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22 力不足

 

「すごい久々です! ミリアさま! 危なくなったら助けてくださいね?」


 今日は三人でちょっとしたドラゴン退治に出かけている。

 今度、この三人で遠くの山まで行くというのでその予行練習だ。


「俺も弓ですか? 剣とかの方がいいんじゃ?」

「使えるに()したことはない。それにドラゴンの動きを観察するのに適してるしな」


 背中に重たい弓矢を背負い(せおい)、全身に鎧を身につけているとそれだけでもう息が激しくなる。

 前よりは軽い鎧だが、この世界の人は基本的に軽装でドラゴンを狩るので俺は下手くそなくせにハンデがある状態で敵と戦うことになる。何故だ。


「……ドラゴン中々居ませんね。早いとこ終わらしちゃいたい」

「うーん、もっと奥の方まで行ってみるか。ついでに泉で体を休めるといい」

「ハイ! ミリアさまについていきます!」


 テクテクと森の中を歩いていると、ガサゴソと葉っぱの影から音が聞こえてきた。

 親方がそこに弓を向ける。飛び出してきたのは今まで見たことない四足歩行の2メートルほどのトカゲみたいなドラゴンだった。


「おい、来たぞ」

「やっとだ! てか、狙いづらい!」


 地面をチョコチョコと動き、こちらに近づいて来るトカゲは俺にはちょっと難しかった。


「ミリアさまーー! 任せてください!!」


 アイラちゃんが俺たちより少しだけ後ろの位置からトカゲを狙いさだめて矢を放つ! すると?


「おい! 危ないじゃないか!」

「……ひぇ!」


 矢は親方と俺の間をきれいにすり抜け、森の中へと消えていった。

 そんなことをしているあいだにもトカゲは近くに来ていた。親方はびっくりして弓の先が上を向いてしまっている。俺は弓で狙ったところで当たるはずがなかった。


 ふと、腰に下げていた木の棒を思い出した。それに手をかけると勢いよくトカゲの頭に振り下ろす!


「よし! 当たった!」


 その一瞬の隙に親方がトカゲの胴体に一本の線を入れた。矢が当たったのだ。

 腹から血を出してトカゲは動かなくなった。こうして一応、ドラゴンを倒すことは出来たが危なかったぁ。


「お疲れ様でした……もう帰りましょうか?」

「あぁ、私も久しぶりだったから油断してた……よし! それでは帰るとするか!」

「す、すみません! ミリアさま! お怪我はありませんか?」

「あぁ! 大丈夫だ。だか、そんなに下手になってるとは思わなかったがな」


 前はうまかったんだ。そんな風には全く見えなかったけど……


「これってどうやって持ち帰るんですか?」

「ん? 後で城の奴に言えば勝手に回収してくれるよ」


 あぁ、確かそうだったなぁ。でもこんなデカイのここに放り投げてていたのかな? まぁ良いならいいか。


 街に戻ると三人で少し話し合った。これから行くことになっている山についての話だ。


「うーん、我々三人だけだと危ないな。他に誰かいないだろうか?」

「ごめんなさい……力になれなくて……」

「気にするな! 私も無理を言って悪かったな」

「俺も弓は使えそうにないです。でも、剣も重たいし……どうしましょうか」

「うーむ……」


 みんなが黙り込んでしまった。気まずい。俺としてはその山に行くというのがどれぐらい無謀(むぼう)なことなのかが分からないので困ってしまう。


「山ってどれぐらいの山なんですか? 標高とかは?」

「そんなに高い山じゃないよ。しかし遠いんだ。それで回収班が来れなかったり、来たとしても報酬のほとんどが彼らのものになってしまう」

「じゃあ、なんでそんなとこまで行くんですか? この(あたり)でドラゴン倒しましょうよ」

「私は鉱石(こうせき)、アイラは動物の皮やツタなどそこにしかないもので欲しいものがたくさんあるんだよ。お前もいつまでも重たい鎧は嫌だろう?」

「あ、俺のためだったんですか?」


 そっかぁ……じゃあ俺が頑張んないとなぁ。身体鍛えたりとかしないとダメかな?


「お前だけのためじゃないぞ? 私の目的のためでもある。(なん)にせよ今はまだその時じゃないみたいだな」


 それから三人で前と同じ店でご飯を食べた。俺は前と同じように硬い肉を噛み切ることが出来ずに二人が居なくなってからもずっと顎を動かしていた。


「お前も貧弱だなぁ! もっと筋肉つけた方がいいぞ?」

「……マスターって何か筋トレとかしてるんですか?」

「当たり前よぉ! 毎日、毎日、あらゆる筋肉に負荷をかけてるぞ!」

「俺もちょっとやってみていいですか? 身体鍛えたいんで……」

「お! じゃあ、早速走るか!」

「え? 今ですか?」

「そうだ! よし! それじゃあ行くとするか!」

「ご飯まだ残ってる……」

「あとで食べればいいさ! よし! 行くぞ!?」


 あぁ……後で食べないといけないんだ……筋肉を全身に身に(まと)ったマスターに腕を引かれて外に出る。千切れるんじゃないかと思うぐらい力強く引っ張られた。


「よーーし!! 鍛えるぞ!! おー!!」

「おーー……」


 ここにまた戻ってきたときには空は完全に真っ黒になっていた。

 冷め切った肉を吐きそうになりながらお腹に無理やり詰め込む。はぁ……もう疲れた……


読んでいただきありがとうございました!


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