35 デッカイケン
鍛冶屋で親方の持ってきた剣は前よりも大きくなってきた。なぜ!?
「あれ? デカくなってますよね?」
「あぁ! 前よりも大きくした!」
「……どうしてですか? 俺、これ使えますかね?」
「前は軽すぎたんだ。だから中に芯を作って横幅を広げた。とりあえず持ってみろ!」
持ってみるとズッシリ重たい。だけど大剣の外側と内側とで二つに分かれているような感覚がある。それは外側が軽くて内側が重たい。
構造のイメージとしては中にこの前試しに使った長い剣が入っているような感じだ。
「へぇ。面白いですね」
「だろ!? 早速外に出てみよう!」
テンションが上がった親方と早く素振りをしたい俺は話もそこそこに外に出た。
門の近くで早速素振りを始める。それを門番が面白そうに見ていた。
「なるほどぉ……これ使いやすくなってますね!」
「そうだろ! 早く群れが見つかるといいのだが……」
しばらくするとまたもや蛇の群れがやってきた。前と同じ敵でありがたい。私の新たな相棒を試してみることにするか?……
まずは距離を取り、剣を盾のように使う。いきなりの攻撃に備えるためだ。
前とは違い、中々飛び付いてこないのでこちらから仕掛けることにした。
まず適当に群れに向かって大剣を横に振る。それだけで数匹倒せたので、その振った勢いを借りて上から振り下ろす。
前は軽すぎて音が鳴らなかったが今回はブォンブォンと音が鳴るので蛇達も怖がっている様子。俺としても強くなった気分がしていい感じだ。
「良いですね。楽しいです」
「前よりも良くなっただろ? それなら行けるな?」
「はい。てか、結局どこに行くんですか?」
「どうやら洞窟の中にいるらしいんだ。だからちょっとしたランタンも作ろうと思っている」
「それは……別の意味で大変そうですね。出来たら明るいとこで戦いたい」
「そこでだな。暗闇に慣れるためにこれからは夜にドラゴン狩りをしようと考えているんだが大丈夫か?」
「はい。それってみんなもですか?」
「そうだ。都合が合う奴はな」
その帰りに門番に話しかけられた。どうやらこの大剣が気になるらしい。
「おーい! アンタらまた面白いもん持ってきたなぁ!」
「ははは、そうですかね?」
「重たくないのか? よくそんなもんブンブン振れるなぁ」
「意外と軽いですよ。持ってみます?」
「いいのか? ちょっと俺も振ってみたかったんだよ!」
門番に渡し、広い場所に移動した。下手したら俺よりもいい感じに大剣を振っているのを見て少しションボリする。
「これいいなぁ。俺もこういうの使ってみたいわぁ」
「使います? 親方に言えば似たようなのは作れると思いますけど……」
「ははは……俺たちは弓じゃないと怒られちゃうんだよぉ〜。ホントに羨ましいわぁ」
「私が見張っておくから試してみたらどうだ?」
今まで黙っていた親方がここぞとばかりに声をかけてきた。そういえば親方の目的って剣をみんなに使わせることだったな。
「うーん……でも大丈夫か?……じゃあ、ちゃんと見張っててくれよ?」
親方の草の根運動はもうすでに始まっているみたいだ。こういうところから広めて行くのかな?
「おぉ! すげえー! 一発だな」
門番は向かってきたドラゴンを難なく斬り捨てる。その感覚が気に入ったみたいで、一匹だけじゃなく二匹三匹と次々斬り倒していく。
「流石にやりすぎたか?」
いつのまにか死体の山が出来上がっていた。それに満足したのか門番はもういいよ!って感じで大剣を俺たちに返した。
「これはお前らが倒したことにしてくれ。今日はありがとな!」
「いいんですか?」
「そもそも門番の仕事中にドラゴン倒すことがおかしいしな。それで色々聞かれたらこれ使ったってポロって言っちゃうかもしれんし」
「今度なんか奢りますよ。それでいいですね?」
「おう! それじゃそん時はよろしくな!」
門番と別れると大剣を持ったまま鍛冶屋に戻る。途中でジロジロと見られている感じがして少し嫌だったような。そうでもないような。
「問題点はあるか?」
「今のところ無いと思いましたね。これから使っていく中で見つかるかもしれませんけど……」
「とりあえずはそれで良いな? それじゃ明日は夜に戦闘を行うぞ。今から準備を始めておけ」
「はい」
準備ってなにすりゃ良いんだろ? 明日の夜に行動するわけだから……もしかして今日の夜は眠らずに起きていた方がいいのかな?
それで明日の昼に睡眠を取るみたいな。大丈夫かな? そういうの苦手なんだけど……
夜って言ってもそんな深夜に行くわけじゃ無いんだったらそんなことしなくても良さそうだけどどうなんだろ。後で聞いてみようかな。いや、でも今から話聞きにいくのなんかめんどくさいな。
いいや! 今日は普通に寝て、明日どうなるのかを確かめてみよう。つってもまだ寝るような時間じゃないから何かしらで時間潰さないといけないわけだけど……
今頃親方はいろんな人にこのことを話して回ってんのかな? 明日の夜にドラゴンと戦うよって。
俺も手伝ったりした方がいいか? まぁ、いいか。今日は疲れたし、休むことにしよう。親方が言ってた準備ってそれのことだと思えてきたし。
そんなわけで今日はじっくり休むことにした。
よし。明日は頑張ろう!
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