219 ドラゴンの異変
それから数日、野宿やらもしながらその謎の物体に近づいてみて分かったことがあった。
その物体は思ったよりも大きくて、変な形だとということだ。ここまで来るとそれが複雑な形をしてるのが分かる。なんか……絡んだままの知恵の輪みたいに複雑だ。知恵の輪って言っても色々あるけど、まぁ、とにかく複雑に絡み合ってるっぽい。
ここに来るまでも街はあった。試しに入ろうと門番に話しかけても全然ダメ。エイプリルの時はまだ話を聞いてあげるよ? みたいな空気があったが、そんなのは全くなかった。どうやらここら辺はピリピリしてる感じだ。
そんな中で頑張ってる俺は偉いと思う。全身はずっと飛んでるせいでバッキバキだし、疲れたし。
考えてみれば今まで全部こういうのを大臣に任せてきたわけだから、もうちょっと感謝するべきな気もしてきた。これは俺の為の旅じゃないけど、でも、こういう体験が出来るのは普通じゃないからな。とはいえ、やっぱり大臣を純粋に尊敬するのは難しい。でも、ありがとう。
「あぁー、疲れたぁー」
(もうすぐ着くはずだ)
「着いたところで、だよ。だってどうせ入れないんでしょ?」
(無理矢理にでも入るしかないな)
「透明? でも、普通に疲れるんだよなぁ……」
(なら帰るか? 入れる国は見つからなかった。情報も見つからなかった。それで帰るか?)
「はぁ……なんで手伝えることはないか?って聞いちゃったんだろ。それが一番良くなかったね」
良くなかったなぁ……あのまま微妙な生活を続けていたかったなぁ……幸せだった。
もうしばらくは楽してたかった気持ちはあるけど、どうせやることもないしな……もしかしたら、俺がやりたい事を見つけたら今抱えてる問題は全部解決するんじゃないか? そんなことはないか。
そんなことを考えながら空を飛んでいると、不意におかしなことが起こった。
ビャッーー!! と今までずっと乗り続けていたドラゴンが悲鳴のような声で鳴き始めたのだ。
「ん!? なに!?」
(どうした? 何か間違えたか?)
「え、落下してない!? ヤバい!」
(落ち着け!)
「ちょ、ど、どうしよ!?」
何にも指示していないのに、勝手にドラゴンが地上へと降りていく。この悲鳴からして、おそらく飛び続けるのが辛くなったんだろうけど、どうして?
このままだと地面に叩きつけられてしまうので、縄を持っていた剣でジリジリと切断していく。
そうしている間にも地上は近づいてくる。切断はやめて、魔法を使い、ドラゴンと一緒に空を飛ぶことにした。
ビャッーー!!
それでもまだ悲鳴は鳴り止まない。もー、なんでこんなことになるのー!? てか、近くで聞いてると頭に響いてくる……気持ち悪いぃ……
このままだと疲れて仕方がないので、一度地上に戻ることにした。ちょっと落ち着いて考えよう……
木と木の間を縫うように着地したが、まだドラゴンは苦しそうに地面でジダバタと蛇みたいに苦しみ続けている。うーん……どうしたら?
「え、どうしたら良いかな?」
(魔法で治してやれば良いだろ)
「確かに! やってみるか」
言われた通りに、魔法でドラゴンを元気にしてみたが、すぐにまたさっきと同じように苦しそうに地面をジタバタとしてしまう。はぁ……分からん。
「なんでなんだろう……ルドリーは分かる?」
(ドラゴンに問題があるわけではない。となると考えられるのは外的な要因だ。この場所に何かがあるのかもな)
「何かって?」
(それは分からない、が、一度戻ってみた方がいいだろう)
「戻る……戻るって言ってもどっち行けば良いんだろ?」
(目印にしていたやつがあるだろ。アレの逆だ)
「でも、ここは木が邪魔で見えない……」
(浮かべば見えるようになるはずだ。早くしないと面倒なことになるかもしれないぞ)
面倒なことってもしかして、ドラゴンが死んじゃうとか? てか、そうなったら俺たちどうやって帰るんだ? カエデさんたちの助けを借りるしかない?
色々と巡る想いはあったが、とりあえず今はルドリーの言う通りにして、未確認物体がある方向とは逆へとドラゴンと共に魔法で移動してみる。すると、次第に苦しそうな様子は落ち着いてきた。なので、もう一度元気にしてあげると、いつものドラゴンに戻った。
「あぁ……良かったぁ」
(やはり場所の問題か? それとも全く別の原因か)
「場所かもね……ちょっと一回帰ろうかな? 大臣たちなら理由が分かるかも」
(今聞いてみたらどうだ。もう知ってるかもしれんぞ)
「それは有り得る。まぁ、とにかく報告するか」
何が起こったか分からない時は大臣に連絡しよう! もしかしたら本とかで読んでるかもしれないしね。それに、知らなかったとしても、それはそれで意味があるからな。
久しぶりに話すから地味に緊張してる。というか、ここからでもテレパシーって通じるのかな? 今までで一番遠くにいるような気がするけど。
流石に知らないだろうと思いながらも、もしかしたら普通に知ってるかもしれんとも思っていた。まぁ、連絡してみれば分かるか。
繋がるかどうか不安だったが、話しかけてみた。