴンに向かっていく。するとドラゴンの悲鳴のようなものが聞こえてきて、しっかりと目標に命中したことが分かった。


「当たるんだ……凄いな」


 そんなことを言っていると、さっきのドラゴンとは反対の方向からカエデさんに向かってドラゴンが飛んできた。


「ドラゴンが! 危ない!」


 俺は、握っていた棒をそのドラゴンの頭に向かって全力で振り下ろした。反動で手が痺れる。この感触が身体全体に伝わる。


 ギャァァァァオ!!


「どうだ!?」


 どうやら頭から外れていたようで、ドラゴンはまだ意識を保っていた。それは虫の息の状態で俺に噛み付いてくる。口が唾液を撒き散らしながら開いた。

 もうダメだと思い、二度目の死を覚悟して目を瞑ったその時、大きな矢が飛んできてドラゴンをどっかに吹き飛ばしていった。


「大丈夫でしたか!!」

「あぁ……本当に死ぬかと思った……助かったぁ……ありがとう……」

「こちらこそ! 助けていただいてありがとうこざいます!」


 いきなりのドラゴンの襲来(しゅうらい)には驚いたが誰も怪我などすることなく終わることができた。


「でも……すごいですよ! いきなりドラゴンに向かっていけるなんて、私が初めて戦ったときはもう気が動転して動けなくなってしまっていて……」


 ドラゴンと戦うことはやっぱり異常なことなのかもしれないと、実際に対峙(たいじ)してみて思った。それが生活のために仕方ないとはいえ、あんなに死を近くに感じたことはなかった。

 ん? いや、確かトラックに轢かれた時にめちゃくちゃ近くに死を感じたなぁ……死んだし。


「あ! もう見えてきましたよ!」


 セントラルが見えてきたようだ。彼女が指差す方を見てみると、それの大きさに驚いた。どうやら街自体がドラゴンの襲来から身を守る為の要塞になるみたいで、中々高い壁に覆われていた。


「君たち何のためにこの街に来たんだい?」


 これまでの事情を彼女が代わりに話してくれた。


「それは面白いなぁ……ぜひ国王様に色々な話を聞かせてやってくれるかい! でも入るための手続きはしてあるのか?」

「手続きって?」

「安心してください!」


 そういうと護衛の二人と馬車に乗っている人が、俺たちの代わりに門番と話を始めた。手続きとかもやってくれるのかな、護衛って。


「話が着いたから、もう大丈夫だ」

「「ありがとうございました!」」


 二人と馬乗りにお礼を言うと手を振って応えてくれた。さて、これでセントラルに入る事が出来るようになったのか。


「ようこそセントラルへ! 君たちを歓迎するよ!」


 どんな街なのかワクワクしながら、門が開かれるのをじっと見ていた。




















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