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234 街の様子とカネの話

 

 夜空が綺麗だ……星はあちこちでキラキラ光ってるし、月はもうほとんど満月でいい形をしている。うん。

 やっぱり自然って良いなぁ……そうだよねー。


 さっきまで上空にあったはずの退龍鐘、今はどこにも無い。その欠片すらないし、跡形もない。

 とにかく何にもないのだ。それをしてしまった魔法、カエデさんと親方の二人の魔法の能力を少し恐ろしく思う気持ちと、マジでこんなことやってしまって大丈夫なのか? という気持ちで、呆然としていた。


「あの、ホントに大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないかもね? はは!」

「そうですよね……そりゃそうだ……」

「でも、なんとかなるよ。僕たちは絶対に大丈夫」

「えー、どういうこと……」


 さっきまで狂ったように笑っていた大臣が、(わず)かながら正気を取り戻していたので話しかけてみたが、どうやら割と自己中心的な考えからやったっぽい。まぁ、僕たちって言ってるし、自己ではないんだろうけどさ。やりすぎです。まだ何が起こってるのか理解することが出来てないし。


「これからどうするんですか?」

「街の様子でも見てみる? 面白そうだしさ?」

「面白そう……」

「ははは。君も気にはなるでしょ? 行こ」


 大臣がどうかは分からないが。俺が面白そうだとは思ってないと思いたいけど、気になるは気になる。だってそんなことありえないからな、普通に生活してて。

 なんか、近所の建物がいきなり無くなったみたいな感じだよな。普通に考えてトラブルというか、パニックにみんななっているだろう。

 それを面白がるわけではないけど、気にはなる。


「君たちは?」

「私たちも流石に疲れた。お前たちだけで行けば良い」

「イーリカは?」

「別に良いかな。だってそんなの見ても意味ないし」

「ははは! それならもう僕たちだけで行こうか?」

「あ、はい!」


 透明になって、空から街を見下ろしてみる。こうしてちゃんと見てみると、やっぱり照明が多いな。まぁ、ずっと暗いからそれがあるのが当たり前になるんだろうけど、夜中なのに別に問題がないくらい明るい。まぁ、当たり前なんだけど……


 街の人たちはみんな外に出てきている。驚いているというか、何が何だか分からないって様子だ。

 てか、この街ってこんなに人いたんだな。もしかしたら数百人は表に出てきているんじゃないかな? まぁ、そこそこデカイし、これぐらいはいるのかな?


(ははは。みんなやっぱり驚いてるね?)

(そりゃそうですよ)

(ほら? 王様まで外に出てきてるよ?)

(ん? どこですか?)

(ははは。別に見えないなら良いよ。戻ろっか?)

(もう良いんですか?)

(うん。思ったよりも面白くなかったからさ? ははは!)


 そう言って大臣は地上に戻っていった。思ったよりも面白くないって、そんなこと言わなくても良いじゃない……

 親方とカエデさんが寝ていたから、少し離れた場所に着地する。ここは確か前に村の人に会った場所だな? ちょうどいい広場だ。


「えっと……聞きたいことって沢山あるんですけど、大丈夫ですか?」

「良いよ? ははは!」

「なんで無くそうと思ったんですか?」

「それが一番早いからかな? だってアレが無くなれば全部解決でしょ? はは」

「そ、そんなことなくないですか?」

「それは君がアレについて全然知らないからだよ。結局アレは悪意があって作られたわけじゃないからね」

「えー……どういうことですか?」


 もう全部調べ終わった結果、鐘を無くしても良いという結論に至ったのかな?

 その事情あたりについても教えてくれないでしょうか? 教わってばっかりだけど……


「どうしてそうなったんですか?」

「簡単だよ。メイは自分達の鍛治の技術を信じていた。だから、あんな大きな鐘を空に作った。でも、ここの人たちはそれを信じきれなかった。分かる?」

「ん? それってどういう?」

「最初から説明するよ? まず、二つの国が交流があった時代、お互いの合意の上で退龍鐘という鐘を作ることが決まった。正確には一部の人たちの合意によって決まった」

「はい」

「この段階では食い違いがないよね? でも、これが一部の人だけではなく、広く一般に知られた時に、鐘の存在に対して危機感を覚える人たちがいた。その人たちが、国民のみんなに退龍鐘の危険性を訴え始めた」

「それは……」


 そこは知ってる気がするな。そんな感じのことを本で読んだ気がする。


「次第にマーチの中で、鐘を排除しようとする流れが出来たんだよ。でも、その時にはもうすでに工事は始まっていたし、止められなかった」

「へぇ……そうなんですね」

「だから鐘は出来た。でも、それの対価を払うことはしなかった。出来なかったんだろうね? ははは」

「なんで出来ないんですか?」

「それをすると国民に殺されちゃうからさ。はは!」

「そういうもんなんですね?」

「そういうもんだよ。殺されなかったとしても反乱はあるだろうね」


 つまりは、本来はお互いの同意があって作られた鐘なんだけど、国民的にはそれを受け入れることが出来なかったんだな。

 でも、鐘は出来ちゃった。それにも関わらず、ずっと納得しない国民。

 ギリギリみんなを納得させられるような方法が、お金を払わないことだった?って感じ?


 正直、オルトラさんが何を勘違いしてるのかは分からないけど、揉めてる理由みたいなのは分かったのかな?

 ……でも、鐘が無くなったところでその問題って解決しなくね? だって普通にメイが大損してるじゃん。せっかく作ってあげたのにお金は払われないし、跡形もなく無くなっちゃってるし。


 ……分からんな。結局、大臣の考えてることは大臣にしか分からん。

 とはいえ、分からないままではモヤモヤするので、その話も聞いてみることにした。うん。

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