241 頑張ったな
険悪なムードが流れる中、マーチから来た集団の内の後ろの方にいた人が口を開く。なにかを言おうとしているのでだった……
「あの、良いですか?」
「なんだ?」
「退龍鐘が無くなった理由って分かりますか?」
「さぁな。そもそも、鐘がいきなり無くなったのは、鐘じゃなくて他の要因が大きいだろう。少なくとも設計に不備あったというような問題じゃないのは確かだ」
「結局……分からないということか!」
「当たり前だろ。何を求めてここに来たんだ? それとも今更になって金を払う気になったか?」
「……」
「良かったな。危ない鐘が無くなったんだろ? それはお前らの望み通りじゃないか? ははは」
「……」
まぁ、魔法で壊したわけだから、物理的なアレコレのせいではないな。だから、メイにこの話を持って来たところで、解決しないのは初めから分かっていたのかもしれない。
喧嘩だけ売って、特に何にもないなんて……これは俺も頑張ることになりそうな予感……ただ、マジで何すんの? もう良く分かんないんだけど。
「もう帰るか?」
「帰らせていただく! もう二度と来るか!」
「おう。二度と来るな」
その言葉で話し合いは終わった。いやぁ……ここで殺人が起こらなかっただけ良いのかもしれないが、めちゃくちゃなことになったな。
実際、これからどうなるのかは分からないけど、二度と来ないって言ってるってことはもう戦争になることもない……それは楽観的かなぁ。
○○
特に目的もなく日々を過ごしていると、大臣から連絡が入る。最近はずっと外でボーッとしてるか、ドラゴンを狩っているかだったので、久々にイベントが起こって嬉しい。親方も全然帰ってこんし。
(どうしました?)
(ははは。賢者が思ったよりも見つからなくてね。だから目標を変えようと思ってるんだよ)
(そうなんですね。あの、その目標って?)
(正式な手続きを経て街に入れるようになる。そうすれば今よりも簡単になるでしょ?)
(あぁ……たしかに)
賢者さえ見つかればそれで大臣の故郷の場所って分かったのかもしれないけど、見つからないなら別の方法でってことか。
まぁ、大臣が見つけようとして見つからなかったってことは、多分だけど居ないんだろうな、もしくは賢者側が見つからないようにしているのか。
どちらにせよ、大臣が目標を変えるなんて珍しいな。
(君も来る? それともまだその国でやることがある?)
(うーん……俺も行きます。暇だったので)
(ははは! だと思った)
どういう意味だ。行くと思ってた、なら別に良いけど、暇だと思ってた、なら……別に良いか。
別に暇だと思われてても問題ないな。てか、俺がこんな感じなのってセントラルの時から変わらないし、普通に俺のイメージ通りだ。まぁ、どんなイメージを持たれてるのかなんて本当は分からないけど。
(それならあの街に来てよ。治安の悪いとこ)
(分かりました。ちなみに、親方は?)
(ミリはそこに残るってさ。君だけでも来れるよね? ははは)
(まぁ、時間はかかると思いますけど……)
(時間なんていくらでもあるからさ。ははは!)
たしかにな。時間ならいくらでもあるし、のんびり一人で大臣のところに行くことにしようかな。
はぁ……結局なんだったんだ、わざわざ要らない心配をして、別に聞く必要もない会議を聞いて、本当は興味もない鍛治を見て回って。
過ぎたことは考えても仕方ないが、少し虚無な時間じゃありゃせんでしたか? うん。
良く分からないし、とりあえず親方に挨拶したら、もう行こうかな。暇よりはやることがあった方が嬉しい、あり過ぎたら嫌だけど。
てか、どこに居るんだ親方は。どこに行けば良いんでしょーねー。なんか変だな……ずっと。
暇すぎると頭が変になるのかもしれないな。特に心配しなくて良いこともたくさん心配したし、要らない、やらなくて良いこともたくさんしたし。
親方にも連絡だけで良いかな。どうせ会ったところで何かが起こるわけではないんですしね。
(親方?)
(ん? 街に戻るのか?)
(あ、その通りです……分かってたんですね)
(お前のことだからな。戻るんだろ?)
(まぁ……はい)
(……お前の代わりに私が見ておくよ。この街が大丈夫かどうか、な)
(多分、大丈夫ですよ? 特に何にも起こらないと思います)
(ははは、それなら良い。それが分かっただけで十分だ。頑張ったな)
(……お、おやかた……)
うぅ……無駄だと思ってたけど、そういうわけでもなかったのかなぁ……親方……
いきなり褒められて嬉しいのと、照れくさいのと、嬉しいのとで、上手いこと返事が出来ずにいると、親方が「作業に戻っても良いか?」と言ってきた。
それをはいとか、もちろんとか言ってしまったから、会話は終わってしまった。はぁ……もうちょい話したい気持ちもある、が! もう十分な感じもする。
さて、それじゃあ頑張って帰るとするか。どんぐらい時間がかかるのかは分からないけど、まぁ、時間ならいくらでもあるらしいし、ゆっくりで良いから進もう。
全部取り越し苦労で終わった感じだし、実はここに来た意味も、未だに良く分かってないが、それでも頑張ったので良しとしよう!
目的地に向かって歩き始めた。




