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254 エラとハヤト

 

 お城の中も当然だが全然違う。随分と変わってしまった。悲しい。そんな事を思い続けたせいで、セントラルに対する気持ちが薄れていくのを心にビシッバシッと感じながら、それでも友人には会いたいので色々な部屋を見て回った。

 前よりも広くなっているせいで中々見つからなかったが、お城の中の一つの部屋にエラさんがいた。というか、普通にハヤトもいた。


 うーん、早速話しかけちゃおうかな。でも、見つかったらもうこの状態を楽しむことも出来なく……まぁ、楽しんでるわけじゃないけどね? うん。

 とにかくなんとなくもったいないという気持ちが湧いてきたので、しばらく透明のままで二人の様子を眺めることにした。ごめん。


「ハヤト。ねぇ……」

「……今はダメだよ。エラ」

「アナタも休まないと」

「でも……ダメだって……」


 ……ダメだよ? えー! て、なんか二人がいきなりイチャイチャし始めたんですけど、エラさんがハヤトの身体に触れてる。肩に(つや)やかな動きで触れてる……怪しげな動きをしながら……呼び捨てだし……

 ダメとは言いつつも手に持っていた書類を机の上に置き始めたハヤト。正直、そんなハヤト見たくなかったです! はぁ、なんか変な気分だぁ。

 このままここにいるのはまずい……でも、二人に用があってここに来たのに、どうしてここから去ることが出来るのでしょうか?


(……あーあー、あ、ハヤト? 久しぶりにセントラルに帰ってきたんだけど?)

「え! ちょ、ちょっとごめん? アキラくんから」

「あぁ、アキラさんから」

(ど、どうしたの? アキラくん?)

(あのー、帰ってきました。ただいま)

(そ、それは良かった。おつかれさま)

(えっとー、めちゃくちゃ街の様子も変わったね。うん)

(あぁ、それはやっぱりみんなが魔法を使えるようになったから……て、今どこ? 迎えに行くよ)

(そう? なら城の前で待ってて良い?)

(うん……それじゃあ行くから……)


 ハヤトの動揺(どうよう)とテンションの急降下を感じながら、俺は約束した通りにお城の前に行くことにした。ごめん、しょうがないんだ……このままここでそんなの見てたら俺の精神がおかしくなってしまう。

 部屋を出る前に最後にチラッと振り返ると、ハヤトが、ハヤトからエラさんに向かってキスをしていたところを見て、頭がグワーンッとなった。いやぁ、ハヤトのそんなところ見たくないです! あんな小さかったハヤトが、俺が旅に出てる間にこんなに大人になってるなんて……対して俺はどうなんだろうと、考えるとちょっと目眩(めまい)すらしてきたので、思考を停止する。

 俺は、お城の、前に、行く。


 慣れない城の入り口に戻る作業をする途中の道のりで多少迷うことはあったが、エラさんとの別れをイチャイチャしながらしているハヤトよりは早く目的地に来ることが出来た。さて、半透明になった方が良いのかな? でも、それじゃあバレちゃうのか……

 まぁ、ハヤトが来るまではこのままで良いか。今はカエデさんの魔法で透明になっているから、どんだけ長い時間を透明でいたとしても疲れることがないし、みんなに見えてたら面倒だから、それで良いだろう。


 城の中から人影が見えるたびにハヤトじゃないか、ハヤトじゃないかとドキドキしていたが、全然ハヤト本人の影が見えない。どこに居るんだ? まだやってんのかあの二人は……


(あー、一応もう入り口にいるよ?)

(うそ!? だってここからじゃ見えないよ?)

(ん? どこに居るの? ハヤトももう着いてる?)

(監視カメラがあるんだけど、それには映ってないから……え、どこ?)

(監視カメラあんの!? えー、どんだけ進んでるんだ……)

(まぁ、仕組みは良く分からなかったけど、魔法でなんとかね)

(へぇ……てか、じゃあ、スクリーン、画面もあるんだよね?)

(あるよ。僕たちもなんで動いてるのかは分かってないけど、なんか出来た)

(そ、そうなんだ……)


 思ってた数倍街が発展してた。監視カメラが街に付いてるなんて想像もしてなかったわ。前のセントラルに戻ってるかどうかを心配してたのに、どうしてそんなハイテクな物があるんでしょうか? しかも動いてる理由が分からないって言ってるし。

 大丈夫なのか? 魔法をみんなが当たり前に使うようになった社会の果てはどうなってしまうんだ? もはや俺の理解の及ぶところにはないのかもしれない。うん。


(えっと、居るんだよね? 行くよ?)

(あ、うん。てか、多分今透明になってるから見えないのかも)

(透明に? なんで?)

(まぁ、一応追いやられた形ではあるじゃん。だからね)

(そんなの気にしなくて良いよ。だって、もうあの王様居ないからね)

(えー、そうなの?)

(本当の王族じゃなかったんだって。その証拠が見つかったりして)

(はぁ……え、じゃあ、今の王様は?)

(代わりになる人もいないし、とりあえずの間はフレイデル君ってことにはなってるけど、実際は僕たちで、みんなに教える前から魔法が使えた人たちでこの国を統治してる感じかな?)

(あ、そうなんですね……ハヤトもってこと?)

(うん)


 そうなんですねぇ。いつのまにかこんなに偉くなっちゃってねぇ、えー。幼馴染が国を統べてるんだけど? どうしてこんなことになってしまったんだ……

 混乱した頭が重たくて地面に座った。とりあえずハヤトが来るのを待つか。


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