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28 山編③

 

 頂上近くに来るとドラゴンの大きな咆哮(ほうこう)が聴こえてきた。これは相当な大きさだろうな、大丈夫か?


「おぉー! 凄いねぇ。一服しとく?」

「そうですね……これって全部一気に吸っても大丈夫なんですか?」

「うん! でも、後で凄い疲れるよ?」

「まぁ……ちょっとどれぐらいのやつか見てから決めますか」

「そうだね」


 山の頂上の手前に大きな広場になっているところがあって、そこに水色に輝いたトカゲのドラゴンが居座っている。

 大きさはトラックを横にしたぐらいある。これはヤバイ。俺はトラックの恐怖を知ってる、煙とかどうこうじゃなくて勝てるわけがない。


「これ無理ですよ。帰りましょ?」

「えー? 無理かな? いけると思うけどなぁ」

「いや、マジで無理ですよ。見てみてくださいよ」

「おい、もう話し合いは済んだか?」

「おぉ! やっぱり君は戦いたいんだよね?」

「いいから構えろ。もし嫌なら帰ってもいいぞ」


 いつの間にこんな乗り気になってたんだ……てか、俺が帰るわけにはいかないでしょ。


「煙、吸いましょ? もう全部吸っちゃいましょう! ほら、親方も!」

「私もか?」

「ははは! 楽しくなってきたねぇ!」


 袋に入ってた粉を全部、地面にぶちまける。そこに火打ち石で火をつけ、煙を立たせる。

 うぅ、頭がおかしくなりそうだ。脳味噌と全身が二倍くらいに(ふく)れ上がった感覚もあるし、何より楽しくなってきちゃった。


「はははは!!! いいねぇ!! これはいいぞぉ!!」

「ふふふ!! おい! スューリ! 久しぶりにやるか!」

「うん!! 楽しくなってきたなぁ?」


 三人でドラゴンの前に飛び出る! 大臣はいきなり目に矢を放った。それは命中して、我々の先制攻撃は見事成功した!


「よっしゃ! 俺行きます!」


 ドラゴンが(ひる)んだ隙に俺が飛び込む。首の辺りの柔らかそうな部位に剣を突き刺した。剣を抜くと血が吹き出してきたがそれすらも楽しく思えてくる。


「ははは! 綺麗だなぁ! やっぱりドラゴンっていいねね!!!」


 そんなことをしているとトカゲの方も本気を出してくる。俺に向け(つば)を勢いよく飛ばした後、尻尾で俺たちをなぎ払おうとした。

 俺は唾をまともに食らってしまい倒れ込んだ。そのお陰で尻尾は当たらなかったが、親方達は大丈夫だろうか! てかクセェ!


「大丈夫ですか!!」

「問題ない!! 心配するな!」


 その言葉の次に矢が飛んでいく。親方と大臣が猛スピードで矢を射っている。

 立ち上がり、またトカゲに向かう。爪で引き裂こうとしてきたので、手のひらに剣を突き刺す。攻撃の勢いも借りたからか剣が巨大な手を貫通した。

「うぉ!」

 しかし、俺はそのまま投げ飛ばされてしまった。宙を舞いながら走馬灯が駆け巡りそうになったが、たまたま大きな木の枝にぶつかって崖を転がることはなかった。


「よし! 私もコイツを使う!」


 親方は腰に差していた剣を抜き取り、巨大なモンスターへと走って行く。

 大臣の矢は親方を正確に()ける。

 その矢で怯んだ一瞬に親方が剣を頭へと突き刺した。最後の抵抗でジタバタとトカゲが暴れる。それに吹き飛ばされないように彼女は剣を固く握っていた。

 大臣のダメ押しの一発が入り、ついに動かなくなってしまった。


「はぁーー! 倒したぁ!!」

「ははははは! すごーい! これは凄いねぇ!」

「ふふふ! やったぞ! やったんだ! ふふははは!!」


 みんな異常なテンションでこの勝利を喜んでいた。しかし……


〈おい……何をしてる……〉


 明らかに人間の声ではない太くて低い声が、広場に聴こえてきた。


「おぉぉ!!! ホントだったんだ!! ははは!」


 大臣がとうとうおかしくなってしまって、その場に転がって笑い出した。

 俺と親方も驚くよりは嬉しい気持ちが強かった。


〈おい! いい加減にしろ! 聴け!〉


 声の主が言葉を強め始めた。流石にちょっと俺たちも|神妙《しんみょう〉な感じに変わる。


〈このまま奥に進め。話をしようじゃないか、客人達〉


 てっきり巨大トカゲのドラゴンを殺したことを怒られるのかと思ってたら、友好なムードになってて驚いた。


「はははは!! ふーーーーー……それじゃ、行こうか」


 大臣が急に落ち着きを取り戻した。さっきまでの異常さはどこに消えてしまったんだ!


「君たちも深く息を吐いてみな? そうすると少しはマシになるよ」

「「ふーーーー……」」


 二人して息を深く吐く。楽しい気持ちが薄れてきて、全身に圧迫感(あっぱくかん)がやってきた。

 さっきまでの自分が信じられなくなる。あんなデカい化け物に飛びかかって行ったなんてどうかしてた……


「剣は拾っておけ。念のためにな」

「はい!」


 親方に言われた通り、手のひらに刺さった剣を引っこ抜く。血が全身に吹きかかり、前が見えなくなってしまった。


「大丈夫か? ほら、これで拭け」


 親方が自分のシャツの一部を破って俺に渡してくれた。それで顔や全身を拭きサッパリとさせた。


「ありがとうございました」

「話し合いかぁ! 楽しみだなぁ!」

「さて行くとするか」


 広場の先につながる道を目指して歩き始めた。

 改めてドラゴンを見るとその大きさに驚愕(きょうがく)してしまう。

 これを俺たちが倒したんだ。実感は湧きそうになかったが、喜びは全身から溢れ出してきた。


 三人で声の主のところへ歩みを進めた。









読んでいただきありがとうございました!


よろしければ下の☆マークからの評価等、よろしくお願いします!


ありがとうございました!

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